厳格な古典音楽には、形式・様式というものがあり、その中の器楽曲の様式、例えば「ソナタ形式」であれば、「ソナタは、このように作ること」という約束があり、作曲家は、その約束・制約の中で、「音」という素材を使って、数学的に曲を組み上げていきます。複雑な音の組み合わせにより響きを濁らしたり、澄んだ響きにしたりして変化を付けていきます。
ソナタ形式の作り方
1.Aメロ 2.Bメロ 3.AメロとBメロの応用展開 4.Aメロをもう一度 5.Bメロをもう一度 6.エンディング
という部分の構成で作ります。
Aメロは、「第一主題」、Bメロは、「第二主題」と呼ばれ、これら二つの主題を演奏する部分を、「主題提示部」と呼んでいます。
聴衆は、この主題をよく耳に刻んでおかないといけません。
この主題を応用して展開する部分を「展開部」と呼び、ここが作曲家の作曲テクニックの見せ所となります。ジャズで言えば、本来のメロディーを演奏した次のアドリブ演奏みたいなもので、腕の見せ所です。
最初の主題をよく聴いておかないと、その題材をいかに高度に処理しているのかが分からないので、楽しみが半減します。
そして、十分に作曲技術を見せ付けたところで、「今の展開は、この主題に基づくものでした」という意味合いで、最初の二つの主題をサラっと再現します。
この部分を「主題再現部」と言います。
そして、フィナーレを演奏して終わる、という約束です。
「交響曲」というのは、「オーケストラのためのソナタ」という意味です。
「ピアノソナタ」とか、「バイオリンソナタ」と言いますが、「オーケストラソナタ」とは言わず、「交響曲」と呼んでいます。
このように、あらかじめ決められたフォーマットに基づき、その制約の中で、音の組み合わせの巧みさだけを楽しんでいるだけであり、何かの題材を表現しようとしたわけではありません。ですから、出来上がったものは、出来上がったものから順に「第何番」としているのです。
一方、表題のついた音楽は、作曲家が表現したい対象を決めて、それを音と言う素材を使って表現していきます。昔の音楽にもそのような表現対象を決めて書かれたものもあります。
また、本人の死後に、出版社、レコード会社などが、よく売れるようにと、覚えやすく印象的な表題を付けて親しみやすくしたという曲も多くあります。特に日本では、表題の付いている曲の方がよく売れますが、作曲者本人が付けたものは少ないです。