No.1 の方が引用されているように、コミックにいままで出てきた限りでは、複数のそれらしい説が出されていますが、いずれも、作者が、話の展開のなかで、結局、真相は分からなかったとしていますので、答えは「未だない」です。
「芹沢家殺人事件」というエピソ-ドのなかで出てくる説が、確かにもっともらしい気がします。これは、芹沢家という、何時の時代からか、代々、暗殺を家業としてる家があり、そこの息子としてゴルゴ13が生まれたという説で、殺人事件がこの芹沢家で起こり、その真犯人を求めて、刑事が、警察を辞めた後、個人的に調査し、遂に、どうも、犯人は、芹沢家の行方不明の息子(当時少年)で、その少年は、成長して、いま、国家機密などの世界でスナイパー=暗殺者として、超A級と評価されているゴルゴ13ではないのか、という風に推理が続く話です。
どういう結果になるかは、作品を読まれる楽しみを殺ぐことになりますから伏せますが、明確な答えはでなかったということは、述べても問題はないでしょう。何故なら、この推理で答えが出ていれば、ゴルゴ13の出生は、すでに明らかになっているからです。しかし、いまだに作者は、秘密にしています。これまでの色々な可能性も100%否定された訳ではなく、確証がない、という結果に終わっています。
ところで、少し気になるのは、芹沢家説がもっとも妥当だという先の人の意見ですが、これはどうかと思います。というのは、実在の人間なら、その出生は、一つしかありません。二つある場合は、二人の人です。子供時代、一人二役や三役をしていたとしても、そういうことをしていたという出生と来歴がある訳です。
しかし、ゴルゴ13は、実在の人間ではなく、話の上での登場人物です。従って、「答え」は、「作者次第」ということになるのです。あるいは、さいとうたかを亡き後、ゴルゴの話について、決定権を作者から与えられた人の自由ということになるでしょう。デューク東郷は、異常な高齢で、なお第一線暗殺者ですが、これについて、デューク東郷は「一人しかいない」という説明のあった話はないと思います。また、あったとしても、SFになりますが、そのデューク東郷は、クローンの一人で、当人は、自分一人がデューク東郷だと信じていたが、実は、巧みに記憶が操作されていて、実際のデューク東郷は、十人いて、交替で任務に当たっているとか……こういう話を、作者がもし書けば、まったく違った様相となります。
ゴルゴ13のクローンは、何千人も用意されていて、実は、宇宙人が、人類の「保管計画」を立てていて、「計画エヴァ」に従って、ゴルゴ13は、暗殺を実行しているが、やがて、宇宙から、使徒が出現し、……というような話になると、別のアニメですが、こういう話にしても、ストーリーの整合性を取ることはできる訳です。作者がそれをするかどうかの問題です。また、別のストーリーを新しく造るかも知れません。それは、作者さいとうたかを自身も、未だ決めていない、或いは一応何か決めているが、その考えは、今後変化するかも知れない……ということです。
だから、これがゴルゴ13の本当の正体だ、というエピソードが出てきても、後で、別のエピソードが出てきて、実は、あの時の結論は間違っていた……と作者はできる訳で、こうすると、ゴルゴの正体は、何時まで経っても確定しないことになります。それは、要するに、デューク東郷が「実在の人間」ではないからです。
とまれ、現在までの話では、思わせぶりな出自が提示されているが、どのエピソードも、結論を宙づりにして終わっているので、デューク東郷ことゴルゴ13の正体は、不明だということです。