原則的には国際法違反ですが、例外的に正当な武力行使と認められる余地もあります。
隣国に拠点を有する武装勢力が拠点から出撃して破壊活動を行い拠点に帰還したり、拠点から砲撃を行うような場合の対処要領は、
先ず、隣国政府に武装勢力の取締りを要求
隣国政府が取締り要求に応じない場合は、隣国に対する抗議、貿易などの制限、外交的措置(隣国外交使節に対する退去要求など)、制裁措置(経済制裁など)などの段階的な措置
隣国政府が武装勢力を支援している場合は、国連安全保障理事会への提訴
など、様々な努力をする必要があります。国連安保理が隣国に対する武力行使を容認すれば、軍隊による越境侵攻が可能です。これらの努力を行っている間は、国民の生命・財産がある程度犠牲になることもやむを得ません。
しかし、武装勢力の攻撃が大規模であるにもかかわらず隣国政府が武装勢力を野放しにしている場合、武装勢力が生物・化学兵器などの大量破壊兵器を保有しその使用が差迫っている場合、国連安保理が拒否権などで機能不全に陥っている場合などは、最期の手段として、武力を行使して武装勢力を壊滅することは許されています。国家は、いかなる場合にも座して滅びることを強制されることはないからです。
ヒズボラによる破壊活動の規模・程度から考えて、イスラエルが武力侵攻に踏み切ったのは過早であり、国際法違反の非難は免れません。しかし、レバノン政府がヒズボラの破壊活動を有効に制止する意志と能力を持たないことも明らかです。つまり、イスラエルに言わせれば、様々な段階的措置は時間の無駄であり、国民の生命・財産を徒に危険にさらすだけということであり、これが一面の事実であることも否定できません。
ハッキリ言って、ヒズボラのごとき国家以外の武装勢力による破壊活動を有効かつ即時に抑止する仕組みは今の国際社会にはありません。国際社会の仕組みが自国の生存の保証に無力な場合、自力救済、即ち武力行使により自国を保全することが国家の当然の権利であることを考えれば、イスラエルの行為が国際法違反であることを認めた上で、その主張にも一分の理があることは認めざるを得ないでしょう。
お礼
本当にわかりやすく、この上ない回答ありがとうございます。 過剰な攻撃がイスラエルへの印象を悪くしているだけで、イスラエルにも一理あるのですね、なるほど。 納得です。 本当にありがとうございます。