訪問先に食べ物等を持参する習慣は古代からの習慣ではないでしょうか。限られた食料確保と保存に限界のあった時代には、人を訪問しても自分の食い扶持は持参したのではないかと思われます。その後、仏教の到来により先祖を祭るという習慣が生まれ、先祖を同じくするものは親戚を訪問する場合、先祖に物を供えたと思われます。現在は手軽にお菓子などを持参しますが、手土産の本来の姿は食料だったと思います。昔の(今でも)お祭りや葬式の席(食膳)には必ずそこで食べるものと家族に持って帰る分が用意されていました。喜びや悲しみを共有する習慣が食べものを通じて表された、古代の習慣の名残りではないかと思われます。
西洋社会では日本ほど手土産の習慣がありませんが、我々が知っているのは都市部の白人文化であり、地方や有色人種の習慣は違う筈です。
アイヌの伝承(神話)では、クマは山の神の仮の姿とされます。神が人間の世界に来る時、その土産としてクマを持ってきて、アイヌに提供するといわれます。人間はこの贈り物に感謝し、互酬性の原則に従って、お返しをします。それが歌や踊りです。
手土産を持ってきた人と一緒に食べるかどうかは地域性があり一概に言えないでしょう。先ず仏壇に供えてそのままの家庭、しばらくして仏壇から下げて一緒に食べる家庭、仏壇もなく頂いたものは一緒に食べるのが良いと考える家庭などさまざま
でしょう。九州の実家では仏壇にあるものを客人がいる間に食べるのは、下品な行いとされ、子供のころ許可が出るのが待ちどうしかった記憶があります。現在は、土産を本人の前ですぐ開けるのが礼儀とされる欧米風の習慣が、日本の手土産の習慣にも影響を与えているのではないかと思います。