切れたシャンプーとタイムマシーンに乗ってきた美少年
シャンプーが切れた。それを知ったのは長男の言葉によってであった。
「シャンプーが昨日から切れてんや」と夜も遅くになって、長男は言うのだ。うちの中で唯一、インフルエンザにかかっていない長男。だからここ数日、風呂に入ったのは長男だけなのだから、もっと早い時間に言ってほしかった。まぁガタガタ言っても始まらない、私は近所の24時間営業のスーパーに向かった。
そのスーパーでシャンプーを買うのは、初めてだ。どうせなら同じのが無難だが、この際だから違うのでもいい。私はそれのコーナーに行き、どんなものがあるのかチェックした。
まず目にとまったのがリンス・イン・シャンプーだった。これで事足りるのであれば、こんなたやすい事はない。しかしうちの子たちにとってはコンディショナーが必須アイテムであり、リンスなど、有っても無くてもどうでもいいことなのだ。
次に目にとまったのはコンディショナー・イン・シャンプーであった。
「これはいい物を発見した。これさえあれば、風呂場に2個置いておく必要がなくなる」と私は思った。だが、今のところコンディショナーは、だいぶ残っているようなので、今回はこれじゃない。次回からだ。
次に目にとまったのは、リンス・イン・コンディショナーだ。その両方の威力が1個に集約されているのかと思うと、うれしいような悲しいような、複雑な気持ちにこそなったが、買おうとは思えない。私が今、求めているのは(シャンプー)だからだ。
ケータイが鳴った。長男からだった。
「シャンプーの使いさしが風呂場にあったから、今日はそれで頭を洗ろとく」らしい。
そうなってくると話は根底から覆される。買い物として蘇えってくるのは、コンディショナー・イン・シャンプーである。しかしその聞いたこともない製造元や商品名を、子供が気に入るかどうか・・・
悩んでいると、突然目の前にタイムマシーンが現れ、サイドガラスごしに10代の美少年が、
「それ買うなよ」と言うのだった。
「お前、誰や」と私が訊くと、
「昔のお前じゃ」と少年は答えた。
「わしゃタイムマシーンに乗ったことないわ」と私が言うと。
「アホ。お前が発明したタイムマシーンやないか。もうわし、7年ぐらい自分の未来を見続けとんのや」と過去の私は答えた。
「また迷ったときは来てくれるか?」と私は尋ねた。
「そんなん訊くまでもないやろ。昔、お前なぁ、どこまで未来の自分のために働いた?よ~思い出したら答えは自ずと分かるやろ。ほな忙しいよって帰るわ。2度と現在時間のお前と会う機会は無いやろな。まぁあんまし長生きだけは、せんといてくれや」そう言い残して、過去の私は消えた。
タイムマシーンに乗った10代の美少年が、わざわざ(それを買うな)と言ってきたからには、買うと何かが起こるに違いない。一体どんなことが起こるのか?ココロ(理由まで知りたい)な私に、誰か教えてください。
https://www.youtube.com/watch?v=_dK2tDK9grQ