丹沢の最深部ですね。登れるとは思いますが、登山経験がないということですと、やはり大変だと思いますし、18歳という年齢が非常に気になります。
昭文社の地図を見ますと丹沢の代表的な登山口の大倉から最短コースをピストン(往復同じコースを歩くこと)しても11時間20分の行程になります。10?前後のザックを担いで踏破するとフルマラソンの2.5倍程度の行動エネルギーを費やすと思います。日帰りも可能な行程ではありますが、日帰りするとなると間違いなく健脚コースです。
体育会系で体力に自信があるという人間が、その自信を完膚なきまで打ち砕かれるのが初めての登山ではないでしょうか。何しろ若い自分がヒーヒー言っている脇を、50代60代のおっさんが平然と追い抜いていきますから。まるで妖怪でも見ているように思うこともあります。
丹沢山系は標高が低いので、案外簡単に考えがちですが、登山口の大倉から南に10分も車を走らせれば相模湾が広がっている訳ですので、決して楽な山域ではありません。北アルプスの代表的な登山口の上高地や南アルプスの代表的な登山口の広河原はすでに1500mの標高が有るわけですので、南北アルプスを登る程度の運動量は覚悟して下さい。
先ほどのコースで蛭が岳に登った場合のコース延長は24?、累積標高差は2400mで、健脚者にとっても日帰りの限界かと思います。ちなみに都庁の展望台は約200mですので、10kgの荷物を担いで都庁展望台12往復と考えると判りやすいかもしれません。
先ほど、18歳という年齢が気になるといいましたが、それは二つの理由によります、
一つはオーバーペースになりがちなこと、後の一つはこの時期の山に行くのに必要な装備が高価なことです。
先ず第1に、若い人の場合、始めに飛ばしすぎて後半でメロメロになることが多いんですね、特に中高年に抜かれたりすると負けてなるかなどと思うんでしょうね。
私はよく倅(15歳174?62kg)を山に連れて行きますが、いまだに私の方が大きなザックを背負っています。ですから山では歩きなれている人間にはかなわなくて当たり前と思って向きにならずに登って下さい。
第二はコスト的にきついのではないかということです。
丹沢山系といってもこの時期は冬山です。特に丹沢山から蛭が岳の間は凍結箇所も多いと思います。そのため最低限の冬山装備がないと命にかかわります。勿論標高が低いので豪雪地帯に踏み込むような装備は不要ですが。時期的に見て昨年の7月16日のトムラウシよりは寒いはずです。
最低限の装備として、ゴアテックス(或いはこれに相当する)アウターウェア上下、革製(或いはこれに準じた保温性防水性の)ハイカットの登山靴、ロングスパッツ、6本爪以上のアイゼン、ピッケル又はストック等は必要になると思います。そしてこれらのアイテムやその他コンパスや地図などを揃えると、10万円前後の出費になると思います。18歳という年齢ではこの出費はかなり厳しいと思いますがいかがですか。
丹沢山系は4月になれば気候も穏やかになりますので、それを待って出発してもいいと思います。その場合でもいきなり無理に日帰りなどせずに、塔の岳の尊仏山荘か丹沢山の深山山荘あたりで1泊するくらいの予定の方が無難かと思いますよ。山の事故原因で滑落だの転倒だのと言っても、そのさらに前の原因は疲労でして、フラフラしてくるからズッコケル訳ですね。
又は、同じ丹沢山系でもより前衛にある鍋割山や塔の岳あたりで、登山とはどんなものなのかを体験してもいいと思いますよ。そのあたりでしたら今の時期でも十分安全に登れますよ。それでもアウターだけはいいものを用意して下さいね。最終的なシェルターですから。