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スキーの滑降競技のスポーツ科学 ~タイムを縮める要素の科学的な説明
アルペンスキーの滑降競技でタイムを縮める要素についてですが、 身体能力として、腰の強さが重要という話を聞いたことがあります。 また、技術としては、斜面の凸凹のところで、なるべく雪面から板を離さない(ジャンプしない)ようにするれば、タイムロスを少なくできると、解説者がテレビで言ってました。 なぜ、それらのことが、タイムを縮めることになるのか、理由がわかりません。 上記に挙げた要因に限らず、滑降のタイム向上のためには、科学的にどのような身体能力や技術が必要か? そして、それらの理由は何か? について、なるべく沢山のことを知りたいので、よろしくお願いします。
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かなりの長文になってしまいましたが、何卒ご容赦を。 スキーのダウンヒル競技(DH)ですが、これはスキーの中でも最速のスピードを競う競技で、コースの全長は3kmにも及び、スピードも時速100kmを超えます。この競技にはスキー技術、体力、マテリアル(スキー、ブーツ、ストック、ワックス)、そして何よりも恐怖心を克服できる強靭な精神力が必要になります。 身体能力としては、腰の他に足首と膝の関節の使い方が重要になります。「スキーは膝で滑る」という言葉がオーストリアにありますが、スキーでは足首と膝、腰の使い方が重要になってきます。DHでは選手は空気抵抗を減らし、スピードを上げるために「クランチング」という卵形の姿勢を作ります。この姿勢は空気抵抗を減らすと共に、ちょうど自動車のサスペンションのような働きもします。 レーシングカー等のコーナリングではサスペンションを固めるとか、車体の重心を低くするためにローダウンするとかいいますが、サスペンションを調整し重心を低くすることで、高速コーナリングで横に振られる遠心力(G)を前方への力に振り向ける事が可能です。エンジンの動力によって進む自動車と違い、スキー競技は地球の重力によって“落下”する力でスピードを得ます。この力を効率良くスピードに変えて時速100kmを超えるスピードを得るためには、身体のバランスを上手にとって身体にかかるGを進行方向に持っていく事が重要なのです。ですから、クランチングで姿勢を低くして足首と膝と腰を調整しながらスピードに乗ることは競技の結果を左右する重要なテクニックなのです。 ところが、この姿勢は長く保つ事ができません。いわゆるスピードスケートのトレーニングの「爪先立ちの空気椅子」と同様に1分~1分半位から身体が根を上げ始めてきます。DHのタイムが1分30秒前後ですから、その間にいかに身体のバランスを最大に発揮するか、という課題の中から腰の重要性を云われているのではないでしょうか。 次に、DHにおけるジャンプについてですが、100kmを超えるDHではコースの設定によって50mから時には70m近くまでジャンプします。No.1さんの「三角形の理論」と同じなのですが、大きなジャンプをすればするほど、ジャンプ後のGの方向は下向きになります。小さなジャンプであれば推進力を前方に保てますのでスピードもあまり殺さずに済みます。ですから、逆にジャンプを全くしない、というのも100km前後のスピードではありえない訳で、もし本当に行なったら推進力が下方に分散してしまいスピードに乗れなくなってしまいます。 ←推進力 ○ ・ ・ ・・・・・・・・ ー\─ ≡з ・ ・・・・・・・・__⊆_ ・ ・ ______ 推進力 ・ ・ / ↓ ・ ・ ←推進力/ ・ / _________/ ──────── その他に必要なタイム向上のための要因は、上にも書きましたが恐怖を克服できる強靭な精神力です。 私はリレハンメルオリンピックの際にDHの行なわれたクビートフィエルで働いておりまして、スタッフに誘われて何度かDHのコースを滑った事がありますが、DHのスピードの恐怖は大変大きなものです。以前、ドイツで車を200km近いスピードで走らせた事がありますが、DHの恐怖感覚はそれ以上のものがありました。 強靭な精神力といえば、DHの得意な選手は例えばオーストリアのヘルマン・マイアー選手(Hermann Maier)など病院で片足切断を勧められる程の大事故の経験をしたり、DHコースで転倒して大怪我をした後でも早々に復活して優勝したり良い成績を収めるタフな選手が多いようですね。 DHのコースは競技会場によって違います。しかし、例えばリレハンメルの場合はコース前半が青光りするアイスバーンでコース幅が10数mしかない、ジャンプした先がブラインドになっていて先が読めない、高速カーブが逆バンクになっている、最もスピードの乗った高速カーブの次にあるヘアピンカーブを曲がった直後に斜度30度を超える絶壁の逆カーブが続く…と、スピード感覚と身体のバランス感覚を極限まで発揮しないと良いタイムに到達できません。 下記に参考URLを貼らせていただきます。 元オリンピックアルペン選手にして元全日本スキー選手権アルペン三冠王の丸山さん(通称:雷オヤジさん)の記事は長野オリンピックでのDHコース造成の裏話が書かれていて面白いと思いますよ。 【千葉信哉さんのスキー理論】 http://tabijozu.ne.jp/shinya/main-riron2-3.html 【元オリンピックアルペン選手 千葉信哉さんのオフィシャルサイトTOP】 http://tabijozu.ne.jp/shinya/main-pro.html 【Wiki 滑降競技(DH)の説明】 http://rd.search.goo.ne.jp/click?DEST=http://ja.wikipedia.org/wiki/%25E6%25BB%2591%25E9%2599%258D&no=1 【朝日新聞 スキー4種目の比較】 http://www2.asahi.com/torino2006/howto/TKY200512260196.html 【丸山仁也氏の競技セミナー】 http://www.sak.or.jp/report/2004/kyougi-seminer2/kyougi-seminer2-02.html 【おまけ:丸山氏のオフィシャルサイト(ホテルHP)】 http://www.happei.co.jp/aisatu.htm http://www.happei.co.jp/
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- robin1124
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こんばんは。 タイムを縮めるにはいろんな要素があります。 ご質問の件ですがまず >身体能力として、腰の強さが重要 スキーをやる方はわかると思いますが ターンをするときに下半身で強く踏み込むことで ターンの径を小さくすることができます。 強靭な下半身を必要とし、それを支える腰の強さが重要と言うことになります。 強く踏み込むことでターン時の膨らみを小さくして タイムを縮めることができるのです。 車でも大回りしたときと小回りしたときでは同じ距離を走るのでも 時間はかわってきますよね。そういうことです。 >斜面の凸凹のところで、なるべく雪面から板を離さない これはジャンプすることによって微妙に滑走距離が伸びるためです。 どういうことかというと3角形を思い浮かべていただければわかると思いますが 底辺を進むより他の2辺を通るほうが距離がありますよね。 またジャンプの距離が長くなることで 着地の地点から次の旗門(ポール)までの距離も膨らんでしまいます。 先ほどと同じですがコンパクトにコースを取ることが タイム短縮に繋がるわけです。 他にタイム向上の要因には体重もありますね。 これは単純に重い物のほうが坂を転がるスピードが速いのと同じです。 それから体力、技術もさることながら 板やブーツなどの能力にも大きく左右されます。 技術が発達し滑降では2mの板が当たり前の時代はとうに終わり 現在は身長+αぐらいの板でも安定してスピードが出せる板になりました。 使用される素材や振動吸収のスタビライザー的なもの ビンディングの下に入れるプレートなど 板の性能を左右する重要な要点は沢山あります。 普通にゲレンデスキーをするだけでも板、ブーツが違うと滑りがかわります。 そして欠かせないのはワックスです。 雪質や気温天気によって使われるワックスは沢山あります。 メーカーによってもワックスの材質も違いますし 選択を間違えるとまったく滑らない板になってしまいますので おそらくワックスを含めたチューンUPが一番大切になりますね。 選手は専属のサービスをつけていたりチームのサービスがいたりと 必ず板をチューンUPする人がいます。 この人たちが間違ったチューンUPをするとその試合は勝てません。 板の特性をよく知り操り方を熟知すること下半身を強化することも必要です。 技術があってもギア(道具)やチューンUPが悪ければだめ 逆にいいチューンUPされたギアがあっても それを乗りこなせる技術、体力がなくてもだめです。 長々と挙げたようにいろんな要素がひとつになって はじめて好タイムが出せるようになるわけです。
お礼
早速ありがとうございました。 ごめんなさい! 私の質問の仕方が悪く、補足にコメントしましたので、ご覧くださいませ。
補足
腰の強さがターンスピードの速さに直結するということは、腰が強い人は、ダウンヒルよりもスラロームの方が得意なのでしょうか? また、単純に考えますと、人間の体重を一定とすれば、強く踏み込もうが弱く踏み込もうが、ターンの時の向心力加速度(遠心力による加速度の逆)は同じで、したがって、ターンの半径も同じような気がするのですが。んー、私が頭悪いかも。 次に、凸凹で跳ねないのが良い理由が、「距離」という単純な理由であることには、かえって驚きました。 「体重が重いと有利」という話は以前から聞いたことがありますが、いまだに物理的に理解できません。「重い物のほうが坂を転がるスピードが速い」は初耳ですが、やはり物理的にわかりません。 ・・・・・あと、 ごめんなさい!!! 質問の仕方が悪かったのですが、ワックス、用具、技術スタッフについては、対象外とさせてください。 (自動車レースのメカニックと同様、とても重要であることは承知しております)
お礼
なるほど。 そうか、クラウチングを保つには、強靭な身体能力がいりますよねー・・・・・・・・・って、私が何を思い出したかというと、霞ヶ関勤務の知人でスピードスケートが趣味の人がいまして、夏場のトレーニングとして、昼休みに皇居の周りでスピードスケートのクラウチングの格好でジョギングというか散歩みたいなのをやってた人がいたんですよ。情景を想像すると笑えるでしょ。 結構きついトレーニングらしいです。 (指摘してごめんなさい。クランチングじゃなくてクラウチングですよね。) あと、 段差のところで板を雪面から離さないようにする理由が、加速度が進行方向になるように、という説明には、非常に納得しました。 恐怖心に克つ、という要素もなるほどです。 その上、リンクも紹介していただき、大変ありがとうございました!