旅券=パスポートは簡単に言うと、その国の政府が国民に対して発行する渡航許可証であり、渡航中は渡航先の官憲に対して「この人の旅行を安全に確保してね」と要請する公文書です。同時に国民である唯一の証明書類です。
本来の使い方は、海外旅行に携帯するものです。これがなければ誰も日本を出国できません。出国時に出国スタンプが押されます。入国時も同様です。また渡航した先の国の到着地(空港など)でも入国スタンプや帰国時には出国スタンプが押されます。米国では空港などにいる移民局の入国審査官がスタンプを押します。ただし、外国によっては出入国スタンプをまったく押さない国もあります。
ビザ(VISA)は日本語では査証と言います。旅券との関係は深いですが、別物です。
これを簡単にいうと、渡航したい先の外国政府が発行するその国への入国許可証と言っていいでしょう。もちろん本人に旅券がなければ、その外国(通常は日本にあるその国の大使館や領事館)も査証を発行しません。基本的にはどの外国も他の国に対しては「入国したかったら、事前にビザ(査証)を申請してね」という姿勢なのです。これが大原則。
しかし同盟国、友好国、密接な隣国、あるいは観光立国の立場だと、手続きが面倒で金も時間も掛かるビザをあえて「あなたの国から来るなら、不要ですよ。免除します」という立場をとる国もあります。あくまでもこれは上記の大原則に対しての例外措置なんです。
日本とアメリカ、日本とEU各国同士がこのいい例です。ただし、観光とビジネス目的に限られます。
注意しなければいけないのは、「ビザを免除しますよ」という国に到着しても、場合によっては入国審査官が「この人は我が国にとって好ましくない人物だ」と判断されると、入国そのものが拒否されることも珍しくありません。だから「ビザは不要じゃないか」とその場で抗議しても無意味。どの国でも入国許可の最終判断は入国審査官に任されているんですよ。
20年以上も前にそれまでビザ取得を要求していた米国が日本に対して、「観光とビジネス目的で90日以内の米国滞在ならビザは免除します」と宣言しました。これは今でも続いています。ところが何を勘違いしたのか、これまでビザを申請しても絶対に発給されなかった「その筋の方々」が「おお、これで俺たちもハワイに行けるんだ」と思って、ビザなしでどっと押し寄せたことがあるんです。ところが金のブレスレット、欠けた小指、半そでシャツから除く刺青(タトゥー)、派手な服装で、正体がバレバレ。
「あなたの入国はダメ!」と拒否され、あえなくそのままその日のうちに送還。中には「犯罪歴がありながら、ビザを事前に申請せずに経歴を隠して不法入国しようとした」という理由で逮捕、裁判を受けて罰金を払った上で強制送還、なんて例も数多くありました。ビザが免除されるのはあくまでも善良な日本人だけ、ということを彼らは知らなかったんですねえ。
お礼
回答、有り難うございました。勉強になりました。