- ベストアンサー
ロシア製の戦闘機について
こんにちは。 ロシア製等東側の戦闘機について質問がございます。 火気管制装置やレーダ等の部品はどのようなものを使用しているのか 漠然とした疑問があります。例えば、アメリカの物だったらインテルやらテキサスインスツルメント等の素子が使われていると思われますが、 スホーイやミグはどのようなものが使われているのでしょう? ロシアにもメジャーな半導体メーカーがあるのでしょうか? 以上よろしくお願いします。
- みんなの回答 (2)
- 専門家の回答
質問者が選んだベストアンサー
ソビエト連邦から今日までのロシアにおいての産業といえば、地下資源(原油、天然ガス)と軍需産業くらいのもので、現在の半導体先進国並みの技術的生産的インフラは望むべくもない状況です。現在のロシアには冷戦終結以前から続く産業構造の弊害として、半導体産業が存在しないといっても良いかといえる状況です。 いくつかの電子産業は興ってはいるようですが、まったくその影も形も見えないということは、いかに零細な規模であるかの証明であるといえます。 もちろん冷戦当時は国家統制の軍需産業が全盛でしたので、一応は兵器は全て国産というのが世界の軍隊では理想でしたので、それなりの電子部門の存在もあったようですが、なにせ民生用に転換するという発想がまったくなかった時代でのことです。その技術は西側から見れば遅れに遅れており、プリント基板の時代にハンダづけをやったり、IC回路にしても特定回路を備えたICが作れないばかりに、汎用ICを延々と繋ぎ結局は重厚長大となり、放射する膨大な熱のために信頼性の低下という根本的な欠陥を招いたりと散々だったようです。 にもかかわらず兵器部門ではロシアは原子力部門(原子力発電や艦艇の動力源)やICBM、さらには航空機部門でそれなりにアメリカの向こうを張れるくらいの実績を残しています。 ということは、その各製品に使用しているはずのまともな半導体部品をどうやって調達したのかが疑問ですよね。冷戦構造が崩壊する以前のソビエトは二重経済構造になっており、手に入れたくてもココムなどで阻止されていた航空機に必要な半導体部品などは、その裏の経済組織が入手を引き受けていました。 それが「トルカーチ(ロシア語で『押し屋』)」と呼ばれた闇屋で、非合法の物資、資材調達を行う組織です。 こう書くといかにもみみっちい感じを受けますが、「ミグ」や「スホーイ」などの設計局が設計した航空機を実際に製造していた幾つかの航空機製造工場では、それぞれが専属のトルカーチを雇用していて、半導体も含めた航空機製造に必要でなおかつロシア(ソビエト)国内では入手が不可能な様々な部品や資材を海外で調達していました。そしてそのほとんどが日本とアメリカ製で、インドルートを通じて入手していたというのが現在では定説になっています。 といっても冷戦時代の半導体メーカーといえば、この二カ国しかなかったといってもいいですよね。 このような手法は調達していたそのほとんどが軍需用だということでしたから可能だったことであって、液晶テレビやDVDレコーダーのようにその必要量が軍需用と違って一桁二桁も違ってくる民生用だったらまず不可能だったかもしれません。 とはいえ半導体製品に限っていえば、入手できる製品はどちらかといえばいわゆる型落ち的な、とてもその時々の最先端の性能を持ったものではないことが多かったようです。もっともそうでなければこのような非合法なルートでの入手は困難だったと思われます。一昔前には某国がソニーが発売したばかりのプレステに使われているLSIが欲しくて秋葉原で買い占めた、なんて話もありましたね。 このような事情もあって、航空機自体の機体設計やエンジン性能などは当時の西側にも引けを取らないソビエトの軍用機が多かったのに引き換え、FCS関連の電子機器や誘導ミサイルの性能は西側と比べれば一歩も二歩も遅れをとっていたことも事実です。これは冷戦構造が集結した現在でもあまり変わりはなく、常に欧米のFCSには性能的に見劣りしています。 現在IT部門でも飛ぶ鳥を落とすかのような勢いの中国でさえ航空機関連の電子機器部門はアキレス腱のようで、戦闘機の機体は何とか現代に適応しそうな自主開発出来ても(ほとんどがまったくのコピーですが)、FCS関係に限ってはほとんど他力本願的なところがあって、今でもロシアを含めた諸外国に頼っている事からも、この方面での技術の蓄積がいかに重要かということが分かります。 でも皮肉なことにそのどうしようもないハード面での遅れを少しでも取り戻そうと、懸命になってプログラムの面での研究に力を入れたおかげで、現在ではソフト面で活躍できる優秀な人材では世界有数の国となり、今ではインテルやIBMなどがロシア国内に研究センターを置き、数千人単位での雇用を行い、今後は世界でも有数のIT大国になる可能性を秘めていることは面白いですね。 そういうこともあって前大統領のプーチンはロシアの国家戦略として全般的なIT技術の発展を目論んだ政策をぶち上げましたが、その実効性は乏しく、現在のロシアでは現状のような戦国時代の様相を呈している世界の半導体開発競争に入り込む気持ちはさらさらなく、ひたすらソフトやプログラムといった周辺技術での活路を見出そうとしているというのが個人的な感想です。 冷戦終結後の94年にココムが解散したこともあって、これまでに述べたような部品調達の苦労もなくなりましたが、そのかわり今度は市場経済の荒波が老舗の「ミグ」や「スホーイ」を襲い、今では一企業となった軍需産業メーカーを苦しめていますが、それはまた別の話ということで…。 最後に航空機マニアとしてMIG―25の名誉のために一言。 例の函館事件のさい、日米両国に丸裸にされたMIG-25に関して、「最先端の航空機に真空管が使用されていた」「機体の表面処理が粗雑ででこぼこしていた」「オールチタンだと言われていたが、鉄板を使用していた箇所もあった」などなど、MIG-25の本質を見間違えた評価が当時はありました。 しかし真実はちょっと違っています。真空管を使用していたことは事実ですが、これは単に真空管でも済むような箇所だから真空管を使っただけだということ。機体の仕上げ云々にしても、このままでも設計計画性能が出たため、そこまで気を使う必要がなかっただけだということ。さらには鉄板云々にしても、飛行中の機体温度が鉄板でも十分耐えられる箇所だからそうしただけだということなのです。 後にいくつか出た函館事件に関する書籍に載った関係者たちの評価で、最先端の技術ばかりかと思っていたが、それほどではなかったことに多少は驚いたが、それよりもソビエトの航空機設計の合理的な考え方に驚かされたという言葉が出たことも興味深いことです。
その他の回答 (1)
- sosdada
- ベストアンサー率33% (265/792)
まず、「メジャーな」半導体メーカーは、 アメリカ、日本、台湾、韓国、中国の5カ国しかありません。 フランス製などのヨーロッパ製品は信頼度が低いので、誰も使わない。
お礼
ありがとうございます。 中国製のものが使われていると見ていいでしょうか??? 数十年前、亡命してきたミグを分解すると真空管が使われていた との話を聞いたことがあります。(当時も半導体全盛であった。) なぜスホーイやミグのような高性能のものができるのかやはり疑問です。
お礼
KITAIKKI様 大変丁寧なご回答本当にありがとうございます。 飛行機のみならず、過去から現代までのロシアの状況が 分かったようで大変参考になりました。長年の漠然とした疑問が 解けてすっきりしました。 なるほど、第三国(インド)経由での不正入手が定説で、最新の ものは、手に入りにくいということですね。それでも、型落ち品や 汎用ICを組み合わせて高性能の飛行機(電子機器)を作るということはある意味すごい技術力ですね。 また機会があればよろしくお願いいたします。