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銀河の年齢どう調べるの?
「『観測史上最も古い銀河発見 誕生はビッグバンの6億年後』というニュースがありました。いったいどうやって、遠くにある銀河の年齢が分かるのでしょうか?」=神奈川県伊勢原市、会社員、男性(55)
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■遠方銀河のギネス記録 現在、宇宙は約137億年前に「ビッグバン」という大爆発から始まったと考えられている。このビッグバンから約6億年後に誕生した銀河を発見したと、欧州の天文学者らが10月21日付の英科学誌「ネイチャー」で発表した。約131億年前に銀河が発した光を望遠鏡でとらえたことになる。なぜ、この光が131億年前のものだと分かるのだろうか。 「遠くの天体から出た光は、宇宙が膨張しているため波長が間延びします。光がどのくらい伸びたかという『赤方偏移』を調べることで、天体の年齢が分かるのです」 こう説明するのは国立天文台の家正則教授(61)だ。家教授らは2006年に約129億年前の銀河を発見し、遠方銀河のギネス記録を4年にわたって保持している。 赤方偏移とは、遠ざかっていく救急車のサイレンの音が低くなる〝ドップラー効果〟のように、遠ざかる天体から出た光の色の波長が長くなって赤っぽくなる現象だ。 光の波長が2倍になると赤方偏移の値は1で、約77億年前の光になるという。赤方偏移の値が大きくなるほど、遠くの天体から出た光となる。赤方偏移が5だと約125億年前に、10だと約132億年前に出た光になるそうだ。 宇宙最古の光であり、はるか昔に宇宙が熱かったというビッグバンの証拠とされる「宇宙マイクロ波背景放射」の赤方偏移は1000。ビッグバンから約38万年後の光で、NASA(米航空宇宙局)が2003年に解析した結果、約137億年という宇宙の年齢を導き出した。ちなみに、ビッグバン直後の光の赤方偏移は無限大だ。 では、観測した光をどうやって遠くの銀河から来た光だと判断するのか。 生まれて間もない銀河では、大量の星が一斉に誕生する。質量の大きい高温の星は、周囲のガスを暖める。そして、暖められた水素のガスが冷えていくと必ず「ライマンアルファ線」と呼ばれる特徴的な光を出す。観測した光の〝指紋〟を調べることで、ライマンアルファ線かどうか判断できるという。天文学者たちは銀河の放つライマンアルファ線を探しているのだ。 今回、研究成果を発表したフランス・パリ天文台のマット・レーネルト氏らは「ハッブル宇宙望遠鏡」がとらえた「UDFy-38135539」という銀河を詳細に調べた。 レーネルト氏らはヨーロッパ南天天文台が南米チリに設置した大型望遠鏡「VLT」を使って、約15時間にわたって銀河を観測。かすかなライマンアルファ線をとらえることに成功した。さらに、この光の赤方偏移が8・6であり、131億年前の光であることを突き止めたのだ。 ■TMTで〝一番星〟を 遠方の銀河を見ることは、誕生初期の宇宙を見ることになる。今回の発見は、銀河がどのように生まれるかという宇宙の歴史解明につながる成果だ。 このように宇宙の神秘を探る天文学の研究だが、どのような日常なのか。 家教授らが米国・ハワイの「すばる望遠鏡」を使って129億年前の銀河を見つけた際、最初に候補にあがった天体は4万1533個。候補を絞り込むだけで2年間かかり、確認までにさらに2年間かかった。 望遠鏡の使用も容易ではない。すばる望遠鏡の場合、研究者らは事前に目的などを審査され、競争率は3~7倍。やっと使うことができても観測ができるのは夜だけ。準備などを除くと一晩で可能な観測は約6時間。ある天体を15時間観測するには最低3晩はかかるが、雨天や風の強い日は観測できない。 「ギネス記録になるか、論文にもならないか、リスキーな研究です」と家教授は苦笑する。 これ以上、遠方の天体の観測はできるのか。現在の観測技術では「もうギリギリで難しい」と家教授。 そこで期待されるのが、日本とカナダがハワイに建設を計画している口径30メートルの超巨大望遠鏡「TMT」だ。すばる望遠鏡の14~200倍の感度で33等星まで観測可能といい、月面にいる蛍の光も見える性能だという。 「宇宙で最初に誕生した〝一番星〟や、太陽系外の地球型惑星を見つけることができるかもしれません。また、宇宙の膨張を加速させる未知のダークエネルギーの解明も期待できます」と家教授は話している。(大矢博之) ◇ 「社会部オンデマンド」の窓口は、MSN相談箱(http://questionbox.jp.msn.com/)内に設けられた「産経新聞『社会部オンデマンド』」▽社会部Eメール news@sankei.co.jp▽社会部FAX 03・3275・8750。