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撮影監督(CINEMATOGRAPHER) と美術監督
はじめまして。今年の6月に建築の芸術にあこがれて入った大学建築学部を出ました。大学では技術的設計に比べて美術要素を考えることばかりで建築士ではない何の仕事に結びつくか、と考えていたところ、CINEMATOGRAPHER という職種のことを知りました。今は建設業界、制作会社、広告業界、大学院、と視野を広く就職活動を行っております。 私の理解ではCINEMATORAPHERという仕事はカメラを通して絵の色や光を使って監督や脚本の意図を(または一緒になって)描いていく仕事でカメラマンなのだと思っています。 美術監督のしごとは大型小型セット、衣装、メイクアップの仕事を担当をすることで、カメラに写る全ての’ものの雰囲気’のコントロールをすることになる。でも美術監督はカメラを持たないので光や色、構成はカメラを持つ映像監督の仕事でそれは’絵の雰囲気’を作る仕事ですよね? 舞台に使う素材や色によって美術の方が用意するセットが照明の関係で映像監督の思う雰囲気にならなかったりする時もあるかと思います。最後の’絵の雰囲気’を指示、判断するのは総合的監督なのですか? 役割が分かれていても映画に携わっているかたがたはいろいろな職種を経験されているようですが’口出し’は’意見’として通るのですか? わからない事だらけなので変に聞こえるかもしれませんが、真剣に考えているのでご回答をお願いします。
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- isoiso0423
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文字数に制限があるため、事細かに説明できませんが、まず”撮影監督”はCinematographer/Cinematographyと呼ぶよりもDOP Director of Photographyとして使われる方が多いと思われます。ハリウッド映画のタイトルではほとんどがDOPになっています。どこがどう違うのか細かいところまでは知りませんが。 この撮影監督のシステムはハリウッドの映画製作におけるシステムで、邦画の製作現場では基本的には使われていませんし、欧州でもハリウッドのものをそのまま取り入れ現場を進めている作品はまれだと思います。 で、何がどう違うかですが、日本の場合はカメラを実際に取り扱う撮影部と、照明機材を取り扱う照明部という職種がありまして、その部署のトップがカメラマンと照明技師になります。このトップ同士が協力し、監督の意見や脚本のイメージなどから”どうフィルムに定着させるか”ということを創意工夫していきます。 どんなに素晴らしいセットやロケーションでも撮影&照明の腕次第で、陳腐なものにもなりますし、その逆で実際のもの以上にフィルムに焼き付けることも可能です。 映画を見てロケ場所へ行ったら、イメージとかなり違っていたなんてことも大いにあるわけです。 これが撮影監督のシステムだと照明の機材を扱うスタッフはいますが、照明技師と呼ばれるスタッフがおりません。つまり撮影監督のみの意図に沿って照明が成されるわけで、権限は大きく責任も重大だと思います。ただこれも脚本から色調などイメージしたり、監督ともあれこれ相談します。さらにハリウッドの場合はカメラオペレーターがカメラを取り扱うので、撮影監督がカメラを扱うことはありません。極端に言うとカメラのファインダーさえ覗けない、ということになります。 欧州の有名なカメラマンがハリウッドに来ると、このシステムが嫌というか馴染めないので腰を落ち着けて活躍したカメラマンは少ないんじゃないかと思います。ベルイマン作品で知られる世界的なカメラマン:ズヴィンニグビィストも、これが嫌だとインタビューで言っていました。でもちょくちょくハリウッドでも仕事してましたけど。 余談ですが、あるハリウッドのカメラマンが来日した際に日本の撮影現場が見たいというので見学にお連れしたことがあるんですが、照明技師のシステムが良く理解出来なかったようでした。向こうの人からしたら、どうして同じような役割を担う職種があるのか、わからないということだったんでしょうね。 なぜこういった日本独自のシステムが出来たかはよく知りませんが、やたら本数が作られていた邦画全盛期の50年代に、こうした方がより合理的だとの考えで出来たと聞いたことがあります。 美術監督Art Directorも、日本だと”美術”とか”デザイナー”という呼び方ですし、ハリウッドだとProduction Designerの方が多いと思います。 美術と衣装やメイクは基本的には別物で、美術のトップが衣装やメイクにあれこれ指図することはほとんどないと思います。 ただ全体的な映画のトーンなどを考えるとき、例えば幻想的なイメージ場面で、セットはこんな色調でこんな感じだから、衣装の色はうんぬんとかメイクはどうのこうの、といった総体的な打ち合わせはあり得るでしょうし、カメラマンの方が”色”に関することは重要なので、指示を出すことは大いにありますけど。 フィルムに何かを写すときには、すべてのものには色温度というものがあって、反射率18%のグレーを基本に成り立っている、ということを前提に化学式に換算できるものがあるので、衣装の色などはわりと重要なエレメントなんです。(この点は専門分野じゃないので言いまわしがオカシイかもしれませんが) 映画はそれぞれのスタッフが協力して作るもの、というか監督だけでは出来ないので、よほどオールマイティでワンマンな監督じゃない限り各職種の”意見”や”考え”には耳を傾けてくれますし、場合によっては監督よりも権限を持ったカメラマンもいることも事実です。 建築や美術系から撮影に進んだというスタッフはあまりいないんじゃないかと思いますが、専門分野を学んだという”いろいろな眼”を持つことは映画の仕事をする上ではたいへん素晴らしいことなのではないでしょうか? ただ撮影はフィルムを装填したり機材を取り扱うパートから、フォーカスを合わせるパート、露出計やカラーメーターを使ってカメラの絞りなどを決めるパート、そしてカメラマンと段階を踏んで行かないことにはどうにもなりませんので、かなりの年月が必要になります。 下記に参考になりそうなもののリンクを 映画「アメリカの夜」 トリュフォー監督の傑作の一本で、監督自身が監督に扮し、映画製作の舞台裏、つまり役者のトラブルやスタッフらと協力し、映画を作り上げる様子を描いています。DVDにもなっているので大いに参考になると思います。 http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=2693 撮影監督のドキュメンタリー Visions of Light: The Art of Cinematography 有名カメラマンのインタビューなどから撮影監督の仕事にスポットを当てた作品です。 http://www.amazon.com/Visions-Light-Cinematography-N%C3%A9stor-Almendros/dp/630583685X/ref=pd_bbs_sr_1/102-6620105-3234507?ie=UTF8&s=dvd&qid=1183832386&sr=8-1 あと著書ですがタイトルだけ挙げておきますのでアマゾンなどで検索してみてください。 映画美術とは何か―美術監督・西岡善信と巨匠たちとの仕事 村木与四郎の映画美術―「聞き書き」黒沢映画のデザイン 映画美術―擬景・借景・嘘百景 黒沢映画の美術 マスターズオブライト―アメリカン・シネマの撮影監督たち 撮影監督・宮川一夫の世界―光と影の映画史 撮影監督ってなんだ? 映画撮影とは何か―キャメラマン40人の証言
補足
お礼が遅れてしまいまして申し訳ございません。 カメラと照明に関する日米欧の違いが作風の違いにもつながるのでしょうか。たとえば私は2046を撮ったクリストファー ドイル撮影監督のビビットな色使いと構図がかもし出す絵が作品をストーリー以上深いものにしていると思います。撮影監督の仕事内容で絵に与えられるコントロールが変わってくるんですね。 挙げていただいた本とDVDを探したいと思います。本当に詳しいご説明をありがとうございました。