ゲーム起動時に表示される注意書きについて
PSPやDSのゲームを起動した時に
「ゲームソフトを権利者の許諾なく、インターネットを通じて配信、
配布することは著作権法第113条第1項に反する違法行為です.
また、著作権法改正により、2010年1月から、
違法なインターネット配信と知りながらダウンロードする行為も、
私的使用目的の複製とはならず、違法となりました。
みなさまのご理解とご協力をお願いいたします。」
と表示されることが最近よくあります。
この文章は極めて形式的な文章であり、ラストメッセージin最終号事件を参考に考えると著作権はないものとしていいと思います。個性が表現されている文章とはいえません。
これはどこが表示するように指示を出しているのでしょうか?どのソフトも文章はほとんどかわらないと思います。DSもPSPもどちらのソフトにも表示されているので、任天堂やsonyではないと思います。
苦情を言いたいです。
後半については問題ないです。無理な揚げ足は取りません。
前半の「インターネットを通じて配信、配布すること」が「著作権法第113条第1項に反する違法行為」なのかどうかについて
インターネットを通じて違法配信することは普通に考えて公衆送信権の侵害じゃないですか。なぜわざわざ113条第1項を持ってくるのか。2号のことでしょうが、今までインターネット上の違法配信でそれが適用されたことはなかったはずです。
インターネットオークションで海賊盤の「DVD」を販売するならばたしかに113条第1項のみなし侵害は適用されます。「インターネットを通じて配布」だけなら、オークション等のことを想定していると考えますが、「配信」という部分が納得できません。
113条第1項は「頒布し、頒布の目的をもつて所持し、若しくは頒布する旨の申出をし、又は業として輸出し、若しくは業としての輸出の目的をもつて所持する行為」であって、公衆送信行為は含まれません。インターネット上でROMを違法配信する行為は頒布や頒布目的の所持等ではないはずです。
頒布の定義は
19.頒布 有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することをいい、映画の著作物又は映画の著作物において複製されている著作物にあつては、これらの著作物を公衆に提示することを目的として当該映画の著作物の複製物を譲渡し、又は貸与することを含むものとする。
複製物を「譲渡」または「貸与」
インターネットを通じた頒布まで含んで定義されていません。著作権法に譲渡の定義はありませんが、常識的に考えてCDやDVDのように固定された物を渡すことです。ダウンロード販売は譲渡ではありません。頒布でない以上、インターネット上の違法配信は113条1項に違反するとはいえません。
海外の著作権法ではインターネット上での送信も頒布に含めることも多いですが、日本の著作権法でそう解釈されるとは限りません。日本では「公衆送信権」があるので、頒布の概念にインターネット上での送信行為を含める必要性はありません。インターネット上の違法配信が譲渡や頒布に含まれるなら、公衆送信権を創設する必要はありませんでした。
私は譲渡は譲渡、送信は送信と区別します。インターネットを通じて配信することは譲渡ではなく公衆送信です。
今まで違法アップロード者が逮捕された事件も全て複製権や公衆送信権侵害として立件されているのだから、注意書きも公衆送信権侵害と書くべきです。
たしかにインターネットを通じたデータの配布も譲渡、頒布とする解釈もあるようです。著作権法コンメンタール1では、執筆者により意見が別れていました。微妙な部分であるため、確実な公衆送信権侵害と書いた方がよいと思います。
インターネット上の配布が譲渡になるかどうかはレコード製作者の権利の保護期間にも影響します。レコード製作者の権利は録音時から始まり、レコードの発行から50年までです。レコードの発行とは相当部数の複製物を公衆に「譲渡」すること。もしダウンロード販売が譲渡でないならば、49年間ダウンロード販売をし、それからCDを発売すれば保護期間を最大まで伸ばすことができます。