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クロノメーターとは
クロノメーターとは、 「国際的な検定試験に合格した高精度な機械式時計」 という意味で大雑把な言い方ですがあってると思うのですが、ここでいう「精度」とは、 (1) 専門の職人さんが組み上がった時計の精度調整をする という精度なのか、 (2) (1)に加えて、部品の一つ一つを作る精度 も含まれているのか、その辺りを教えて頂きたいです。 一度OHに出し、下手くそな職人さんに当たってしまえば、クロノメーターなんて書いてあるだけということになるのか否か、その辺りをご教授ください。 どうぞよろしくお願いします!
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はじめまして。拙い知見経験主観ですがよろしくお願いします >(1) 専門の職人さんが組み上がった時計の精度調整をする >(2) (1)に加えて、部品の一つ一つを作る精度 も含まれているのか 厳密には(2)と存じます。本来ただ部品を組んだだけと手組で調整しながらでは制度の差は大きいです。 例えば、クロノメーターではないですが、ここでやたらもてはやすSEIKOの機械式でSEIKO-5があります。これ、モノによりけりですが、7S26という機械は特に殆ど全自動近くの組み立て。なので精度の良いのは日差10秒軽く切りますが、出来によっては20秒以上も見受けられます。 ちなみに7S26の取扱説明書上の公称公差は日差±60秒です。 でも時計師の調整で当然ある程度の範囲で改善は可能です。このある程度とは、機械その物のキャパシティ次第と言う事。他の機械式(アンティークなどは特に)等も時計師の技量によって精度も左右します(但し根本的な精度に対する設計レベルで限界はある) 精度の出し方は、本来時計師さんのご回答が一番ですが、基本は最後手で微調整をします。更に部品によっては磨きをかけて精度を上げたり詳細の手作業を加えます。尚精度は単純な機械公差もありますが最後の最後はパーツ関連の組み合わせの歯あたりなどマッチングでの微細な調整。数字だけの判断ではない。タダの組み立て(ザラ組とも言われる)完成品ならばその精度は重要ですけどネ。 この際、貴男が述べられたクロノメーターですが、単純な精度だけでなく、姿勢差(腕に付けた時の縦横斜め等の常用環境)における精度を出すのが一番難しいです。時計師さんの殆どは、この姿勢差で悩まれると存じます(人の腕の状態が常に水平とは限らない、重力の影響があるからですネ) 尚、温度差による偏差でも一番効いてくるのは時を調速し正確に刻むテンプにつく”ひげぜんまい”です。材質が主要ですが、一方で微妙に調整される事も有るので、これも難しいです。 ザラ組で精度が出るならばよいけど、そういかない事もあるので、この点は時計師さんの技量次第です。まして、現行のハイビート(28800振動)に比べロービート(18000~19800振動あたりをメイン)は、構造状パーツの精度(単純な機械公差だけでなく、噛み合わさる部品とのマッチングを考慮)と組立の技量が双方でかかってきます。 >一度OHに出し、下手くそな職人さんに当たってしまえば、クロノメーターなんて書いてあるだけということになるのか否か・・・ 貴男の想定される時計の使用年数もあり、一概にとは言えないと思います。 例えば新品で最近購入し、定期的(メーカー推奨)メンテナンスで精度が出ない、すぐ狂うなら、機械自体がハズレ(機械モノ車でもなんでもハズレはありますよネ)か、時計師の技量の問題と思っています。現にメーカー以外でメンテナンスし精度が上がる例幾つも経験してます。ただ、メーカーとして自社メンテナンスの時は、クロノメーター規格内の精度はメーカー設定の保証(ギャランティ)を元に守るはずですし、そうならない時はそれなりの理由があるはず。経年使用で全体的にムーブメントが疲労する等。メーカー外の工房発注は基本自己責任です(でもホント腕の良い方いらっしいます。一人で中古や古い時計を最初~最後までメンテナンスする経験を積まれると技術レベルはUPされるそうです)。 極例ですが1950年代のロレックスも一応クロノメーター規格ですが、ほぼデットストックや長期使用年数でも精度が出なくなる事もザラです。これについては時計師の技量も持ってしても成し得ない困難さが時にあります。この点は個体差や基本設計、経年で人が老いて若い時並みの運動量が出来ないのと一緒と考えてます(そう影響が少ない機械は本当に良質ですが稀。個体差次第も当然ありますが)。また、新品機械で何も変わらないようでも経年変化も当然あるので、過去のまま再現と行かない事もあります。車のレストアと同様・・・。 本当に下手くその場合はまともな時間が全然出ない、作動が不安定とか、暫く使ううちに精度が狂いだす等もあります。この”下手くそ”のレベルを貴方がどこまでのハードルにされているか?どのような時計を対象にするのか?によりけりです。少なくても現行でメンテナンス2~3回程度でクロノメーター精度が最初でていてもその後安定しない、出ないのは、個体差もあるし、時計師さんとしての限界もあるかもしれません。ただ近代ならよりメーカーメンテナンスで精度管理もされてるので、クロノメーター外れた?なんて小さい知見です未経験(GrandSEIKOの9S初期でメーカー公称精度に対しばらつきが出る等は結構聴きましたがそれすら後に改善されている?ようです。ロレックスに至っては10年そこらで外れた何て皆無でした)。 でも時計師さん(自分の知る限りですが)恐ろしいほど愚直で精度と安定性に拘ります。ザラ組での機能確認が終わっても、最終精度(姿勢差込み)の調整には下手すると1カ月ぐらいかける事も有ります(アンティークの古い機械ですけどネ)それで安定して日差10秒だせる・・・これこそ地道な努力で成し得る賜物です。腕だけでない根気と執念のプロとしての意気込みと現状ベストの追及と存じます。 また、精度に拘るのは機械好きとしてとても理解できますが、一方でチャンピオンデータに踊らされる、本来の利用範囲で問題ない精度で確実に無理をしない組立状況で動き続ける事の方がより大事と存じます。よく昔(1960年代)のGrandSEIKOが良いと胸張ってる方もいらっしゃいますが、超精密な公差を持つVFA(月差±60秒以内、36000振動)の精度確保はとても厳しく現代では皆無に近いです(使われているせいもあるけど)。 それより常用使用で精度が極端に落ちない、故障しにくい、安定志向の機械の方が実際の評価は高いです。クロノメータより数秒外れる程度よりもっと大事。チャンピオンデータ主義で経年的な相違等に関しない方には一生理解できないでしょう。常用利用での重要なポイントと存じます。機械式で秒単位の日常を来るのは現実非常に困難ですし、それならクオーツが一番(もしくはスプリングドライブ等)。 時計師さんの技量は多大かつ偉大です。でもそれもこれも時計本体の個体差・コンディションによって限界があるので、一概な下手くそ観念は次の段階にされた方が宜しいと老婆心ですが想う次第です。(確かに偶にホント残念な人もいますけどネ。バラシ方も組み方も下手で、自分の狭量の範囲でしか知見の無い人。) 長文愚答ですがご参考になれれば幸いです m(__)m
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- マレンヌ(@Marennes)
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NO.1.4です。もうちょっとだけ・・・ NO.2さんの個別部位(と言っても精度における重要部位ばかり)ですが、その根底が等時性の問題にもつながる、添付を作動させるトルクとテンプの振れ角の偏差がSEIKOの場合大きいのです。 その理由は・・・ハイビートです。 起因は当時の天文台コンクールでSEIKOが精度を上げる際に考え出したことが時間の制御の細かさを求めるなら、ビート数を挙げる事だからです。 つまらない話ですが・・・ビート数を上げるにはそれなりのゼンマイの駆動力が必要。それに伴い回転速度(テンプ回り)がupするので、この部分および輪列の部品にかかる負担が極端に増えます。単純には回転速度の二乗で部品に力がかかります。それだけの過酷条件を満たすには、材質の選定や精度(悪いと片当たり等でダメージが出る等悪い要素ばかり)となります。テンプやカンギ車の精度や強度、ヒゲぜんまいの強度等が凄くシビアになります。また本体ではないですが忘れられる大事な要素が潤滑油。ゼニスのエルプリメロ(36000)が安定してくるのも部品の見直しもですが潤滑油の向上です。 これらを解決するのが、最初は部品精度です。低回転で仮に1mm振れたとしても高回転になるとその振れ量は更に増大します。 そのために、高回転化(ハイビート化)しても触れない機械加工精度をもとめられ更にテンプはバランス取りが重要になります(高速回転のためバランスを付けずとも加工精度の向上で精度を出すスムーステンプが一般的)。従来の一般例ですがねじ(ちらネジと言います)でバランス取りするよりも高速回転でテンプにかかる負担(モーメント)を抑えるための対策です。これが出来るようになったのも、当時の機械加工技術のレベルアップによります(それとちらネジ組む手間省き組立簡素化のため) 旧式のロービート(18000~19800ビート等)の精度よりあげないと本質的精度の向上は得られません。 (でも、悪い例で、ゼンマイのトルクupだけで強引に回し精度を出す事例もありました。耐久性含めいい方向でない) また、元々のパワーの大きいゼンマイ・・・でも時間と共にぜんまいがほどけるとそのパワーの低下が問題になります。これはロービートより深刻な問題です。パワーで回し精度を保つ時計ですから。本来の状態を維持するのにパワーが落ちると影響は大きいです。なのでゼンマイの力の維持が長時間で高精度に必須です。そしてぜんまいがほどけトルク変化の大きい分猶更等時性の問題がさらに浮き彫りになり長時間の精度確保の必須条件へとなるわけです。 こうした技術類(ほかにもっとあるそうですが)はすべて当時の精度に拘った結果によるもの。機械式の性能向上には必須条件なので避けれない関門です。 そしてハイビートの大元は60年代の当時のスイスの精度を競うコンクールでの優勝を目指すから。1964年の最初は全く歯が立たなかったけど、理論と現実との試行錯誤した結果です。もちろん当時のスイスもハイビート化はしていたのですが、日本は圧倒的に短時間で追いつき追い越した・・・68年。この短期間は驚異ですネ。皮肉にこの時の優勝はクオーツで機械式のトップがSEIKOでした。 ハイビートの開発が28800⇒36000⇒72000・・・とコンクール向けのムーブメントでビートupしていました。その技術の裏返しで、大事な部分への加工精度や仕上げ調整を行った結果です。でも市場反映されたのはお手持ち含めごく一部ですし、スペシャルな分組む人も生産ラインで選ばれる・・・当然といいますかしょうがないです。でもスイスの様な世界需要ではなかったからできたのもあります(生産や品質管理が追いつかない) しかし、この時代の一般汎用で海外時計の精度がトップでなくても良い(耐久性も良い)理由は、当時ロービートでも市場で必要で求められる精度による技術や磨き、歩度調整が経験値含め満たされていることもあります。 但しハイビートレベルとは次元が違うかと思います。パワーが少ない車を速く正確に走らせるには・・・です。一般的ですが同レベル材質でメカにかかる負担を抑えるにはゼンマイトルクを抑えたロービートの方が基本的には永年の耐久性も良いから。そして、ゼンマイトルクが低い分トルク変化のスピードも緩和していくする傾向(全部ではないけど)なので、元々の作動するトルクが低い分そこそこ動くようにもなります。ビート数を敢えて挙げない理由の一つもあるのです(これをテンプ周り他の調整でカバーしている)。 結果としてはSEIKOはもちろん材質も拘っているからコンクールで機械部門で世界一になり、それまでのノウハウをつぎ込んで大量のハイビートシリーズを市販化できた好事例です。同じGSでも時期により改善や差があるのもそのため。 ムーブメントの考え方、寿命・生産効率・コストなど多くのファクターから選んで出した回答です。事実、この時期以降の70年代の機械式の多くは、高精度と薄型化(これはクオーツの影響もあり)、組立の均一・容易性と生産性からどんどん部品交換(アッセンブルも含め)の方向に転換しています。現在はOHで不調時は多少の修正の他は歯車等も差し替えでセッティングが基本です。 当時の旧式の一品を永年修正と職人芸的な対応のスイス側と、精度アップと生産性・合理性・コストによる近代化を進めたS日本(スペシャルモデルはやはり職人芸なのですが大要は)。メカ的評価はその方々の考え方次第ですが、ある意味今の時計産業の起点を作ってしまったように思います。事実70年代をはじめに新規設計されるスイス・ETA社の現代に通じるムーブメントはみなこの手法を更に合理化してブラッシュアップしています。これも当時の低コスト化が進むSEIKOクオーツ対抗のコストダウンの一環(機械式とクオーツでは精度では全く追いつかないですけどネ。時計価格自体を抑える策) グダグダとなりましたが、精度アップ=ハイビート=必須課題=加工技術精度の向上=調整関係の理論構築と実施⇒コスト(特に人件費やメンテナンス性への考慮)を求めた結果と存じます。そういう意味でもGSやKS、一部のマーベル等の上級・スペシャルモデルは一般とは違う別世界の希少性と存じます。スイスメーカーでも高額のスペシャルモデルの精度出しと同様で。(そうなるとコスパが日本は良すぎるになるのですけどネ) m(__)m
お礼
marennes様、再び時計師さんの精進が目に浮かぶようなお返事ありがとうございました。こういう日本の技術と努力を讃えるお話をお聞きする度、日本人でよかったと心から思います。 クロノメーターという規格に注目したのは、私が手にした時計がまだ新品の時の日本の時計製造会社が世界に(スイスに)短期間で追いつき追い抜いたときの職人さん達の努力を、リアルに知りたかったからです。私が手にした時計の価値を改めて実感することができました。ありがとうございました!
- マレンヌ(@Marennes)
- ベストアンサー率50% (396/787)
NO.1です。補足いただきましてせんえつながら再度参上しました。 前回で一つ訂正させてください(36000振動)ではなく(36000ビート)です。単位が振動なら本来10振動の表現。お許しください。 >1968年に製造された5626-7010キングセイコー・・・ 殆ど国産は所有してなく知らないので申しわけございませんが多少知る限り・・・ 主観・・・また凝った(^_^)・・・ワンピース防水のクッションケース(四角)。実態は本体と開閉構造を持たない別体の裏蓋で組み上げられた一体構造。ハイビート(28800)SEIKO諏訪工場製・・・あいにく実物に巡り合った経験はありません。でもこの時代のGS・KSのムーブメントはキュンとします(見た目より完全精度狙いの作り込み)。 http://ki-watch.com/japanese/ks34at.html 56KSのお仲間の例 http://seikoholics.yuku.com/sreply/419/Seiko-5626-KS-models#.U38XJBeCiUk >経年を無視して・・・ お話の条件なら私は貴男のお考えが一般的と存じます。元々クロノメーターを取るのには部品の仕上げ・公差・精度や組み立て完成時において一品ごと手をかけた時計です。 ちなみに、クロノメーターは出荷前試験で条件を達成し認められただけであり、その後の管理は別(メーカー次第・前回のギャランティ次第)です。 でも規格を通すための手間暇は通常それなりにかかっています。余談ですがクロノメーター等の精度について(ご承知と存じますが・・・) http://www.tokeizanmai.com/chronometer.html 姿勢差を含めた調整・精度測定時の様子(参考例:TAG・HEUREより。装置は大なり小なり原理は一緒。) http://www.tagheuer.co.jp/aftersales/maintenance/overhaul/ 時計を支える軸が回転し、全体も観覧車のようにまわりあらゆる姿勢差を模擬し精度チェックや調整確認します。 これで後年の安定性や耐久性・精度変化に強い・良好か?が良いムーブメントの更なる評価になりますし、時計師さんも腕の見せ所になると存じます。 元々クロノメーターを通すために施されたムーブメントの方が確かに普通にメンテナンスしても再現性は高いと思います。元が良いから。逆にそうでない場合ほど再現性は時に難しくなります。 でも、わざわざクロノメーターを通さない(認定の費用削減し精度と言うネームバリューをつけない)、けれど元々精度の良く出る時計も多々あります。素の良さで精度が出ているのもあるし、自社の独自規格もあります。 時計師さんの技量も多々出ると存じます。もちろんそれはメーカー公称公差より遥に良い場合は幸運でしょう前記の7S26が10秒切った・・・のはラッキーな話し。何せ少ない確認数ですが(自他・メーカー、メンテナンスショップで)数十秒の誤差やバラつきはあるし、メーカーとしても公称±60秒を敢えて許容バンドを広げるにもかかわらずの結果ですからネ。 また、個体差によっては各部品類の相性が良く精度が出る事も有ります。なので、一般的には貴男のお考えの(1)>(2)>(3)の確率が高いと思います。でもそうじゃない理由が前記の個体差やコンディション次第による事も有りうるからです。 ちなみに7S26でも時計師さんのメンテナンス調整で精度アップの例もありました。 一方OHした際の対効果が大きい確率はほぼ(3)>(2)>(1)です。元々のマシン組から最適化で調整すれば違うのは至極当然。但しメーカーに依頼するも?精度のUPの依頼をするぐらいです。そうでなければ製品に与えられた社内規定での精度となるから。現状KSは(2)に当たるでしょう。でも、OHによる再現性の確約はメーカーですら困難で出来ない事あります。SEIKOですらネ・・・(近代GS経験あり!個体差でしょうネ)。それで、私事ですが、古い国産は国産も海外も扱って経験値の高い時計師さん(国産ばかりでは知見や対策対応が不足すると申してます)や、SEIKOの元技術者の某H氏(関東在住)へ依頼してます。そのH氏も内外の時計も含め技術を積み重ねた方です。やはり元がよければ再現性の確立も高くなる。 >私の56キングは月から金まで週5日使って・・・日差5秒以内・・・ 常用使用でこの数値は秀悦ですね!精度出すのもムーブメントの良し悪し+コンディションです。もちろん時計師さんの技量も多分にあるでしょう。確かにこの振動数なら現代の国内外でも日差10秒切るのも多々です。でも個体の素性が良い、過去の扱いやコンディションが良かった、組立調整もうまく行った事、年代も合わせてこの精度はラッキーです。 (根本的に60年代後期のSEIKOでもスペシャル級のGS・KS・マーベル(全部じゃない)等で精度を求める姿勢はコスパに対してもスイスを(超えてる)です。機械自体の仕上げは無くても、精度に関する部分は大事に扱い(調整や仕上げ等)設計自体もそうです。 但し、使用すればヤレてくるのはしょうがないですしそれによって過去の精度が出なくなる場合もあります。そこで時計師さんたちは仕上げ調整や組み方で手を施すと存じます。パーツ自体の材質もあり、ゼンマイ(動力用)やヒゲぜんまいも補修部品や新規材料での代替え等、多々ある世界です。潤滑のオイルも年々性能が上がっていますのでこの点からの摩耗への対策もあります。 それと中には構造上特殊であったり難易度の高い時計でもきっちり組めると精度が出るムーブメントもあります(本題逸れますがクロノグラフ等がその傾向)。 各部品(特にテンプやヒゲぜんまいの関係)を挙げられて精度のお話がありますが、本来一番大事な事はトータルバランス、その中でも基礎となる“地板”が健全・精度が良い事です。これがダメならどんなムーブメントもその場の調整で良くても経年で精度がすぐ落ちたり、精度も回復できなくなる。よく部位的な評価がもてはやされるのですが(それも分かります)でも、一番の根底がでないのは認識が・・・これはどんな時計師さんもOHの際気にする部分。歯車類やテンプ周りの調整は必須で重要課題だけど、そのベースがだめなら“歯槽膿漏の歯”と一緒です。貴男のKSの精度は一番の元は地板がシッカリしている事。それに組み合わされる部品類のバランスが精度込みで良い状況を維持していることです。地板を拘らないひとは時計知らな過ぎ・・・と言われました。 (逆に地板のコンディションを把握して歯車類を微調整して組み上げるのも時計師の技量です。ただ精度確保にはそこで限界も生じます) こうした中で、定期的なメンテナンス後でもそう調子が変わらない、調子崩さない、経年使用でも精度が変わりにくいのが良い時計ですし、精度をダウンさせない、でも”精度を上げるために無理な組み方をして最終的に機械に負担を与えない組み方”が、ある意味本当に上手な組み方と存じます。ちょっとの精度の差は主観チャンピオンデータに過ぎず、それよりムーブメント自体のコンディションを良好で維持する方が後々有利になるからです。 GSやKSはある種特別なライン(今の雫石工房のスペシャリストのような感じ)で組み上げられ、スペシャリストもいらっしゃいました(ほかの方のお話内容も書物などに時々載っていますが)。例えば当時の天文台コンクール向けのムーブメント設計技術者と共に携わるその時計師(女性)のインタビューがあって興味深かったです。SEIKOもムーブメントには値段と共に格差があり激しいのですが、お手持ちのレベルは中でもハイグレードです。大事に時を刻む姿を楽しまれれば・・・。主観ですが程度の良い国産は市場でも大変少なく感じています。扱われ方もあるのでしょうけどネ。 (愚例ですが、私もGS2ndと44KS、PROFESSIONAL 300m(36000)を好みで所有してます) でも、海外のクロノメーターを通してるムーブメントの機械がごまんとある・・・なぜでしょうネ。愚直なまでのSEIKO等の理論追求やモノづくりもあるけど、一方で基礎設計と調整技術で成し得てる部分も大きいです。機械の特性もありますし。 余談ですが、SEIKO(他社もですが)は予備品が無くなる時点でOHを受け付けなくなります(昔も今も。機械式もクオーツも)。場合によっては受けてもらえないこともあります(純正新品の管理された部品でしか対応しない、オリジナリティの品質管理のため)。基本はメーカーへ相談・依頼がスタートです。 年代によっては代替えに交換です(当時の純正よりヒゲぜんまいははるかに材質とも進歩していますし形状もシビア)この点でも修正含め対応できるのがメーカー対応が無理となると良い時計師さんでしょう。理論と現実の扱いはまた別ですから・・・。一般論かつ一番大事なのは重要な部位の配慮もあるけど端的部位への着目だけとせず常に全体を見る視点と調整・・・です。素人上がりの物知りが偶にいるのでそういう人に別な時計預けるとほぼ間違いなく失敗し、出来ない理由を言う愚例の苦い経験も・・・(ため息) 長文愚答ですがご参考になれれば幸いです m(__)m
お礼
marennes様、素人なもので何度も読み返さないと内容についていけません。すみません。 でも、機械式時計の魅力が益々ましてきます。 何度も読まして頂きます。 本当にありがとうございます!
- tutohan
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#2です。 申し訳ありません! 「あと、#1の回答者様への補足に書いてあったところですが、 基本、(3)→(2)→(1)でしょうが、」は、 (3)→(2)→(1)は精度の良い順番は逆で(1)→(2)→(3)の間違いですね。
- tutohan
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こんばんは。56キング良い時計ですよねー。 何度かOHしてます。 56キング等、古いセイコーのクロノ規格品は(2)に当てはまります。 どちらかといえば部品の精度で追いつかない部分を 当時のセイコーの職人さんが追い込んで調整していたそうです。 例えば、 1)、歯車のアガキ調整(主に縦ガタ)、アンクルとがんぎ車の喰い合い調整 2)、テンプのひげぜんまいの偏心取り(振れとりといいます、セイコーの調整は別格です)縦姿勢の調整、 3)、組みあがった後のひげぜんまいと緩急針とのバランス、当たり方などの調整(アオリ調整といいます) 等々です。 特に2)、3)、の調整は、クロノメーター調整品は特別調整を専門の職人が行っていたようです。 ちなみに、ひげぜんまいの調整を非常に重視するのは姿勢差の追い込みの他、 等時性の調整※の為で、セイコーの職人さんは非常に重視します。これは世界でも類を見ないと言われます。 ※等時性調整…時計がフル巻き状態の時の高振り角での精度と、ゼンマイが解かれて低振り角になった時の精度が変わらないようにする調整。日本では非常に研究、重要視され、教本の半分に充てていたが(結構貴重で手に入らない)、WOSTEPの教材では1ページ程度だそうです(第二精工舎OB某氏の記事より)。 ちゃんと決まった時間にゼンマイを巻く風習があった外国のかたの考えと、そういう習慣があまり浸透していなかった日本人向けに出来るだけ高精度を…という為の研究だったのかもしれません。 尚、ひげぜんまいの振れ取りを重視するのは、セイコー伝統の緩急針付きのムーブメントでいかに姿勢差を無くすかというところだったそうです。 >一度OHに出し、下手くそな職人さんに当たってしまえば、クロノメーターなんて書いてあるだけということになるのか否か、 セイコーサービスセンターに相談するのが無難。 舶来品は得意で、部品も沢山持って腕もいいが、肝心の振れ取りがセイコーの職人さんのように調整できなければ新品の部品が手に入ったところで無意味になってしまいますので気をつけましょう。 勿論機械の状態にもよりますけどね。 あと、#1の回答者様への補足に書いてあったところですが、 基本、(3)→(2)→(1)でしょうが、使用状況による「ひげぜんまい」の崩れ方によると言っても過言ではないかもしれません。 そのくらいひげぜんまいは重要な部品です。 OHする方が通常程度の振れ取りしか出来ない、あるいはそれ以下の技術であれば順番はひっくり返りますよね。 当時のセイコーのトップクラスの精度調整専門のかたが調整した時に、クロノメーターに合格した時計なのですからね。 また、関係有りませんし、すでに御承知かもしれませんが、56は日送りする歯車が樹脂性なので日修正する禁止時間帯に充分気をつけて大事に使用してあげてくださいね。結構部品交換してる方いらっしゃいますので…。 追伸、クロノメーター規格はムーブメント単体での検査です。針を付けてケースに入れて時計となった場合の検査ではないので携帯精度ではありません。車でいえばグロス上の馬力であり、ネット馬力ではないということです。
お礼
tutohan様ご丁寧にありがとうございます。読ませて頂きメッチャドキドキワクワクしました。 僕は本当に良い時計を手にしたのですね。 一概にこーだあーだ言えない世界の話を一概に言ってくださいと無理なお願いをした、私は無知なならず者だったということがよくわかりました。こんな私のレベルの低い質問にno.1の方同様ご丁寧にお答え頂き本当にありがとうございました。時計、大切にしたいと思います!
補足
marennes様、わたくしのような素人の質問に、本当にご丁寧にお答えくださり、本当にありがとうございます。 実は去年の暮れに1968年に製造された5626-7010キングセイコーを縁あって手にしました。それ以来、アンティークの機械式時計にはまってしまって、深く知りたい欲求を捨てられません。 最後にご丁寧なお答えを拝読させて頂いた上で、まとめとしてご質問させてください。 経年を無視して、(1)60年台後半に製造された日差10秒以内のキングセイコーのクロノメーターと(2)日差30秒以内の同時期に製造されたクロノメーターではないキングセイコーと(3)日差1分以内のここ5年内に作られた逆輸入の1万円以内で購入できるセイコー5をメーカーが推奨する、購入して最初の期間でセイコーのお店にOHに出したとします。一番簡単なOHの、いわゆる安い料金のOHを(1)から(3)にしてもらったとしても、あくまで一般論として、組み上がった後の精度の良い順番は(1)(2)(3)の順になるはずだ、ということで良いのでしょうか? 私の56キングは月から金まで週5日使って週末2日休ませるというスパンで使っていますが、以前のオナーさんが大切に使われていたようで日差5秒以内で収まっていて、すごい精度だなぁとキングセイコーのポテンシャルの高さを実感している次第です。