はじめまして。
ファースト以前の大半のロボットアニメは敵は邪悪な異星人、超古代人、マッドサイエンティストなど。そのデザインも露骨に「邪悪な敵」を強調したものが多く、ロボット自体もワケの解らぬ超エネルギーのもので動き、合体中は敵は攻撃しない、必殺技は掛け声で発動、物理法則も無視、伏線も何もあったものではない、とにかく「ガキども」に玩具を売れとばかりのものが量産されていました。正に「子供だまし」です。
監督の富野喜幸(当時)氏はガキ相手の作品でも「ウソ」はいかん! との信念の持ち主でその状況を忸怩たる想いで製作をしていました。
まず「サンボット3」で異星人は侵略してくるが、その目的は主人公達一家で他の住民は巻き添えとなるので、周辺の憎悪の的となり、友人も仲間も次々と犠牲になる様子を描きました。
続いての「ダイターン3」では侵略者は火星に本拠を構えるサイボーグ(作中ではメガボーグ)で人類総サイボーグ化を目論見、その野望を打ち砕くべく立ち向かう主人公が実はそのサイボーグ技術開発者の息子であり、サイボーグの反乱で家族を火星で失って地球に逃げてきたとの設定でした。つまり主人公の本意は地球や人類を守ることではなく、実は復讐でした。ただ毎回コメディタッチの演出だったので視聴者はなかなか気付かないような創りになっています。
この2作の玩具がそこそこ売れたので次も創れることとなり、そこに登場したのがファーストです。
ファーストは全ての面でそれまでのロボットアニメとは異なっていました。敵も普通の人間。人間同士の戦争。ロボットは道具(兵器)。ずぶの素人が生き残るために戦わざるを得なくなる状況。主人公を含む登場人物は皆、現実に存在するような人間ばかりです。ひきこもる。嫉妬する。恋愛する。憧れる。復讐。裏切り。お偉いさんは役人タイプの事なかれ主義連中が大半。善人は真っ先に斃れる。
それまでとは全く異なる、人間に近いキャラクター達が画面にいました。
またロボットも超兵器ではなく、似たような性能。大量生産品も登場。
宇宙空間で気密服も着ずに平気で生きているようなヤツはいません。外壁が破れれば空気が流出します。宇宙空間なので上下もありません。海での艦隊戦のような平面上の戦闘もありません。
すべてがリアルでした(ミノフスキー粒子はロボットを必要不可欠にさせるための、超科学的産物ですが。コレを除けば)実現の可能性が高いものしか登場していません。
当然ガキには理解不能で人気はなく、玩具も売れず、放送短縮の憂き目にあってしまいます。
ところが夢中になったのが当時SF(SFは当時ブームでした)好きな高校生や大学生です。
小馬鹿にしていたロボットアニメで、科学考証のあるSFの世界が繰り広げられたのですからムリもありません。
このSFファンの活動が発端となりファーストは復活しました。
ファースト以降はそれまでの超科学にご都合主義のロボットアニメ(スーパーロボット)は衰退し、別称リアルロボット路線がメインストリームとなります(まぁ、玩具を売るためは変わっていないけど。今はプラモか)。
お礼
ちがいがとてもわかりやすかったです。 大変参考になりました。ありがとうございます。