要するに、おそらく大音響で圧倒され、躍動感もあるカッコいい曲という定義なんではないかな、と思います。そうすると、基本的にオーケストラものを紹介すればよろしいのかと……。
だったら、今出ている中では、オルフの「カルミナ・ブラーナ」が一番近いと思います。退屈しにくい曲ではあります。ホルストの「惑星」もいい曲ですが。
さて、それ以外で、オーケストラ曲の一部分がカッコよくて退屈しないものをいくつか挙げてみましょう。一応思い付いた順です。
・ショスタコーヴィチ 交響曲第5番「革命」から第4楽章
まあベタですが。途中おとなしくなりますが、そこでかもし出されるなんとも言えない緊張した空気を聴いていると睡魔とは別のものが襲ってきます。最後はガンガン行きます。個人的に、5番を楽しんだら次は7番か8番だと思います。割と軽めな9番を聴くというのも手ですが。個人的には第13番が好きですが、これはいきなり聴いてわかるようなもんでもなさそうです。
・マーラー 交響曲第6番「悲劇的」から第1楽章
「大地の歌」や交響曲第2番「復活」などもいいのですが、とっつきやすさという意味ではこちらのが上かもしれません。重々しい低音の行進から始まり、かっこいい展開がなされます。かなり長い第4楽章も聴けるようになればドラマティックで感動できますが、何度も聴く必要がありそうです。他にも第1番の最終楽章、第5番の第1&2楽章、第7番の第5楽章など。
・ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界」から第4楽章
「家路(遠き山に日は落ちて)」で有名な第2楽章を持つ交響曲です。第4楽章は機関車が発車するような低音のきしりから始まり、ドヴォルザークのメロディアスな旋律が次から次へと出てきます。最後の最後が若干煮え切らないかもしれませんが、その前のクライマックスまでで十分得だと言えるでしょう。この作曲家の他の交響曲では第7番、第8番、ヴェルディのレクイエムのような声楽を聴きたいのであれば「スターバト・マーテル」をお薦めします。
・チャイコフスキー 交響曲第4番から第4楽章
ロシア的な香りの漂う名曲です。繰り返しが多いので、若干睡魔に負けるかもしれませんが、第4楽章は多分吹き飛びます。チャイコフスキーで目を醒ましたいのであれば、繰り返しはしつこいですが、第6番の第3楽章や第5番の第4楽章などを聴きましょう。
・シベリウス 交響曲第2番から第3&4楽章
第3楽章と第4楽章がつながっています。第3楽章もなかなかいい曲ですが、最初はとっつきにくいかもしれません。ならなぜ挙げたかというと、第3楽章と第4楽章のつなぎめの部分の盛り上がりがかっこいいからです。すこし哀愁を帯びたファンファーレが泣けます。シベリウスをより聴きたいと思ったら、「フィンランディア」「カレリア」といった管弦楽曲、交響曲で言えば第5番をお勧めします。
・メシアン トゥーランガリラ交響曲
この曲は現代曲といわれるものなので、ちょっととっつきにくいかもしれませんが、音楽の教科書にも出てくるので、一応。個人的には今のN響アワーのテーマ曲にもなっている5曲目がノリやすいかと思います。
・ビゼー 「アルルの女」第2組曲から「ファランドール」
ビゼーは美しいメロディーを書いた人なので、どの曲を聴いてもあまりはずれはありませんが、カッコイイと言えばこのファランドールではないかと思います。2つのメロディーが交互に出て、最後にはそれが一緒になって盛り上がるという仕組みの曲です。その他、「カルメン」組曲にも親しみやすい曲は多いです。
・リムスキー=コルサコフ シェエラザード 第4曲
千夜一夜物語を題材にした曲です。ソロのヴァイオリンが語りべ役、そして海の逆巻く波の様子が描写されて息もつかせぬスペクタクルが繰り広げられます(言い過ぎの感あり)。リムスキーが気に入った場合は、とりあえず「ロシアの復活祭」という曲あたりを聴くといいかと思います。
・ブルックナー 交響曲第4番 第1楽章
繰り返しが多い、退屈だ、という意見もあるかもしれないので、ちょっと出すのをためらったのですが、形式がわかりやすく記憶に残りやすいということで、とりあえずこの交響曲のこの楽章にしました。金管楽器が吠えるところはかなり頭に響くはずです。第4番を終えたら、第8番の第2楽章あたりを聴くとよいかと。
・ストラヴィンスキー 春の祭典
この曲はリズムにしても拍子にしてもなんにしても常識外れなことばっかりやっているので、その結果オーケストラにとってもかなり難しい曲です。迫力はあるのですが、部分部分で、全体としてはとっつきにくい方かもしれません。同じストラヴィンスキーでは「火の鳥」の終曲や「ペトルーシュカ」、合唱付きという点では「詩編交響曲」をお勧めします。
・ラヴェル ボレロ
あまりに有名すぎます。スネアドラムの刻みの中、2つのメロディーが交互に表れて、最後までだんだん大きくなるというそれだけの曲です。もしかするとそれだけの仕掛けなので退屈と思われる可能性があるので書くのをためらったのですが、一応。ラヴェルがいいと思ったら、ピアノ協奏曲(両手のための)の第3楽章(ゴジラのテーマそっくり)、「ラ・ヴァルス」あたりがよいかと思います。場合によってはムソルグスキーの作曲した「展覧会の絵」の編曲などもどうぞ。
・プロコフィエフ 「キージェ中尉」
そんなに長い曲ではないので、まずは通して聴いてもらいたいです。その後で最初の2曲と最後の1曲を外すとしても、3曲目と4曲目はノレます。他にプロコフィエフを聴きたいのであれば、とっつきやすさからいけば「ピーターと狼」、交響曲では第5番のフィナーレがフィギュアスケートのBGMみたいで楽しいです。
・コダーイ 「ハーリ・ヤーノシュ」
かなり特殊な曲になるんでしょうけれども、民族的な響きにひたれるという面で楽しい曲ではあります。ドヴォルザークなどになれた後で聴いた方がとっつきやすいかもしれません。部分的にはよくわからない退屈なものもあるかもしれませんが。
えーと、今思い付くのはざっとこんなところです。
クラシックの曲は確かに退屈なものが多くて、眠くなることが多いですが、その「眠くなる」ということ自体が実は「リラックスできる」という意味でもあり、眠くなるから悪い、というものではありません。もし、今回私の紹介した曲を聴いてみて、「なんだよ嘘つき、ぜんぜん退屈であくびが出るじゃないかよ」と思った時は、寝る前のリラグゼーションにぜひ使ってください。