一橋出身者です。
学びたいことが経営学や商学であれば、どう考えても一橋が良いと思います。この分野は一橋の強みです。一橋は社会科学の専門大学であり、文系の中でも、商学、経済学、法学、社会学が充実しています。
他方、文系の中でも、例えば、考古学や、日本文学や、日本の古代史を学びたいという希望であれば、一橋はお奨めできません。そもそも一橋は、慶応や早稲田と同じで、日本の近代化に貢献することを目標として樹立され、しかも慶応や早稲田とは違って総合大学化の道をとらず、ひたすら日本の近代化と社会科学分野に注力し続けた大学なのです。したがって一橋は、「明治以降の日本、実践的な商学や法学、重厚な西洋社会哲学には強いものの、他の分野については強いわけではない」というわけです。
現在でも同じだか分かりませんが、私の時には2次試験の国語は、現代文だけでした。古文、漢文は出題されなかったわけです。この現代文というのが強烈な代物で、夏目漱石・森鴎外バンザイといったノリのものばかりが出てくるのです。大学の体質が見事に現われています。
志望する学部や専攻分野が決まっていないなら、果たして一橋が良い選択肢なのか、ゆっくり考え直しましょう。経営学と決めているなら自信をもってお奨めしますが、まだ迷いがあるなら、安易にはお奨めしません。
一橋の法学部は司法試験の合格率は高いのですが、東大の法学部のように、国家公務員を目指す人のための環境ではありません。
また、一橋は商学部を頂点とする実践的学問の大学というイメージがありますが、社会学部や法学部では、思いのほかアカデミックな議論を学ぶこともできます。いずれも、西洋文明における近代史への造詣が深くなるという環境であり、西洋哲学、美学、歴史学なども学べるほか、近代日本についての重厚な教養が身につきます。社会学部を異端視する商学部生がいたりするのですが、大学側は別に社会学部を異端視していません。現に卒業生総代が社会学部から選ばれることもあります。
校風は、自由と自治を誇りにしていますが、別に他の大学より、特に学生自治が優れているわけでは無いと思います。伝統的には、学長(教授のトップ)を選ぶ際、学生投票が行われるという習慣があったのですが、今でもやっているかは、かなり怪しいと思います。
また、私は高校の時、生徒の半分が東大に進むという進学校にいて、東大駒場キャンパスに学校が近かったこともあり、駒場キャンパスの生協で買い物したり食事をしたこともあります。経験から言わせてもらえば、東大生と一橋生に能力差はありません。ただ、得意分野が違うだけです。東大に見られるような、「こいつ、本当に受験勉強しかしてこなかったんだろうな。薄っぺらな人生を歩んできたんだろうな」と一発で分かってしまうような学生は、一橋には、まず、いません。大学を選ぶ際、ネームバリューを重視するような人は東大や京大に行ってしまうからでしょう。一橋に来るのは、逆に、信念の人が多いわけです。
一橋の弱点は何かと言われたら、自主的に勉強する態度を持たない学生は視野が狭くなってしまうこと、原理主義的な人間の場合ますます原理主義的になること(自分のことかな?)、周囲に理科系がいないので人間には様々な考え方の人がいることを忘れてしまいがちなことなどだと思います。しかし、私が現役だった頃の一橋大学の最大のデメリットは、文科系専門大学につき大学運営コストがかかるわけでもないのに、国立大学として全大学一律の学費を取られ、それが他の大学の理科系の実験設備やコンピュータネットワークに回されてしまうことだったと思います。これは、金を払う側からすると、非常に腹立たしい傾向です。国立大学が独立行政法人に制度変更された現在でも、同じ状態なのかは知りませんが。
お礼
ありがとうございます。 詳しく丁寧に教えていただき、とても参考になります。 自分の中では校風などを気にしていたのですが、 やはり学ぶとなると安定しているほうが不安も少ないですよね!