●小学生が見るラ・マンチャの男
感覚的な問題なので、個人差があることが前提ですが、個人的にはちょっと厳しい気がします。
一番の理由は、場面展開が難しく、現実のセルバンテス、セルバンテスの演ずるアロソン・キハーノ、キハーノがドン・キホーテになる、という3つのキャラクターが入り乱れ、ここを区別するのが小学生ではどうか、と思います。(大人なら何でもないんですが)
お話は、教会を侮辱した罪で、セルバンテスは従僕ともども、投獄されようとしているシーンから始まります。牢屋の中で、こづきまわされたセルバンテスは、牢屋の中で(ふざけた)裁判にかけられてしまう。セルバンテスは、即興劇の形で申し開きをしようと思い立ち、即興劇を始める。
――さて私は1人の男、私が創り出した男を見てくれ、そして決して若くはない田舎の郷土、名をアロソン・キハーノと言う……。
と、ここでアロソン・キハーノ、人呼んでラ・マンチャのドンキホーテがでてくるのです。つまり、キハーノは現実の男、セルバンテスが演じている架空の人物なのです。さらに、キハーノが、思い立って、自分はドンキホーテだ、と思いこんで行動するので、演技の中の男キハーノがさらに夢の中の男ドンキホーテを演ずる、と。
この転換を理解できないと、後のお話が意味不明になります。理解できればなんでもないんですが、小学生だとどうでしょうか?
あとは、劇中に出てくるアルドンサという女性、非常に虐げられた女性で、あらくれ男のなぐさみものになるシーン(?ダンスで表現されているのですが)などは、小学生にとってどうでしょうか。つっこまれたときに、説明できるかどうか・・・。
●個人的に中間管理職のサラリーマン(男性)なんかにオススメです
「一体狂気とは何だ? 現実のみを追って夢をもたぬのも狂気かもしれぬ。夢におぼれて現実をみないのも狂気かもしれぬ。なかでも最も憎むべき狂気は、ありのままの人生に折合をつけてあるべき姿のために戦わぬことだ」というセリフが印象的でした。テーマは深遠ですが、簡潔です。
ミュージカルというと女性が見ることが多いかもしれませんが、本当は大人の男性にこそ見てもらいたいお話だと思っています。
小学生でも話の展開についてこられればおもしろいですが、テーマはちょっと重いかなぁ。肩のこらないミュージカルという部類には入らないかと思います。