再び登場のappaloosaです。
前回、ステッピングについて書きましたが、今回はもっと掘り下げて、CPUの製造について詳しく書きます。
CPU作りは先ず設計から始まります。パソコン雑誌等では、これを「マイクロアーキテクチャ」と言っています。マイクロアーキテクチャの改良によって、CPUの基本性能を向上する事が出来ます。しかし、CPUの設計には莫大な投資・時間が必要で、どんな大企業でもそんなに頻繁に新設計のCPUをリリースする事は出来ません。
次に、CPUの製造です。CPUは、「シリコンウエハ」と言われるシリコン製の円盤状の板の上に配線をレーザーで焼結する事で出来ます。現在、一般的には円盤の大きさは直径20mmですが、チップは一つ一つ造るのではなく、その円盤の上で複数個をまとめて造り、そこから一つ一つを切り取って造っているのです。
この点は非常に重要です。何故なら、円盤から四角形のチップを切り取っていくと、湾曲している円周の部分がどうしてもムダになっていくからです。そこで、このムダを無くす為に次のアプローチが取られます。
(1)シリコンウエハそのもののサイズを大きくする。
(2)チップのサイズ(ダイサイズ)を小さくする。
(1)は、沢山ある工場の規格を変えないといけない上、シリコンウエハのサイズを大きくするのは高度な技術が要求されるので、そうそう簡単には実現しません。そこで(2)の実現の為にステッピングの改良によってダイサイズを縮小する事で、同じサイズのウエハからより沢山のチップが採れるようにするのです。
もう1つ重要な点は、チップ製造の過程で、あらかじめ「このチップは~GHzで動作させる」と決めているのではなく、作った後に動作させるクロックを決めているという事です。つまり、作る過程では、チップがどの程度の速度で動いてくれるか分からないのです。従って、チップの出来が悪いと、同じチップでも900MHzでしか動かなかったり、逆に出来がよければ1GHzチップを沢山供給出来る、という事もあります。そこで、ステッピング改良によってより高クロックで動作するチップが大量に採れるようにする訳です。
また、前述のように頻繁に新設計のCPUをリリースする事は困難な為、人々のより高性能な製品への欲求に答える為には、最も容易に性能を上げる方法として動作クロックの向上が不可欠です。そこで、ステッピング改良を行うことで、より高クロックな製品を製造する訳です。
ここまで、長々とステッピング改良の意義を説明しましたが、その効果は次の通りです。
(1)従来より高クロックで動作出来るようになる。
(2)(1)より、同じクロックなら新ステッピングの方が安定した動作が望める。
もっとも、クロックが上がるといっても、大した向上は望めませんよ。むしろ(2)の方が重要です。新ステッピングの方が僅かですが同クロック時の消費電力は小さいです。下の方が書いているように、ステッピングにこだわるのはオーバークロックの要素が大きいでしょう。ステッピングが新しい程、クロックを上げる余地が大きいからです。
お礼
非常に丁寧な回答ありがとうございます。 なるほど、ステッピングにこだわる方というのは、 オーバークロックを見越している方が主であるということがなんとなくですが分かってきました。 ですが、ステッピングを変えたいが為に、 同クロックのCPUに買い換える方がおられるというのには、本当に驚かされました。 むしろ旧ステッピングで安く買えたほうが、 私にはいいかなと思っています。 無茶な買い物をしないように、 もっと目ききのできるように、知識のスキルアップも つけたいと思います。 有難う御座いました。