ええと、まだなんか範囲が広いな。
それぞれ意味が少しずつ違うから、もっと絞りこんでくれないと具体的な話は答えにくいな。
仕方ないから、ものすごく抽象的な答え方になるけど、それが 日本の伝統だから って答えになると思う。
歴史を知ってるとわかると思うんだけど、今使ってるような意味の本名を使うようになったのは、明治からこっちなんだよ。
百四十年くらい前からだけど。
日本の長い歴史の中ではつい最近だよね。
それまでは一人の人がいくつも名前を持ってて、それがみんな本名みたいに使われてた。
たとえば仕事をする時は仕事の名前を使ってたし、家族の中で使う名前も他にあった。
誤解しないでほしいのは、家族の中で使ってる名前が今の本名と、そのまままったく同じ意味じゃないってこと。
もっと幅が狭くて、 公私 で言うと、 私 の場所で使うだけの役割だった。
今の本名は 公 の場所でも使えるでしょ。
昔は公の場所で使う名前が別にあって、それも今の本名と同じ役目を持ってたんだよ。
だから仕事で使う書類なんかはそっちの名前で署名した。
役職名とかとは別にね。
家族の中で使う名前を、仕事で使う書類に書くなんて事はなかった。
逆に家族でもない人が、家族で使う名前を使って呼んだりすると失礼ってのもあった。
名前を立場や役割で使い分けるのが当たり前なのが日本の文化だったんだね。
もっと言うと。
家族の中で使う名前も、歳や立場で変えちゃうのが普通。
ちっちゃい時につけてた名前を、元服する時に捨てて別の名前にするし。
元服した後も名前を変えることがあるし。
死んだら仏門に入ったってことで戒名とか法名とかつけるし。
戒名って、今の感覚だと、ただお墓に刻むための名前って感じだけど。
昔の人にしたら死んだ人の、死んだ後の本名みたいなもんだったんだよ。
それからもちろん仕事で使う名前も、仕事の内容や立場がかわると変えちゃうし。
だから一生の間、ずっとどこでも変らず同じ名前を使うってほうが不思議だった。
そうやって立場や役割で名前を使い分けるのが日本の文化だから、趣味とか芸事とかの場所でも違う名前をつけるのは、むしろ当然の感覚。
伝統文化を伝える場所では今でもその習慣を守ってるってことだね。
だから どうして違う名前をつけるのか っていうよりも。
俗世間で使ってる名前を どうして趣味の場にまで持ってきて使うのか って疑問のほうが、日本の文化の理解からすると当たってると思う。
もちろん今なら、本名を使いたければ使ってもいいと思う。
それが自分一人のことなら、文句を言う人は少ないと思う。
本名で俳句を詠んでも、本名で署名して書道展に出品しても構わないと思う。
墓石に俗名を刻んでも許されるようになってきているし。
でもそれとは別に、伝統や習慣を大事にしている人たちもいる。
そういう人たちが集まる場所では、そういう伝統を守っているってことに敬意をはらう必要はあると思う。
伝統や古い習慣を守ることには、それなりの意味があるんだけど、その意味があるか無いかも含めて、外の人があれこれとは言えないと思う。
礼儀としてね。
なんか端折りすぎちゃって伝わりにくいかもしれないけど。
だいたいそんな話。
お礼
単純に本名を使わない理由です。 歌舞伎などの名前を継承することの質問ではありません。 従って歌舞伎から離れて回答をしていただいても良いです。