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ヴァイオリンと調 ver.2
以前質問させていただいた内容に追加で質問です。 ヴァイオリンでニ長調の曲を弾くと主要三和音の五度音程が開放弦なので良く響くそうですね。ここからは自分が発見したことなのですがヘ長調の曲を弾くと副三和音の五度音程が開放弦なのでやはり良く響くのでしょうか? これはニ長調とは違った響きのよさなのでしょうか?
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ニ長調では,I(D.F♯.A),IV(G.B.D),V(A.C♯.E) 主和音,下属和音,属和音の全てで根音と五音が開放弦の音になります。 ヘ長調では,I(F.A.C),IV(B♭.D.F),V(C.E.G) 根音に開放弦の音がありません。 属和音の五音にGがあるだけです。 しかし,ニ長調と違って三音は全て開放弦の音です。 三和音で根音は最も重要な音で,五音は根音を補助しますので, この両方が全て開放弦の音であるニ長調の方が響きとしては いいのではないかと思います。 副三和音は主要三和音ほど使われることがありませんので, 開放弦との関係ではヘ長調は弱いです。 ヘ長調の主要三和音の三音が全て開放弦の音であることについては 和音に表情をつける音として興味ありますね。 余談ですが, 合奏では他の楽器との響きがあり,曲によって和声などが様々ですが, ヴァイオリン1本単体では,最も低い弦G線の開放弦から始まるト調は 楽器自体に響きを感じます。G線やD線の開放弦の音は強い音がします。 それに対して開放弦の高い方の2つ,E音とA音は特別な指示がなければ なるべく使いません。キンキン・キラキラした音で,ビブラートもできないので コントロールできません。 弦楽器は同じ高さの音を2つ同時に出すことができますので,例えば, バッハの無伴奏では,開放弦のE音とA線の同じ高さのE音を交互に弾いたり, 開放弦のD音とG線の同じ高さのD音を同時に弾いたりするものがあります。 前者はキラキラ(華やか?)した感じになり,後者は底から響くような力強く 深い音になります。低い開放弦の音の利点を生かすという点においては, へ調は音階では2番目に低いD線上から始まりますので,ト調やニ調のように G線やD線の開放弦の響きを利用できません。
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- droitegauche
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フランス在住の専門家(チェロ)です。 すでにお二方がお答えになっていらっしゃるので蛇足ですが、大変鋭いご質問なので興味を持ちました。 このご質問には長三度音の取り方と言う非常に高度な内容が内在しています。 ご承知かと思われますが長三度は、完全5度を4回重ねて得られる長3度より低めに取ると響きが美しいのは良く知られています。よってバイオリン族の楽器は調性音が開放弦上にあると長三度(短三度も)が調節しやすいので非常に便利な調と言えます。殆どのヴァイオリンコンチェルトがG,D,A,Eの長調かその並行短調です。 ご質問のF-durのような調ですが、今度は開放弦が3度音になるので先ほどの小さめの3度を得る為にはB♭、F、C といった根音をわずかに高めに取らなければなりません。 しかしここで大きな問題が生じます。 ためしに次の事を実験してください。(ご存知だと思いますが) 開放弦を完全な3対2の5度に調弦した後Eにあわせて高めの美しく響くC(小さい3度)をA線で取ります。そのまま指を残して今度はD線で完全4度下のGを取り、隣のGの開放と比べてみてください。オクターブがかなりずれるはずです。 これは古くから知られているピタゴラスの完全5度(3対2)から起こる不都合で、この不都合をある程度妥協的に解決したのがバッハの友人だったヴェルクマイスターなどの人たちです。 弦楽器の場合は音程は随時自由に取れるので一見問題が無いようですが開放弦が重要な音楽、特にバロック期からクラシック期にかけての音楽では大変深刻な問題ともなりえます。 解決法としては、一般的に、特にバロック音楽や弦楽四重奏などでは、5度を耳障りにならないぎりぎり程度に小さく取ります。こうすると先ほどの実験でのG-Gのオクターブが正しく響きます。 弦4ではべートーヴェンの16曲中、3曲がF-durで、11番の F-mollのセリオーゾも数えると全体の4分の1もの四重奏がこの調で書かれているのは示唆的です。 他にもドヴォルザークの「アメリカ」など多いですね。 これらのF-dur四重奏曲は先ほどの小さい5度で調弦してヴァイオリンのEとヴィオラ、チェロのCがきれいに響くように調弦しないと非常に濁りやすくなりますが、反対にこの調弦にすると独特の美しい響きになります。 ベートーヴェン等はおそらくこの様な調弦を念頭に書いていたのだろうと思います。 蛇足気味ですが、モーツァルトは♭系ではむしろB♭、E♭の方を多く使いますね。
補足
>>5度を耳障りにならないぎりぎり程度に小さく ミーントーン5度のことでしょうか? 鍵盤抜きの弦の合奏はピタゴラス調弦と思っていたので正直びっくりです。
- jupitan
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D-dur ・・・Vnの弦の音をすべて含んでいるため、ヴァイオリンに演奏しやすく機能和声上の主音、属音、下属音の五度がオープンのため倍音の響きが豊かな調であり古くから明るく華麗な響きが得られる調性とされてきました。したがってVn曲にはこの調の曲が実に多い。特に協奏曲では顕著です。(モーツァルト:Nr.4、ベートーヴェン、ブラームス、チャイコフスキー、パガニーニ:Nr.1、他にハイドン、モーツァルトの祝典的性格の強い交響曲、協奏曲、喜遊曲、弦楽四重奏曲などにも多く用いられています) F-dur ・・・Vnにとって必ずしも演奏しやすいとはいえないが機能和声上の第二音、第三音、第六音の五度がオープンのため倍音の響きが豊かな調であり、これも古くから明るくのどかで牧歌的な響きが得られる調とされています。従って、ヴァイオリンの曲にはこの調の曲が比較的多い。 (モーツァルト:モテット「踊れ、喜べ、幸いなる魂よ」、ベートーヴェン:Sym.Nr.6「田園」、ヴァイオリンソナタNr.5「春」、他) また、バッハ:無伴奏VnパルティータNr.3~プレリュード、同:Vn協奏曲Nr.1~第三楽章、ブラームス:Sym.Nr.4~第四楽章、などに表れるE線(A線)のオープンをベースに、となりのA線(D線)の高い音域とを交互に移弦することにより丁度オルガン点のような効果を生み出す奏法は弦楽器ならではで聴いててもとても興味深い。尚、バロック時代のピッチは現代に比べてかなり低めであり、楽器自体も指板は短く、弓の反りの形状も逆、かつ弦の材質もガットであったことなどからE、Aの開放弦は現代のモダン楽器のキンキン?(ある程度年代を経たVnのオープン線は必ずしも安っぽいキンキンした音にはなりませんが・・・)したものとはかなり響きの点で異なります。
お礼
回答ありがとうございます。先を越されていた...既に音楽理論的に証明されている内容やったんね。ニ長調は(主要三和音がよく響くから)直接的で男性的、ヘ長調は(副三和音が良く響くから)柔らかく女性的といえそうですね。奥が深いですね、弦って。
お礼
回答ありがとうございます。また勉強になりました。 >>副三和音は主要三和音ほど使われることがありません おっしゃるとおりでした。この調は副三和音のII(G.Bb.D),III(A.C.E),VI(D.F.A)が根音と五音について開放弦の音になるさかいにニ長調とは一味違った雰囲気の特別な調になりそやと思うたんケドなあ。 >>ヘ長調の主要三和音の三音が全て開放弦の音である これは気づかへんかった。ご示唆いただきありがとうございます。実際の曲を聴いたり分析して和音に表情を付けているかどうか研究してみます。 最後に説明して下さったヴァイオリンの響きやバッハの無伴奏曲の弦の演奏法に関しては自分自身の勉強不足もあるのでとりあえず少し整理してから出直しをさせていただきます