質問者の方の回答に対するコメントを見ていると、他の方の回答を参考に、(私が考える)正解に辿り着かれているような気もしますが、補足情報を兼ねて…。
まずご質問は、「売りから先に入る取引の存在意義は何か」という事だと理解しますが、それは理屈で考えれば「売りからも入れるようにしておいた方が、相場の厚み(=流動性)が増すから」という事になると思います。手元に株券は無いけど、今の株価は(1日以内といった極く短期か、もう少し長い目で見てかは別として)高すぎると思うから、下がる事で利益を得たい、という投資家も売買できるようにした方が、売り買いの板が厚くなるのは間違いないですから。
でも、存在意義ではなく「存在している原因は何か」といったら、下がる事でも儲けたいと思っている市場参加者がいるから、という事になるでしょう。株式市場の始まりとしてよく挙げられるのは、1602年に始まったオランダ東インド会社の株式の取引ですが、1610年にはもう空売り禁止令が出ています。
私個人としては、様々な考え・投資スタンスをもった参加者が市場に参加している事は重要だと思います。例えば、大部分の人が明るい将来を予測している会社の株の取引が成立するのは、短期的には株価の上下はあり、そのアヤをとりに行く人がいるからでしょう。でないと、買いたい人ばかりで、相場自体が成り立ちません。そういう流動性は、長期スタンスで買いたい人にとっても大切で、仮に自分が間違っていたと後で気付いてもいつでも売れると思うからこそ、安心して保有し続けられます。
空売りが不可能であっても、短期売買目的の参加者がある程度参加すれば流動性の確保は可能ですが、空売りが可能な方が、より短期売買目的の参加者を呼び込みやすくなり、流動性が高まるのは間違いないと思います。(勿論、市場参加者の予想が一方に大きく傾くと、信用売りが可能であっても、ストップ高比例配分とかになってしまうので、空売りが出来ても出来なくてもどちらにしろ駄目ですが)
尚、約定から決済までの日数の調整が比較的容易な相対取引(例えば為替のフォワード)の市場では、売りから入って、それも買い戻しと同じ日に決済する、という事ができるので、ごく日常的に「持っていないドル」を売ったりしているので、空売りに「空想売買」といった意識はありません。株でも、フランスなんかはたしかそうだった(少なくとも10年ぐらい前は)と思いますが、決済日が月の特定の日付のみに決まっていると、同じ事ができます。
日本の信用取引が差金決済になるのは、たしかに先物などと同じですが、それは単なる決済方法の問題であり、「差金決済」=「空想取引」って事にはならないと思います。(対象はあくまで現物で受け渡しが可能な株式)
また、持っているのと全く同じ商品を「つなぎ売り」するのも、単なる売り切り(価格変動リスクから完全にフリーになる)と本質的な違いは無く、信用取引に「価格変動リスクのヘッジ」という役割がある、とはちと言い難いような気がします。(為替のフォワードに引きなおして頂くとよくわかると思います。)
お礼
詳しいご説明有難う御座いました。感謝感激です! 特に前半部分のご説明は大変わかり易く勉強になりました。 ただ正直申しますと、後半以降 >>尚、約定から決済までの日数の調整が比較的容易な相対取引・・・ は、現在の私にはまだ理解するに至っていませんので、改めて自分の不勉強を実感させられた思いです。