ニューヨークから失礼します。当地で企業のエグゼクティブや弁護士など、プロフェッショナルな着こなしが要求される方がたにカスタムメイドの洋服とともに、服飾のコンサルティングをいたしておる者です。
早速お答えしますが、基本的にはスーツによるドレスアップの際は、Vゾーンのメタルのファーニシング(日本でいうアクセサリーのこと)は、ひとつに絞っておくのがセオリーだということです。つまり、カラーの部分に、カラーバーなどのメタルを使った場合、Vゾーンのその他の部分には使わないでおくのがベター、ということです。
理由は、基本的にカラーバー、またはピンについては、もともと芯地がないか、もしくはごく薄い芯地のネクタイは、結び上げた際の”R"、つまり脹らみというか、横から見た際に、ネクタイがベチャッとならず、かつしなやかな、立体的な曲線、アーチを描くように結び上げるのが難しいため、半ば強制的にVゾーンに立体的なアクセントを加えるために現れてきたものなのです。 そのため、ナチュラルなネクタイの結びかげん、曲線といった趣を好む方がたには あまり好まれてはきませんでした。
また昔のスーツは、今と違ってほとんどがヴェスト付きのスリーピースでしたので、ヴェスト自身がタイをホールドする役目をも担っていましたので、タイバー、タイクリップなどはあまり必要性もなかったのです。
逆に、スプレッド系のシャツが多く、ほとんどが2ピーススーツの
現在、タイバーでネクタイにアーチを強調する人たち最近また現れてきております。ネクタイにアーチをつけて結び上げることは、着用者の表情をより生き生きと、活力があるように見せてくれるのでとても大切なことなのです。
流行の回転がやたらと速く、かつ知的な中身のうすい日本の洋服業界で、これだけ長いこと(約10年)スプレッド系のシャツの人気が続いてきたこと自体、私にはちょっとした驚きですが、日本では、そろそろ襟が長く、鋭角的な、ナローなシャツに流れをふってくるタイミングなのかもしれません。いずれにしても、そのような流れになってくると、Vゾーンの深い、シャープな感じの、フロントボタンの位置が下がってくる上着に人気が移行していく可能性も、例えば最近のビームスのインターナショナルギャラリーのスーツなどを見ていると、ありえるかな、という気持ちにさせられます。ま、ニューヨークでは特に関係のないことなのですが。
お礼
御丁寧な回答をありがとうございます。どうしてもあるものを片っ端から身に着けたいという気持ちが先走っていました。貴殿のおっしゃるシャツの流行は確かに日本にて感じられる流れであります。とても興味深い解説を交えての御回答、ありがとうございました。