交通事故で健康保険を使えます。
でも、交通事故で健康保険を使うことを嫌う病院が後を絶ちません。
しかし、交通事故による治療を健康保険を理由に拒絶することは、医師法に違反する可能性が少なくありません。
医師法19条1項は、「診療に従事する医師は、診察診療の求めがあった場合には、正当な事由がなければこれを拒んではならない」と規定しています。
健康保険法第1条では、「業務外の事由による疾病・負傷を保険給付の対象とする」と規定しています。
健康保険法1条・57条1項・116条・117条等では、「保険者は、法律上承諾するかしないかを決定する権限はなく、被保険者が保険を使う意思表示をした以上、これを拒否することはできない」と規定しています。
旧厚生省(現厚生労働省)は、1968年(昭和43年)8月10日、保険局保険課長・国民健康保険課長名で、都道府県に対して、次のような通達(通達106号)を出しています。
「健康保険及び国民健康保険の自動車損害賠償責任保険等に対する求償事務の取り扱いについて」と題して、「最近、自動車による保険事故については、保険給付が行われないとの誤解が被保険者等の一部にあるようだが、言うまでもなく、自動車による保険事故も一般の保険事故と何ら変わりがなく、保険給付の対象となるものであるので、この点について誤解のないよう住民、医療機関等に周知を図るとともに、保険者が被保険者に対して十分理解させるように指導されたい」。
社団法人社会保険協会連合会が発刊した「月刊社会保険」2006年2月号の28貢に、「交通事故であっても健康保険で治療することができます」と記載されています。
なお、社団法人全国社会保険協会連合会とは、健康保険の円滑な運営を促進し、被保険者等の福祉を図る厚生大臣の許可を得て設立された公益法人です。
朝日新聞が、2000年(平成12年)8月17日・9月7日付けの二回にわたって、「くらし欄」で交通事故に健康保険は使えるという特集記事を載せました。
交通事故による傷害への給付を除外しているということはなく、交通事故における自賠責保険との優先関係について規定はありません。
健康保険を利用するか否かの選択は、被保険者によって決められ、交通事故を理由に病院が健康保険の利用を避けられません。
交通事故で健康保険で使える大阪地裁の判例(昭和60年6月28日判決)もあります。
交通事故によるケガなどで健康保険診療を受ける際には、まず病院に被保険者証を提示し、健康保険で治療を受けたいということを申し出ることが必要です。
また同時に、所属の保険者(健康保険組合、市区町村役所、共済組合など)に連絡し、保険者(保険組合など)の指示に従って関係書類を提出する必要があります。その際の必要書類としては、以下のようなものが一般的です。
1) 第三者行為による傷病届
2) 事故発生状況報告書
3) 念書
4) 誓約書(加害者またはその保険会社による)
5) 交通事故による負傷届(国民健康保険では第三者の自動車保険関係調書)
6) 交通事故証明書(原本または写し)
お礼
すご~く詳しいご返答ありがとうございました。 どの保険を使うかは、病院ではなく私に決める権利があるんですね。 でも、なんだか手続きが大変そう…。 というのが正直な感想です。 事故で病院へ行くのは、いつも病院へ行くのとは違うんですね。