※ ChatGPTを利用し、要約された質問です(原文:彼女は幻覚・妄想のない緊張型統合失調症ですか?)
彼女は幻覚・妄想のない緊張型統合失調症ですか?
このQ&Aのポイント
彼女は幻覚・妄想のない緊張型統合失調症ですか?一応そう診断されてましたが。
彼女は寂代市の病院で療養中の緊張型統合失調症患者です。入院から数日が経ち、一般の病室に移されました。
僕は病院の談話室で本を読んでいると、緊張型統合失調症の若い女性が入ってきました。彼女は憔悴した表情で、僕とコーヒーを飲みながら静かに過ごす日々を過ごしています。
一応そう診断されてましたが。
(小説『暁』犬儒より)
観察室にいた若い女は入院から数日が過ぎて一般の病室に移ったようだ。
僕は北海道の寂代(さびしろ)市の病院の精神神経科病棟で療養をしている。
普段着を着ている人が多いが、女は昼も部屋着でホールなどにたまに出てくるようになる。薄クリーム色にライトブルーの部分が少しあるパジャマのような服だ。いたいけな若い女性、死と闘う病状がせつなさを感じさせる。
病院は寂代市にしては立派な造りでライトグリーン系の内装もモダンな感じがしたが、全体的に澱みのような印象が付きまとっていた。面会室など、各種の細かい部屋がある。
僕が談話室で十冊ほどの本を少しずつ読み進めていると女が憔悴したような沈痛な面持ちで部屋に入ってくる。ステレオはチャイコフスキーの交響曲第四番の第一楽章が流れている。ブランケンブルクの『自明性の喪失』を再読している。旧西ドイツの病院での精神分裂病の各亜種の統計数字。僕はページ数を暗記して本を山の中村雄二郎の『共通感覚論』の上におく。
「こんにちは」僕は言う。
「こん……」女が返事をする。
女はやや肩を狭めたような雰囲気で所在なさげにか細く僕の前のソファに座る。女は少し目を落としてから僕を茫洋と見つめる。
「有村(ありむら)さんていうんだよね?」僕は病棟からナースステーションの壁に貼ってあった病室配置表を見ていた。
「うん」有村茜(あかね)は少ししんどそうに答える。彼女の視線は何かを問いかけるように僕の眼鏡を捉えている。
なにか喋りたい風でもあるが、彼女は喋らない。
僕は美しい女性に見つめられて少しどぎまぎする。
しばらく様子をみるが、彼女は陶酔したかのように懐かしげに僕を見つめる。彼女の印象を一言で言うとやつれていた。
「コーヒー飲む?」僕は尋ねる。
彼女は少し手元を見るがまた視線が茫洋となる。ゆっくりと目を上げる。
僕は流し台からありあわせのカップを持ち帰りタッパーウェアから粉をついで水を汲みに行く。氷無しのアイスコーヒーを作り戻って彼女の前のテーブルに置く。
有村茜はやや目を伏せながら少しずつコーヒーを飲む。やはり憔悴したようで、動作はスローモーだ。僕は彼女がコーヒーを飲んでくれたので嬉しい。
カップにコーヒーを少し残してテーブルに置き、ゆっくり目を上げてまた何かを問いかけるように僕を見つめる。
「もう一杯飲む?」僕は自分のコーヒーを飲みながら尋ねる。
よくわからないが、もういいようだ。
また僕はどぎまぎするが、痩身の彼女は僕の目を見つめるようだ。
彼女の顔は各パーツが大きめかなという感じだが、美人に見える。化粧はしていない。髪はセミロングで繊細な感じ。肌は白く、まだ少女と言ってもおかしくないように見える。鼻筋が通っており、目は何かを問いかけるように無垢で純粋だ。
どんなカップルでも、親しくなれば黙って見つめあうくらいのことはある。それが唐突に少し早く来ただけだと思う。僕は美しい恋人に酔うように彼女の瞳を優しく見つめる。
彼女は思いついて席を離れてホールであちこち行ってもしばらくしてまた戻ってきて悲しみにも近いような目線でまた僕を見つめる。
僕は彼女が僕を特別に思ってくれているように感じて嬉しい。
何度か僕の前に戻ってきて、部屋に戻って横になる。
夕暮れが近付いている。
次の日もまた二人でコーヒーを飲む。僕は少し彼女に話しかけるが、あまり返事は期待しない。沈黙に耐えられる関係は恋の成熟を示すと思っているが、思わぬところでそういう女性を得たと感じる。僕は彼女を愛おしく感じる。
(小説『落日』犬儒より。モデルは同一)
「一生付き合いたいというか、君の生活がゆとりのある生き甲斐のあるものにできるはずだと思うのだけど」
槇子の瞳孔が僕の目線を捉えて動かなくなってきた。
「結婚してほしいんだ」
槇子はうつむいてそれを拒絶はしなかった。心なしか瞬きしなくなったように感じられたが、茫漠と僕の瞳を捉えて固まってしまったように思われた。僕は言葉をなくした。何を言えばいいんだろう。
槇子は正座していたが、膝を崩すわけでもなく、考え込むというよりは僕の目のさらに遠くの何かを見つめるような茫漠とした目線だった。僕は何か、美しいものを壊したくないような気持になり言葉を発することができなかった。
彼女の憔悴したようでもある表情とまなざしは僕の心に陶酔をもたらした。何か言うべきのようにも思われたが、それよりなにかを待つべきのように思われた。
どれくらい時間が経ったのだろう、僕も目線をそらさなかった。ゆうに二十分くらいの時は過ぎたように思われた。
僕は手を差し伸べた。槇子が手を取ってくれたので抱き寄せて背中を二、三回叩いて勇気付けた。
お礼
僕も多分、現代医学では分からないのだと思います。 ありがとうございました。