ニューヨークから失礼します。当地で服飾のコンサルティング及び服飾評論をいたしており、日本に正しい服飾知識を広めるための一環としてこちらに回答をいたしております。
これだけ世界が身近になったにも拘わらず、日本人の多くは国際舞台において世界の要人と服におけるコミュニケーションが上手に出来ていません。
標題の”スーツにピーコート”について実はは何度か回答したことがあり、今回はそのひとつを紹介いたしておきます。
http://unchiku.e-begin.ne.jp/qa2503504.html
Pea Coatを単純に”Pコート”とするのは、ある意味とても日本人らしく、ほほえましくさえありますが、欧米において一番人間を疑われるのは、dress itemドレスアイテムとそうでないアイテムの組み合わせ、即ちsportsスポーツ、casualカジュアル、militaryミリタリーなど、カテゴリーの垣根を越えて組み合わせることは、プライベートな時にはともかく、ビジネスというオフィシャルな場においては、相応しいものではなく、人間性を疑われるものであるのです。
欧米のメンズショップのショーウインドーでスーツにピーコートをコーディネートすることは、ありえないことです。同様の質問にも記しましたが、ピーコートは、近代の軍隊、特に米国海軍のペーペー、つまり下っ端が冬の雪雨服荒れる甲板での作業のために、毛布のような丈夫なウール地で、丈をオシリが隠れる程度の長さ(オシリが冷えると疲れが倍増すると言われています。)として動きを妨げず、且、風向きに応じて、左右どちらをも前にボタンが出来るように、つまり本式のダブルブレステッドに仕立てられているのが特徴です。例えばアメリカの上流階級の息子がスーツにピーコートを羽織ったりしたら、(5,6歳の頃からスーツやタキシードを着慣れているので、まずそんなことはありませんが)まず間違いなく注意をさせられるでしょうし、殴られるかもしれません。 ドレッシーなウールのスーツであれば、基本的にドレッシーなウールのコート(綿製のトラディショナルなレインコートでも可)を合わせることが、まともな教育を受けた者としては当然のことです。ネクタイをして、スーツを着用するということは、自分をベストに見せるということも大切なことですが、それよりも、老若男女を問わず、自身のその方たちに対するリスペクトの念を服装にて表現するということがその第一義であるのです。その中で、あえてそういう格好をするということは、逆に自分がまともではないことを世間にアピールすることになります。 クリント イーストウッドの出演した”アルカトラスからの脱出”という映画があります。 その中で囚人たちは、ピーコートを着て作業をしていました。 アルカトラス島とは、アル カポネも収監された、サンフランシスコの沖合いにある監獄島で、潮の流れがメチャクチャに速いことから、脱獄不可能と言われていた島でした。 アメリカでは時折今でも、刑務所の囚人たちが、冬の外での作業時に軍からの払い下げ支給品としてピーコートを与えられているのです。 逆にダッフルコートは軍のお偉方用のコートで、そのため今でも上流階級のお年寄りに愛用者が多いのです。 日本という島国に住んでいると、インターネットで情報はいくらでも入ってきますが、こうした情報は入ってこないものです。そうした日本ですから、スーツの上に ピーコートを着ようと、また緑色のモッズコート(おそらく日本で”青島コート”とか呼ばれているM51のことだと思いますが)を着ようと もちろん個人の自由なのですが、世界で出るべきところに出たら通用しないものなのだ、ということはよく心得ておいてください。 ちなみにM51については、後継のM60あたりが出た頃から、お役御免となって大量に放出され、アメリカでは、一時ホームレスや失業たちの制服のようになった時期があります。
誤解されないように言っておきますが、洋服屋としてピーコートもM51もそれぞれいくつも所有しており、好きなアイテムでもありますが、外国で、しかもニューヨークで生活している以上、着るシチュエーションは極めて限定されるし、しかも自分の立場として考えて着ないといけない、ということなのです。 最近ピーコートを良く着ているのは、中国などのアジアや中南米からの移民の人たちです。
お礼
回答ありがとうございました!以前に社会人の先輩に尋ねた所、同様に「いかにも学生くさい」と言われたので質問しました。Pコート着るのは就職活動のうちだけにしようと思います。ちなみにモッズコートはフード取り外し出来るのですが、確かにカジュアルすぎるとは感じてたので控えようと思います。一応スーツカンパニーで購入したごく普通のロングコートがあるのですが、着心地が良くないのでどうしようか迷っていた所でした。ありがとうございました。