イージス艦は、対空戦闘(飛行機や飛来するミサイルなどから艦隊を防衛する)に特化された戦闘艦です。外観上分かりやすい『砲塔』が一つしかなく、『ミサイルランチャー』の類が見えないので、知識の無い方には弱そうに見えるのでしょうが、イージス艦の主な武器であるミサイルの発射機は、甲板に埋め込まれています。VLSと呼ばれる垂直発射装置でして、ミサイルを一旦真上に打ち上げた後、目標の方向に向かってミサイル自体が向きを変える方式を取っています。
この方式の利点は、一々目標の方向に発射装置を旋回させる必要が無いので、その分の反応時間を節約できる事です。さらに、ミサイル発射機(キャニスターと呼ぶ)の発射口が碁盤の目状に並んでおり、並んだ複数のミサイルをほぼ同時に発射する事が可能なので、同時に360°全方向から包囲してくる目標に対して、イージス艦側も同時にミサイルを撃つ事が可能なのです。旋回式の発射機はイカツくて、見た目には格好良いのですが、こんな器用な芸当はできません。
このように効率的なミサイルシステムを最大限に活かすのが、他の方がすでに説明された同時他目標補足・攻撃システムであるイージスシステムですが、現在ではイージス艦以外の艦でも、垂直発射式のミサイル発射機を装備するのが主流になっており、統一された兵器系統と高速データリンクで艦隊全体の攻撃力を効率よく発揮するようになっています。ネットワーク型海軍というわけですね。
ついでに説明すると、このVLSには主な用途の対空用だけでなく、アスロックと呼ばれる、先端に分離式の魚雷を搭載した対潜水艦用のミサイルも発射可能です。米軍のものはトマホーク巡航ミサイルも発射可能ですが、自衛隊にはありません。対水上艦用のミサイル(ハープーン)だけはVLSから発射できないので、これの発射機だけは艦橋構造物の隙間の部分に別途搭載されています。