こんにちは
他の方の回答と重複する部分もあるのですが、結論から申せば「反対」です。
理由は (核武装に)かかるコストに見合うメリットがどうしても見いだせない
からです。
まずご質問の"核"を、核分裂(平たく言えば原爆)ないしは核融合(同 水爆)
による核爆発現象により対象物(この場合は主に相手国同種の核兵器とそれを
運用するシステム全般)の破壊を目途し、我が国が"抑止力"として実運用可能な
兵器システム、という前提でお話させて頂きます。
第一に核兵器の「開発・製造」についてですが
最も基本となる兵器級のプルトニウム(WGPu)を生産する体制が現在の我が国
には全く出来ていないので、そこから着手する必要があります。WGPuの製造
にはいくつかの方法があるのですが、研究・開発・管理の体制構築から、具体的
な製造プラントの設計・建築ままで考えると、いずれの方式をとるにせよ製造
までは順調にいっても4~5年という時間がかかることが予想されます。
また完成した核兵器の投射手段についても同様にあらたに作る必要があります。
これまでに蓄積された既存技術の応用を考えるとロケット、つまり"弾道ミサイル"
をプラットフォームとすることが実現の可能性が高いと思いますが、ミサイル
自体はまだしも、大気圏再突入時における弾頭の耐熱、姿勢制御 及び 高硬度、
深々度の地中目標に対する弾体の貫通能力などは、これまでほとんど技術蓄積が
無いので、今から開発することになるため、こちらも実用化までは相当の年数が
かかることが予想されます。
次に「配備・展開」ですが
どのくらいの数の核を保持すれば良いのか?ということを考えた場合
まさか「2,3発でも"抑止力"として充分」などという非論理的な戦略はとれません
ので、我が国への核攻撃能力を持ち、かつ潜在的に攻撃する意思を持つ周辺国が
装備する核への報復能力を考えた場合、一説では200~300発程度の核弾頭が必要に
なると言われています。
弾頭をMIRV化することで弾道ミサイル自体は50~60基でまかなうにしても、相手国
からの先制核攻撃に対する防御及び報復手段の温存化を考えるとそれらのミサイル
は"分散配置"せねばなりません。
しかしながら一般的な地上配備(いわゆるサイロ)方式では、それら施設を複数
持つことは我が国の地勢上から見て極めて困難な(広大な場所を必要とする)
ため、潜水艦発射型(いわゆるSLBM)による海中配備方式しか取り得る手段が
なかろうかと思われます。
とは言え、我が国にはSLBMを運用する戦略型ミサイル潜水艦の建造実績が無いため、
こちらも同様にあらたな開発が必要となりますし、SLBM運用のための秘匿性等を
考慮すればどうしても核動力型潜水艦(SSBN)とすることを前提とせざるを得ず
つまりは、専用の補給整備施設も別途必要となるでしょう。
前述のサイロほどではないにせよ、その設置場所の選定自体は極めて難しいと
思われます。
さて、開発・製造、配備・展開、だけ考えても こんなにも難問だらけな上、
きちんとした兵器システムにするには、さらに 対象国(相手国)からの攻撃の
警戒・監視、と探知・追尾、及び攻撃(反撃)の指揮・指令などのC4ISRの
導入、拡充が必要となるのはもちろんのこと、核兵器及びそのプラットフォーム
の維持・管理、と廃棄のシステムや体制も別途準備せねばなりません。
こうやって考えてみると着手して5年、10年(あるいはそれ以上)たって、ようやく
戦力化の可否が見極められるワケであり、その間の膨大な投資をどのように捻出
してゆくか?もちろん配備後の(運用・維持管理の)予算増への対応もしかり
です。
さて、これら軍事的な面からの問題以外にも、非核三原則を初めとした我が国
の核、原子力に関する方針、諸法の見直しや改訂をはじめ、NPT等の国際間の取り
決め、諸条約等のコミットメントも再考をせねばならず、最悪の場合は国連に
よる制裁の発動も視野に入れた対応もせねばならないでしょう。
膨大な手間とコストをかけて仮に戦力化を成し遂げたとしても、得られるもの
よりも失うもの(これまでに我が国が培ってきた国際的な信用等)のほうがはるか
に大きいのではないでしょうか?