Q/実際長期のデータ保存には適していないのでしょうか?
A/どうでしょうね。最新世代のNANDフラッシュは、データ保存において約10年以上の記憶保存能力があるとされています。ただし、最新世代は10年間使った実績ではなく、研究レベルでの理論値です。
また、保存されている情報(ビット/電荷)はいつかは抜けてしまうというのは、間違いありません。
加速度試験など昔から製品に使われていますが、現実に使ってみると思わぬ欠陥が見つかることもよくあります。記録メディアで最も話題になったのは、CD(Compact Disc)でしょう。登場した80年代には半永久を謳ったメディアでしたが登場20年を前に読み出しができなくなる事例が報告されるようになりました。アルミ層や樹脂保護層の劣化が明らかになりました。
新しいものは、特にその実績がないため、販売上の理論数値が多く使われているのが特徴です。そして、それらの製品の多くは一般消費者に販売され、高い信頼を求める業務用では、コストを掛けてもクラスが異なる商品を出したり、最初から販売しないケースが多いのです。
即ち、理論値を謳っていてもその程度の代物だと言うことです。
現在業務用で普及しているメディアは、DVD-RAM、MO、LTO、RAID1または5型のHDD、DDS(DAT)です。SSDを売り始めたメーカーでもSLCタイプが主力となっています。
未だにテープメディアであるDATやLTOが使われるのは、容量が大きいこと温度と湿度、磁気などの環境にさえ配慮すれば光学メディアより圧倒的に長持ちすることと単価が安いことがあります。
対して最先端のBDやSSDの使用率が低いのは、コストが高い割に容量が少ないこと。信頼性が未知数であることなどがあり、大規模サーバーでは特に重要な部分への利用を避ける傾向があります。
Q/読み込みや書き込みをしない保存であれば長期の保存も可能なのでしょうか?
A/何ヶ月・または何年を長期とするのかは使う人に依存しますが、見た目に劣化度合いが分からないわけですから、全て回路上の目に見えないものに依存します。
さあ、USBメモリAとBどちらが長持ちするだろうかと言われて、AだとかBだとか分からないでしょう。CPUや一般的な物理メモリにおいて故障の把握が難しいのと同じです。特に、NANDフラッシュは読み書きを繰り返してランダムテストをすると、寿命を縮める厄介な代物ですからね。物理限界と論理限界の差をどのように見極めるかは難しいところです。まあ、最近は、エラーの発生したビットを強制的に停止させるスキップセクタ機能がありますが、書き込んだ後で抜けたビットには効果がない。
とはいっても、実績が追いつく前に小型化などによる使い勝手や大容量化が進むことで、可能も不可能も関係なく主力メディアとしてより普及するのでしょうけどね。
Q/また、SDカードもUSBも寿命に差はないのでしょうか?
A/製品の寿命は利用する絶縁膜の仕様やウェアレベリングの仕組み、半導体プロセス、そしてセル一つ当たりに収めるデータの量(ビット数)に依存します。SDカードもUSBメモリもSSDも、その他のNANDフラッシュも全て設計と製造の違いで変化します。
即ち、製造するメーカーや工場、場合によってロットによって寿命にそれなりの差が出るのです。
HDDなどでもそうですが、これらに比べて実績が少ない割に今や恐ろしく大量生産されていますから、良い物も悪い物も混在しているのが今のNANDフラッシュです。
尚、NANDフラッシュはウェアレベリングが搭載されているものでSLC(またはMLCでもセル当たりのビット量が一定を維持していれば)であれば、容量が大きいものほど理論上は長く高い信頼性を維持することができます。
お礼
詳しい説明ありがとうございました。