クルマの研究で食ってる者です。
>ボルトを工具で回さなくても勝手に伸びて、ブチっと切れるということでしょうか?
ブチッと切れるケースもあり、切れないケースもある、ということですが、『水飴が伸びて勝手にちぎれるような感じ』とは違います。
※ボルトが塑性域に入るほど軸力を与えてしまうと(強い締め付けトルクをかけてしまうと)、遅れ破壊という現象が起こります。前の日にネジをしっかり締め付け、その時はそれで終わっても、翌朝(或いは数日後)見るとネジの頭が落っこちている、という現象です。
これは水飴が勝手に千切れるのとはメカニズムが違いますが、見た目の現象は同じ様なモノです。
※遅れ破壊が起こるかどうかは、塑性域内でどこまで回すか?によります。故に塑性域角度法というネジの締め付け方法では、最初に締め付けトルクの勾配(締め付けトルクの増加率)を測っておき、塑性域に入ったことが検出されたら、『塑性域に入ったところから1/6回転』という様に回転角で規定します。(塑性域に入ると締め付けトルクがほぼ一定のままネジがグイグイ回るので、トルク管理は出来ません。)
※尚、蛇足ながら・・・塑性域角度法が普通のトルク管理法より優れているのは、締め付けトルクの大きさそのものを管理しないからです。
締め付けトルク自体はネジ面とネジのアタマが乗る座面の状態(摩擦係数μの大小)によって違ってしまうので、トルク管理法はあまりアテには出来ません。(同じ締め付けトルクでも、最大で50%もの軸力のバラツキが出ます。)
塑性域角度法ではトルクの大きさではなく勾配(トルクの増加率)を見ており、トルク値自体の大小はあまり問題ではありません。
※故に・・・御質問に貼付のページの解説は、工学的には『半分ハズレ』となります。
トルク法で締め付け力を管理しようとした場合、重要なのはどれほど精密に締め付けトルクを測るか?ではなく、ネジ面や座面のμをどれほど安定させるか?にかかっています。
軽量化と部品のコンパクト化の為、細いネジを限界ギリギリまで締め上げる設計を施すレーシングカーの場合、ネジと座面には銅粉やモリブデン等の極圧剤が入ったグリスを塗り、μを安定させてから締め付けます。(ネジにグリスなど塗ったら緩みやすくなるだろう、と考えるのは単なる『気のせぃ』で、ちゃんと設計され締め付けトルクが決められたネジでは、グリス程度の潤滑では緩みません。そもそもエンジンや変速機内は超高性能潤滑油にジャブ漬けですが、中で使われているネジを増し締めなどしませんよね?)
お礼
ご回答ありがとうございます。 色々な情報も頂き、とても為になりました。 遅れ破壊に関しては、水飴と現象自体は似ているということですよね。 遅れ破壊に関してではなくて、あのグラフの最大点を超えてから緩やかにトルクが下がっていく事象に関しては、遅れ破壊ではないのですよね?