結論から言うと、毎日運航されている飛行機で「水抜き」をしないために起こるトラブルはまず
起きません。何故なら「それほど溜まらない」からです。
「水抜き」とは何かから言えば、タンク(旅客機では主翼構造そのものがタンクで、機種によって
は胴体内にもある)の中で温度変化があると空気中の水分はタンク壁面に結露します。
この水滴が灯油に近い(灯油に添加剤を加えたようなもの)ジェット燃料に混ざると、水の方が
比重が重いので下に沈みます。これは自動車のガソリンタンクでも起きている現象で、自動車
の場合は親水性のアルコール類を入れてガソリンと混じりやすくして抜くための「水抜き剤」が
市販されていることもご存知でしょう。水の発生理由はこれです。尚、燃料内には水分は
ほとんどありません。これは水分が規定値以下の燃料でなければ給油しないからです。
燃料会社と航空会社が双方で運航前に検知器を使って確認する規則になっています。
飛行機の場合は、一日の運航を終えた夜、タンクの水がタンク最下方に集まった頃にタンク
の「SUMP DRAIN」と呼ばれるバルブから抜き取りをします。これは普通主翼には上反角が
あるので翼根付近とその外側に数箇所あります。これが「水抜き」です。
水が混じる問題はこの「水」が凍結することと、長時間水が溜まっていると、アルミ合金に腐蝕
が生ずることです。この腐蝕は、「燃料が好き」だという変わったバクテリアがいて、水と燃料の
境界面に繁殖して酸を出すために起こります。他に燃料が水で希釈されるほどの大量ならば
燃料として組成が変ってしまうということではありますが、実際結露で生じる水はそれほど多く
ありません。
この水を溜めないためにタンク内では燃料ポンプの吐出圧を利用して、タンク最下部の燃料
をある程度かき回して少しずつ混ぜ込んでからエンジンに送っています。従ってタンク内に
結露して生じた水は常時排出されていますので、長期に渡って停め置かれた飛行機でもなけ
ればほとんど溜まらないのです。
実際溜まらないからといって、今回も溜まってる筈があるまい、と規定にある項目を実施しない
というのは明らかにサボタージュであり問題です。しかし「可能性として」といいつつ想像のまま
随分過激に起こる問題を想定している方もおられるようですが、現実的にはタンクの水による
問題はそうは起きません。
お礼
さらに詳しい補足までいただき、ありがとうございます。 国土交通省航空局が下した処分についてのお話は(ふだん、一般人にとってはそういう処分がどういう意味を持つのかわかりにくい言葉で書かれていることもあって)、補完のご回答として大変納得させていただきました。 問題についてのご意見も参考になりましたし、今後航空機関連のニュースを見たときに考える機会ができたと思います。 正直、とても参考になりいろいろと考えることになりましたので、どれをベストアンサーに選ばせていただいていたらいいのか悩んだのですが… スステムについてのお話が目を開くような内容であったのでfunflier様をベストアンサーに選ばせていただきました。 どの回答者様も大変ありがとうございました。