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「ファイト・クラブ」の素晴らしさを解説してください
2008年『エンパイア』による「最高の映画キャラクター100人」アンケートで1位になったのは「ファイト・クラブ」のタイラー・ダーデンだそうです。映画内での彼の主張は「人間をスポイルしている現代文明を根底から破壊すべきだ」というもので、言ってることもやったことも麻原彰晃やポルポトとほぼ同じだと思うのですが、どうしてそんなに多数派の人々がそんなものを好きなのか、不思議でなりません。もちろんキャラクターの魅力は言ったこととやったことだけでないのはわかりますが、かと言ってあの思想に共感せずにあのキャラを最高だと思えるものでしょうか。
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このご質問に対しては、下記を前提として回答する必要があります。 ○ 2~99位も知っていること ○ 『ファイトクラブ』という映画を最初から最後まで見ていること ○ この回答は、あくまでも主観であり、質問者さんや他者に価値観を押し付けるものではないこと さて、まずランキングをご覧ください。2位以下は、ダースベーダー、ヒース・レジャーのジョーカー、ハンニバル・レクターなどが上位にランキングしています。 http://eiga.com/news/20081203/3/ つまり、そもそもが、かなり毒気のあるランキングなんですよね。雑誌が『エンパイア』ですから“大人の男性”による、あるいはそれをターゲットとするランキングなのでしょう。つまり、男っぽくて、成熟した理解度をもって鑑賞すべきキャラクターが選ばれているわけです。で、男っぽさで言ったら、まず、タイラーはピカイチでしょう。もちろん紳士かどうかは別問題ですが。 そして、ここからは*********ネタバレ******になります。 * * * この映画は、前半でタイラーの横暴ぶりを見せつけます。それを見つめる“優しい”ジャックは吐き気をもよおすほどで、“麻原”に傾倒していく人々に思い直すよう説得しにかかるほどです。しかしながら、やがてとんでもない事実が発覚し、結果、とんでもない事態が生じて映画が終わり、観客は見ぬ未来に対して、えもいえぬ独特な感情をいだきながら劇場をあとにする羽目になります。 つまり、タイラーは、麻原/ポルポトなわけですが、その裏に描かれた背景丸ごと見ると、実に深いキャラクターなのです。 言っておきますが、これは「最高の映画キャラクター」なのであり「自分が実際になりたい人物」とか「この世に実在したら嬉しい人」とかではありませんよね。それこそがフィクションの醍醐味なのです。つまり、現実世界では絶対にお近づきになりたくない「キャラクター(役柄)」を取り上げて、その深みや魔力を届けてくれる。 こういう人気キャラクターは昔からいます。ドラキュラ伯爵、切り裂きジャック、雪女。いずれも、なんだかセクシーで、なんだか魅力的。だから、登場人物たちは誘惑される。でも現実の私たちは関わり合いたくない。だからフィクションの世界に届けてもらう。そして、ひょっとしたら、教訓のひとつやふたつ、与えてもらえるかもしれない。 そういう意味でタイラーは、見た目もカッコよければ、カリスマ性は抜群だし、ジャックのような私たちが到底できないようなことをやすやすとやってのける。なんだかイヤだけど、なんだかうらやましい。それもそのはず、なんと、彼は私たちだったのだ! その刺激が、なんともモゾモゾします。 あのビル群が崩れ落ち、ちっぽけなデカパン姿で彼女を抱きしめる時、壮大なものを観る興奮と、大変なものを観る不安とが入り混じる感情の中、「ああ、これが現実じゃなくてよかったぁ」と、1位に選んだ誰もが思ったのではないでしょうか。そんなすごい感情を呼び覚ますキャラクターは最高です。
お礼
素晴らしい。 言われてみればたしかに、ジョーカーやレクターの最高さは理解できます。 あと、アントン・シガーとか。 僕はこの映画のAmazonのカスタマー・レビューをほぼすべて熟読したつもりですが、 説得力ある称賛コメントははじめて読みました。ありがとうございました。