ポリの木綿の二者択一、という事なら木綿をおすすめします。
私は一枚だけポリの着物を持っています。
若い時分に誂えました。見た目はポリには見えません。
お茶の先生にも「あら、言われなかったらわからなかったわ」と言われました。
雨や汗も気にせず着られることは確かですが、着崩れはする、着心地は悪い。
じっと座ってるとか立ってるだけなら何とかなりますが、普段の生活で着たら数時間経たずにぐずぐずでしょう。
そして冬は寒いし夏は暑くて着ていられたものじゃありません。
冬は静電気もひどいですし、昔、梅雨時にポリの雨コートを着て出かけたらまるでサウナスーツでした。
夏場なら伊達締め一本でもポリを使う気になれません。
そして木綿ですが、こちらは絹に比べてとにかく重いのです。
ポリのような着崩れはありませんし蒸れて暑いこともありません。
けれど捌きが悪くて、動くにはしんどいのです。
それに一度湿気を含むとなかなか発散しない繊維なので汗などを吸ってさらに重くなるのです。
一日着て普段の生活をしたら疲れますよ。
体力のある若い人なら気にならないかも知れませんが、年を重ねてくるほど手の出なくなる着物です。
また丈夫ではありますが毛玉ができたり裾などが擦れて切れやすかったりします。
雨の日など正絹を着るのが不安な時に私は活用しています。
ただ木綿と言っても様々ありまして、久留米絣のような手織り木綿は体によく馴染みます。
洗うほどに風合いが増すのは正絹紬にも似ています。
ほとんどの木綿反物は機械織りで手織りの風合いには劣りますが糸の番手が大きい、つまり細い糸で織られているぶん薄手になり重さは軽減されます。
私の経験では初心者におすすめなのは片貝木綿です。
経糸に太さの違う糸を配列して織られており木綿にしてはしなやかで軽いのです。
何と言っても正絹に比べると価格の安さが魅力です。
ただ、木綿は重いゆえに滅多に袷で仕立てることはありません。
単衣になりますので手織りの厚地以外は冬場には向きません。
長く着られるものと言ったらやはり紬の着物になります。
軽さ丈夫さ着心地のよさ、そもそも野良着であった手織りの紬は普段着の着物として最上級なのです。
着古して洗い張りする毎に風合いを増して、まるで繭に戻っていくようです。
しかし現代では高級品であるのは確か。
いきなり手を出すのをはばかるという事でしたら着やすい木綿を探してみるのも結構と思います。
最後にポリを年輩者が着るのは云々という点ですが。
まあそう思う方もいるでしょう、としか言えませんね。
結婚式のような場で着る方はまさかいないでしょうし、普段着に何を着ても自由でしょう。
ただポリの着心地の悪さを知ってる着物通は、なにか理由がない限り着ないとは思います。