ニューヨークから失礼します。若い女性からの御質問のようですが、
私自身は40代の男性です。当地に20年程住んでおり、アメリカ人、
日本人を問わず服飾コンサルタントとして、また評論家としても活動
しております。
若い女性の方には、本格的な紳士服の決まりごとについてなかなか
わかり辛いものがあるとは思いますが、歴史や文化等細かいことは
さておき、ひとつ私からのお薦めについて書いておきます。
もしもお父様が”本物”を御理解出来る方であれば、ブランド
とは実に下らないものなのではないでしょうか。一人前の紳士に
とって最も大切なのは自分というブランドであるからです。自分以外
の名前が入ったものをこれ見よがしに身に着けることは、欧米において
は知的下層階級の行いとされているのです。
日本における”ブランド”とは、その多くがヨーロッパのブランド
ですが、彼らのほとんどは元来王族や貴族などの御用を務め、小さい
ながらも高い技術を誇っていたものなのですが、最近においては
バックに資本家がついて、本来の商品ではなく、貴族財でもない
お手軽に作れる大したことのない商品にブランド名をつけて世の中の
大多数の庶民階級からあぶく銭を儲けようというのが彼らのスタンス
であり、必要以上に人間の平等意識が発達した日本という市場は、
正に彼らにとって最高においしい市場なのです。
最近NHKにおいてドラマスペシャルとして”白洲次郎”について
2回の放送がありましたが、日本にも戦前にはあのような上流の社会
が存在したのです。西洋は今でも基本的に身分社会であることは
変わっていません。ヨーロッパとアメリカの違いは、アメリカは
ヨーロッパと違って、産まれた時の差を己の知恵と行動で後天的に
挽回出来るということにあるのです。
勿論、お金があれば上流か、というと決してそのようなことはなく、
知性、品性に秀でていることは勿論ですが、社会のリーダーとして
相応しい人格でなければ認められないのです。よく言われるセレブと
いうのは、芸能等で一代で有名になった人達のことで、つまり理由は
どうあれ、神様の祝福を受けている、といった多少ひいきされている
人達、といったニュアンスを持った言葉なのです。
前置きが長くなりましたが、日本のハンカチ業界における
リーディングカンパニーで”ブルーミング中西”という会社が
あります。このまま検索されればすぐに出てくると思いますが、
同社の製品でアイリッシュリネン(アイルランド製の麻)のハンカチ
のシリーズがあり、紳士が持つべきハンカチとしてお薦めです。
麻は吸湿性が綿よりも優れており、水を吸えば吸うほど繊維も
強くなるのです。また洗えば洗うほど白くなっていきます。色は
勿論白で大振りのサイズのものに、お父様のモノグラミング
(Monogramming)、つまりイニシャルを図形化したものをハンカチの
角に刺繍してプレゼントされたら如何でしょうか。
刺繍の色は、白でいいとは思いますが、淡いブルーなどでもいいと
思います。ミドルネームのイニシャルを加えて3文字のモノグラムを
お薦めします。
”日本人にはミドルネームがないって?”
御心配には及びません。当地においても、かつてのケネディ大統領
をJFKと略称するのを御存知と思いますが、FはFitsgerald,
つまり母方の旧姓なのです。ブッシュ大統領もG.W.ブッシュと
言われていますが、このWもWalker、やはり母方の旧姓なのです。
もしもこのアイディアがあなたのお母様に御不評であるなら、
お母様のイニシャルもしくはあなたのイニシャルをミドルネームと
して入れてしまうというのは如何でしょうか。これらは実際に私の
御客様にもお薦めをしており、好評もいただいているものです。
実際欧米においては、ハンカチ等はギフトにする場合、ダースで
するのが普通ですが、そこまでしなくとも、例えば5枚、または6枚
をセットにして、イニシャルの色を月火水などの曜日を参考に一枚
ごとに色を変えてみるといのも面白いでしょう。毎日洗いたての
ハンカチを持って出る習慣がつくかも知れません。
またオプションとして、麻でなければ同社においてシーアイランド
コットン(日本では海島綿と呼ばれる)のハンカチも取り扱っており、
シーアイランドコットンは繊維がとても長い、世界最高のコットンで
シルクのような肌ざわりです。
以上、何かご参考となれば幸いです。