少し理屈っぽいのですが、我慢してください。
払わないと保険の約款に書いてあるのではなくて、自動車損害賠償補償法という法律の解釈で保険が支払われないのです。
自賠法の3条に、「自動車を運行の用に供するものは、自動車の運行によって、他人の生命身体を害したとき」という趣旨の規定があります。
つまり、「運行供用者」が「他人」を怪我させると自賠責保険が支払われるわけです。
もうひとつ、「保有者」という概念もあって、保有者か被害者が保険金請求の権利があるのですが、保有者というのは、一般的な所有者という意味ではなくて、「運行供用者」のなかで、車を運行する正当な権限をもっている人のことをいいます。
つまり、車の運行を支配し、車の運行によって利益を得る人(これが「運行供用者」)のなかで、車を運行する正当な権限のない人、たとえば泥棒運転者が、運行供用者で、保有者ではないということになります。
車の所有者でなくても、所有者から車を借りて運転している人も「保有者」ということになるのです。
次に、「他人」なのですが、これは、家族とか血のつながりのある親戚という意味ではなくて、運行をともにし、保有者の地位にいない人という意味です。例えば、仲良しの同級生2人で旅行をし、2人で旅を楽しみ、交代で運転をしていたという状態ですと、その2人は、他人ではなくて、共同運行供用者であり、共同保有者ということになるのです。
一般家庭で、車の名義が夫婦共有であっても、ご主人だけが免許をもっていて、ご主人の用事でご主人が運転中、奥さんがたまたま助手席に同乗という状態ですと、ご主人は運行供用者で保有者、奥さんは運行供用者でも保有者でもなく、「他人」になるというのが、有名な「妻は他人」という判例です。この場合、妻でも他人判断されましたので、自賠責保険が支払われました。
いかがですか、少しは頭の整理ができましたか。
お礼
丁寧な解説ありがとうございました。勉強になりました!頭の中の整理できました。