作家とサラリーマン(日本航空の広報部長)の二足の草鞋を履いていた深田祐介氏の軽妙なエッセイにこんな文章がありました。(記憶で書くので、原文と多少は違います)
スチュワーデス出身の部下がこう言うのだ。
「機内食を列車のようにしてくれないかしら」
その訳を聞くとこうだ。
「最初の機内食は離陸してから2時間ほどでサービスする。ところがその時間帯になると疲れが出るのかお休みになっているお客様が多いんです。目をつぶっているのか、それとも寝ていらっしゃるのかが外見ではわからないので、私達は全員にお声を掛けるんです。中には食べたくない、後にしてくれと仰る方もいますが、時には気持ちよく寝ているのに起こすな、とお叱りを受けることもあります」
「だから、いっそ車内販売のようにして『お食事はいかがですか?』と通路を往復しているほうがお客様のご要望にも応えられますし、不要な方は無理に食べずにも済むんです」
(こんな内容でした)
でもこれでも問題は起きます。寝ているい間にカートが往復したが気が付かなかったお客様が「なぜ起こして知らせないんだ」とお怒りになるわけです。うっかり声を掛け損なってサービスをしていなかった時に(これ、結構あるんです)、激怒して「こんな酷いサービスの航空会社は初めてだ。もう食事などいらないから、紙とペンをくれ。あんたの会社の社長宛に手紙を書くから」と、その後の真剣なお詫びにもまったく耳を貸さない方もいらした、とも書かれていました。
スチュワーデスはウェイトレスではありません。乗務員として旅客の安全を守る仕事です。食事サービスは業務の一部にしか過ぎません。しかも彼女達の仕事は極めてスケジュール化されています。目に付きやすいサービスも限られた時間内に終わらせなければなりません。
決められた時間の食事がいやなら食べなければいい、という旅客の選択肢もあるのですよ。
また、どんな希望にもこたえられるようにするため、重量がオーバーするほどまで余裕のある食材を積めば、運送コストも上がりやがて運賃値上げに繋がります。
お弁当なども楽しそうですが、作り置きの弁当は食中毒の原因になりやすいのです。短距離ならまだしも長距離の国際線になれば、もし中毒患者が出た時には出発地に引き返すか、航路を変更して最寄の空港に着陸することも強いられます。こうなれば大多数の旅客に迷惑がかかり、大きな苦情の種にもなりますね。
限られた空間、多数の乗客を一遍に、なるべく快適に運ぶために機内サービスはかなり考えられたものになっています。多少の不満はあっても、大量輸送を前提にすればそれなりの理由もあるわけです。
深田祐介氏はこんなことも書いています。やはりスチュワーデスからの愚痴です。
「お食事サービスの時にお飲物を聞くんです。そうするとお客様はうーーーんと考え込む方が殆どです。そしてやおら隣の方を向いて『おい、飲物だってさ。お前、何にする?』って」
「そうすると聞かれた方も、うーーーーーん、と腕組みして唸って今度は後ろのお友達に聞くんです。『お前、何にする?』 その方も、うーーーーん。何人か同じ質問が巡り、ようやく最後の人が『おれ、オレンジジュースにする』と答えるとさっきとは逆の順で『おれもそうする』、『じゃ、おれもオレンジジュースだ』、『あ、おれもだ』。結局全員の方が無難なオレンジジュースになリますね」
普段オレンジジュースなど飲まないような脂ぎったおじさんたちがこんな風になる光景を私も何回か見ました。その間、スチュワーデスは辛抱強く待っていました。
チキン、フィッシュ、ビーフなどある程度の予測をもとに機内食は積み込まれていますが、どうしてもすべての希望に応えるのは無理なんですよ。レストランではないんですから、エコノミークラスならそれを理解して下さいな。
お礼
長文の回答ありがとうございます。 例にあげられたスチュワーデスが通り過ぎたと文句を言う客は、 相当特殊な人で参考にならないと思います。 列車でそんな人見たことないです。 他の回答者のかたもそうですが、 重量、かさ張り、スチュワーデスの手間は、 今の機内食より駅弁のほうが小さいと思います。 あと、消費期限10時間くらい持つ弁当はあると思います。 エコノミーだから我慢とかの問題でなく、 もっと知恵を出して、工夫してほしいです。