獣医師です。ヒトのインフルエンザに関して専門家というわけではありませんが、ある程度の専門的知識は持っている者です。
去年罹ったからといって今年は罹らないというわけではないことは、誰もが経験則で知っていることと思いますが・・・
その理由については、「インフルエンザウイルスが変異するため」というのが一般的な説明かと思いますが、もう少し詳しく書いておきます。
インフルエンザウイルスはA型とB型、C型の3つの"型"がありますが、それぞれ別のウイルスと言って良いほど性質が異なります。このうち変異が激しく問題となるのはA型インフルエンザウイルスです。
このA型インフルエンザウイルスはHAとNAという2種類の亜型があり、HAが16種類、NAが9種類あります。No.1の方の回答の「細かく分けるとA型は25種類あり」というのがよく判らないのですが、おそらくHAの16とNAの9を足してみたのではないでしょうか・・?
実際はインフルエンザの亜型はHAとNAを掛け合わせて分類されるので、16×9=144種類のA型インフルエンザウイルスが存在することになります。ただ、H16型については、比較的最近発見された型なので、NA亜型が全て見つかっているかどうか判りませんが。
インフルエンザウイルスは水禽類(カモなど)が自然宿主で、水禽類からはHA、NAを組み合わせた亜型全てが発見されています。前述のようにH16については私はよく知らないのですが。
インフルエンザの亜型はHAとNAの組み合わせで分類されると前述しましたが、例えばH5N1というような表記になります。
これら144種類のインフルエンザウイルスの内、現在ヒトの間で流行しているのはH1N1とH3N2の2亜型です。
また、日本でも発生し、現在アジアで鳥からヒトに感染が起きていて「新型インフルエンザ」の出現が危惧されている要因となっているのはH5N1亜型、ちょっと前に茨城県で発生した「低病原性高病原性鳥インフルエンザ(おかしな表現ですが)」はH5N2亜型でした。
ちなみに今年問題になっている馬のインフルエンザはH3N8です。
ただ、ヒトでH1N1が流行しているとはいっても、もちろんカモもH1N1のウイルスは持っているのですが、カモのH1N1はヒトには感染しません。感染に関与するのはHA抗原なのですが、同じH1亜型であっても抗原性が異なるためです。
基本的にヒトのインフルエンザはヒトの間で、鳥のインフルエンザは鳥の間で、馬のインフルエンザは馬の間で感染し、他の動物には感染しないと考えて良いです。
というわけで、現在ヒトの間で流行しているのはH1N1とH3N2の2亜型なのですが、同じ亜型でも抗原性は常に変異しています。
なので去年H1N1に感染して、あるいはワクチンを接種して免疫を獲得したとしても、それは今年のH1N1には有効ではない可能性が高いわけです。
インフルエンザで「去年とウイルスの型が違うから・・」などという場合、多くは同じ亜型の中のさらに細かいタイプのことを指しています。
同一シーズンの中ですら流行株が変化する場合があるため、一冬に複数回インフルエンザに罹ることもあるわけです。
なのでワクチン接種の場合は不活化ワクチンということもあり、免疫の持続期間は短いのですが(だいたい半年くらい)、感染して発症したのなら強力な免疫をまだ持続しているとは思います。
ただ、その免疫は今年のタイプには有効でない可能性は十分あるので、やはりあまり酷い目に遭いたくなければワクチンを接種する方が良いでしょう。ワクチン接種しても感染することも多々ありますが。
なお、インフルエンザは「風邪」ではないので「風邪の罹りやすさ」とは直接関係はありません。
お礼
A香港(H3N2)型は、A/Wisconsin/67/2005(H3N2)様株が推奨されています。(2006-2007年冬季とおなじ。) B型は、B/Malaysia(マレーシア)/2506/2004様株が推奨されています。(2006-2007年冬季とおなじ。) Aソ連(H1N1)型は、A/Solomon islands(ソロモン諸島)/3/2006(H1N1)様株です。(2006-2007年冬季と違います。) ご紹介のサイトは、とてもわかりにくくて苦労しましたが、要約するとこんな風でした。ありがとうございました。