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首都圏にホットスポットなぜ?

 「東京電力の福島第1原発事故に絡み、首都圏でも『ホットスポット』があると聞きますが、どのような場所で放射線量が高くなるのですか。また、ホットスポットからさらに周囲に放射線が拡大して飛び火することもあるのでしょうか」=東京都江戸川区の会社員、生野浩さん(38)

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  • SANKEI1
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 ■柏の側溝で「DANGEROUS」  ホットスポットとは、周囲に比べて高い放射線量が計測される地点のことをいう。原発から距離がある場所にもかかわらず、なぜ首都圏の一部地域だけに突如、高い数値が出るのか。ガイガーカウンター(線量計)を携え、ホットスポットとして注目を集めている千葉県柏市を訪れた。  東京大のキャンパスや千葉大の研究センターが近隣にあるつくばエクスプレスの柏の葉キャンパス駅で降り、さっそくタクシー乗り場の地上1メートル付近で計測してみる。計測値は、0・4から0・5(以下、単位は毎時マイクロシーベルト)と、高い数値ではあるが、健康に影響が出るような問題となるレベルではない。  念のため、比較として、電気街・JR秋葉原駅前で同様に地上1メートル付近で調べたところ、0・1から0・2を表していたから、柏市の放射線数値の高さが分かる。  柏の葉キャンパス駅から歩いて約20分、市民の憩いの場所である柏の葉公園へ行ってみた。猛暑のため、子供たちが遊ぶ姿はなかったが、滑り台の下で計測すると、高いところで0・35、ベンチ付近では0・57とこちらも問題視するほどではない。  しかし、公園の入り口の側溝を計ると、画面は1・048を表示。別の線量計では、1を超えると表示に「DANGEROUS(危険)」と出ることから安全の目安を超えている。さらに、近隣の駐車場の地表面付近に線量計をかざしてみると、数値がぐんぐん上がっていき、この日最高の1・474の数値を示した。  首都圏付近ではほかに、千葉県の松戸と流山、埼玉県の三郷がホットスポットとして指摘され、各市では市民の不安の声に押されて対策に追われている。  柏市では、主婦ら約200人が子供たちを守る会を発足、約1万人分の署名を集めて市に提出した。同市では8月19日、計4人の職員を専従に、放射線対策室を新たに設置し、情報の集約に努めている。  染谷誠一室長は「夏休みが終わるまでに、子供たちが活動する学校などの場所の除染をしっかり進めていきたい」と気を引き締める。  ■風に流され降雨で積もる  なぜ、このようなホットスポットが生まれるのか。  日本原子力研究開発機構の永井晴康・環境動態研究グループリーダーは7月、米国・バージニア州の国際会議で、福島第1原発から各地に放射性物質が広がる過程を原子力の専門家らを対象に発表した。  永井氏は計算シミュレーションにより、3月に原発から大量に放出された放射性物質が風に運ばれて雨雲とぶつかり、たまたまその地域に雨とともに降り注ぎホットスポットを形成したと分析。「放射性物質がどのように広がったかは世界的に関心を集めており、日本としては情報を発信していかなければならない」と強調している。  群馬大の早川由紀夫教授(火山学)も、火山灰の拡散メカニズムを基礎に、原発から漏れた放射性物質の広がりを示した地図を作成。早川教授も「そこに放射能物質が大量に降り積もった」と風と降雨との関係性を説明する。  地図によると、柏市など首都圏に流れ込む放射性物質は陸地からではなく、太平洋から海沿いに南下し、水戸市から南西へ、最終的には東京湾へ流れ込む形になっている。  問題は、放射性物質がホットスポットから周囲に漏れ出ることがあるか、ということだ。  早川教授は広い範囲内で「放射性物質が漏れることはない」と断言するが、永井氏は「表層に積もった放射性物質が、雨で洗い流される可能性がある」と指摘。狭い範囲内では、屋根に降り注いだ放射性物質が、側溝に流れ込み周囲に拡散する恐れもあるという。  各自治体はホットスポットの除染を続けているため、周囲に拡散したとしても放射線レベルがこれ以上上昇することはないとみられるが、市民らの不安を解消するため定期的な観測は今後も必要となるだろう。       (天野健作)      ◇  「社会部オンデマンド」の窓口は、MSN相談箱(http://questionbox.jp.msn.com/)内に設けられた「産経新聞『社会部オンデマンド』」▽社会部Eメール news@sankei.co.jp▽社会部FAX 03・3275・8750。