美術品や骨董品の値段に、根拠はありません。その値段で買う人がいれば、その値段なのです。例えばおもちゃに関していえば、鑑定団にも出てくる北原照久さんがおそらく日本一のコレクターであり好事家、つまりお金持ちです。だから北原さんが「この値段で買う」といったら、たぶんその値段になると思います。中には「ことそのおもちゃに関しては、私がそれ以上出す」という人もいるかもしれませんけどね。
司馬遼太郎の短編小説「割って、城を」にはこんな話が出てきます。当時の茶道の第一人者であった古田織部が日常で使っている何の変哲もないご飯茶碗をうやうやしく持ち上げ「これはいい品である」といった途端に価値のある茶碗になってしまうってね。その道の権威が「いい」といってしまえばそうなるんです・笑。
「昔は人気がなくて値段も安かったが、今は人気が出て高くなった」とかその逆もザラにありますね。キン肉マン消しゴムやビックリマンシールなんてのはあの当時はありふれていて何の価値もなかったのですが、みんな飽きてゴミ箱に捨てていったら流通量が減って希少価値が出てきてそれこそ何万円の価値なんかになってしまいました。浮世絵の伊藤若冲なんかも浮世絵としては極彩色で常識外れの色使いをしていたので長い間人気が低かったのですが、カナダだったかアメリカだったかの好事家が大変高く評価して買い集めていたら、その人が高額で買い集めるものだから日本でも段々人気が出てきて、今や人気の浮世絵師の一人となりました。その外国人コレクターがほとんど買い占めているので、希少価値となったという皮肉です。
あとは真贋の鑑定ですが、これは長年のプロでもしくじることはあります。先日は中島先生が派手にやらかして話題になりましたね。値段が高い洋画だと、プロの贋作作家がいて美術館が騙されることだってありますからこれはどうにもなりません。今は機械で昔の時代に作られたものかどうかも分かるんだろというかもしれませんが、わざわざその時代のものをどこかから探してきて、それを混ぜたりするので機械も騙せてしまうそうですよ。
それこそ古田織部じゃないですが、その道の権威とされる人が裏書きしていればもうそれで「本物」とされますからね。ヘタに突っ込んでその人の権威を汚してもいけないっていうのもあるんじゃないかなと思います。鑑定士の中には「このジャンルにおいては私が日本一だから、私が本物といえば本物だ」と豪語する人もいますね・笑。
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