大学院の修士課程を終了後、課程博士コースに進学し、博士課程の授業単位だけ全部取得し、研究が未完成で、博士論文提出の条件である学会等に論文発表件数などが不足で、博士論文が完成できず、その状態で博士課程を修了して大学院の学籍から離れて社会に出てしまうことを「博士課程単位取得退学」といいます。
通常、博士課程は最短3年で博士論文をまとめ、学会等に論文発表し、所定の授業単位を取得して大学院を修了できますが、博士論文が3年で提出できない場合は、必要な講義の単位数だけ全部取得して、修了して就職するか(博士課程単位取得退学)、大学院留年して研究を続けます。最大最短の3年の2倍の6年まで博士課程に籍を置くことができ、その間に博士論文の提出要件を満たし博士論文の審査に合格すれば、課程博士として大学院を修了できることになります。6年以内に論文提出できなければ、同じテーマの研究で博士論文の提出資格を失い、同時に学籍を除籍されます。その場合は、博士課程単位取得退学の道を選ぶことになります。
3年で博士論文を提出できず、博士課程単位取得退学の道を選んだ場合、通常の6年間の在学期限と同じく、退学後3年以内に博士論文を単位取得退学した大学院の指導教員に提出でき、審査に通れば、遡って、課程博士として大学院を修了したものとして扱われます。3年以内に博士論文を提出して審査に合格しなければ、その研究テーマでは博士論文が提出できなくなります(課程博士の論文とは認められなくなります)。
難関大学でなくても、博士論文は、その研究内容に、独創性が要求され、その研究がやりかけでなく、完結して、その研究内容が専門分野の学会論文誌(3人以上の専門分野の査読審査をする人の審査をクリアして論文として採録される)に何篇以上掲載される要件と、その大学院の3人以上の教授や准教授に審査を受けて、研究の独創性と完結性のチェックを受けます。そして最終審査および発表に合格して初めて、博士号が大学名で授与されます。大学も、大学名のついた博士号になりますので、○○博士(△□大学)と行った博士号になりますので、博士号授与大学の威信にかかわりますので、いい加減な審査で博士号を授与するわけには行かないということです。分野によって違いますが、とある旧制帝大の工学博士の場合3年で工学博士として修了できるのは50%で、残りの50%が半年以上、論文提出が延びるか、博士課程単位取得退学ということになります。
有名大学の博士コースでは、研究能力のない人は、指導教員も大学院にあげなかったり、論文がまとまらず、就職もうまくいかない可能性のある人は、大学院の博士課程に進学することを認めなかったりします。
博士号を取れないまま、大学院で留年したり、研究室にい続けて、(オーバードクター、ポスドク)で、就職や研究面や年齢や学費問題があって、大学も能力のない大学院生に対しては修士課程で修了を薦めるようです。修士の方がずっと就職がしやすいし、修士論文も通りやすいこともあります。指導教員は課程博士の就職先の世話が大変なようで、ずば抜けて優秀な課程修了博士なら問題ないですが、すぐ役立つような研究力があまりなさそうな学生は博士コースの進学を勧めない(取らない)ことが現実ですね。先々の進路も保証できない状態では、博士コースに合格させて研究の面倒や就職の世話をしてやれないということでしょうね。大企業の研究所や国立の研究機関などに太いパイプをもつ有力教授だと、課程修了後に就職の斡旋も容易ですので、博士課程に進学する時の配属研究室には、大学院生が集まります。博士課程は、学生の研究能力と課程終了後の就職の世話で、大学院教員が博士課程に学生を入学させるか、どうかを判定しますね。こういったことで、大学→課程修士→課程博士 と進むたびに入学定員が減少し、能力があり就職の世話のできる定員内の学生だけを合格させることになります。ただ最近は、就職の世話をしない、世話のできない、人数を合格させる大学院や教員が増えつつあるようです。
学生にとっては、課程博士は取得したが、就職先が決まらない、という学生が増えていますね。学生は、自分の研究意欲や研究能力を考えて、大学院に進み、修士で終えるか、博士まで進むか、を自己責任で、判断する時代に入ったということでしょうね。企業も、生き残りをかけて、(有名大学の修了者に対しても)優秀な大学院生や学生を選別する時代に入って来ています。
お礼
シンガーの例えはわかりやすかったです。私は情報工学専攻していましたが、情報工学でもよく単位取得退学している人をよく目にします。ご回答ありがとうございます。