ニューヨークから失礼をします。質問の内容に少しだけぶっとんで おせっかいながら一筆書かせていただきます。ご無礼多々あるかと思いますが、ご容赦ください。
Q: ギャップの服を着るのって問題ないですか...
A: 着るシチュエーションを間違えなければ、まったく問題はないと思 います。
ギャップは元々リーバイスなど、ジーンズカジュアルの小売店として
サンフランシスコで創業されましたが、(リーバイスもサンフラン シスコが本拠地です。)売り上げの規模が大きくなるにつれて
自社の名前を商品の全てにつけることにより、売る側の責任を
明確にし、かつ仕入れをダイレクト化、つまり中間業者を極力省く か、または工場ごと自社の傘下に治めてしまうことなどによって、
価格をより安価にという、製造から販売までを自社で一環して行うコ ンセプトで歴史的な発展を遂げてきた企業なのです。頭の悪い日本の 繊維マスコミが、S.P.A.と名付けた業態の先駆者でもあるのです。
Speciality Store, Private Label Apparelの略で、無印良品もユニ クロも今まで様々な形でギャップの影響を受け、試行錯誤で後追いを しながら、日本という社会に階級意識のない特殊なマーケットで発展 を遂げてきたわけです。ユニクロ、無印両社ともに、ギャップと大 きく異なる部分は、より単品志向、つまりある単品、例えばチノパ ンツなどの生産をより徹底的に追求し、日本人受けする、つまり品質 に個体差(ムラ)の少ない、工業製品としてみれば優秀、但し商品と しては味が薄く、概してつまらないものを、消費者にとっては、従来 品に比べ、より有利な価格設定(つまり安い)での提供が可能となっ てきたのです。但し、ユニクロも無印も日本の会社らしく、ソフト
ウエアは強くなく、かねてから柳井会長が言われているように、
ユニクロの服は それぞれ皆さんの持っている服のパーツのひとつ
として取り入れて欲しい、というコメントにもあるように、
ファッションとしてあらかじめコーディネートされたものを訴求販売 するのではなく、あくまで単品として、他社の商品と自由に組み合わ せて着用してくれと言っているわけで、逆に言えば、ユニクロ流の
コーディネートを訴求出来るような商品企画部隊、マーチャンダイジ ング部門を持っていなかった、もしくは育っていなかったということ になります。いずれにしても、ものまねの日本人には、こうした
オリジナリティが要求される仕事は、最も苦手な部分ではあります。
最近、ニューヨークのソーホーにユニクロの一大旗艦店がオープン しました。この街には文字通り世界の情報が集まってきますの で、 今後ユニクロの商品企画が、ニューヨークからの情報をどのように
利用していくのか個人的には興味深いところです。蛇足ながら、今 お伝えしたお話に関連して、ユニクロは、セオリーという会社をすで に傘下に治めています。
さて、ちなみに、社名、店名のGAPは、generation gapから来ては いますが、人種や文化が混ざり合ったアメリカにおいて、自身が心地 よく、 かつ日常、常識的なケースにおいて相手に対するリスペクト をも損なわないようにという、言わば現代のアメリカの社会通念に対 する最大公約数的な服としてマーチャンダイジングされてきたものが ギャップの服であります。そのため、どちらかと言えば、流行の先端
を行く様な服ではなく、人種、階級の垣根を越えて着れる、歴史の中 で生き残ってきたベーシックなタイプの服が多いことは言えるでしょ う。(この点、西洋のべーシックをあまり理解していない日本人が、 ギャップをどう見ているのか は申し訳ありませんが、私としては、 はっきりお答えできないところです。)日本人のように歴史的教養を 身につけることに社会があまり価値を見出さない社会においては(大 学の入試に世界史がないというのがそのことを証明しています。)大 衆の消費者からは飽きられやすいということがあるのかもしれませ ん。アメリカでも、西洋の伝統的文化に なじみのない移民の2世や 3世などには、そうした傾向があると聞いたことがあります。
欧米のチェーンストアの特徴として、ある商品に関連するアイテム は全てカラーコーディネートされているのが一般的で、ギャップもそ の例にもれません。ですから本来は、店側としては、全身ギャップで コーディネートされたものを買っていただくことを理想としています(先に述べたようにユニクロ、無印は単品志向です。)し、お客の方も お店のディスプレイを見ながら、成るべくコーディネートされたもの をまとめて購入するというのがこの店のショッピングの典型的なスタ イルとしているのです。日本人は、自分でさほどコーディネートが出 きないにも拘わらず、やたら単品買いをして一種独特なコーディネー トをする傾向があるのですが、”学ぶ”は 元々”マネぶ”からはじ まっているのです。日本のことわざでも、聞くは一時の恥、聞かざる るは、一生の恥というではありませんか。 一度ギャップでお店の スタッフのアドバイスを聞きながら、コーディネートされたものをま とめて買うのもいいのではないでしょうか。
何かわからないことがあれば、自分で悩まず、どんどん納得がいく までお店のスタッフに尋ねたらいいのです。但し、ものを良く知って いそうだったり、もしくは人好きのする優しそうな販売員を選んで尋 ねてみることです。自分に自身のある販売員は、一挙手一動をじっと 見ていれば大概判断はつくものです。 ギャップは、自社の商品を通 じて、消費者の生活に満足と潤いを与え、ハッピーになってもらうこ とを企業としてのミッションのひとつと考えている会社です。その 他に、売り上げから、乳がんの女性の治療をサポートする組織や、
アフリカでエイズに苦しんでいる人たちを援助するボランティア組織 に、あるプロモーションの商品の売り上げの一部が、自動的に献金出 来るようなシステムも開発、実際軌道に乗せてもいます。
アメリカの消費者は、こうした企業としての社会貢献に対する姿勢 までをも消費選択の手段としているのですが、日本でははたしてどう でしょうか。(ちなみに私はギャップとは何の関係もありません。
念のため。私はNY在住で、紳士服の販売と評論家を生業としている者
です。)
Q: 他の人から見て恥ずかしくない格好をしたいと思っているのですが
...
A: 他人の言うことなど気にせず、自分の好きなものを 躊躇せず
身につけ、人生を楽しんでいきましょう。
実は、ほとんどの日本人は、まだ洋服の本質を理解していません。 従って そんなレベルの日本人に何を言われようが、気にする必要は まったくない、というのが個人的な意見ですが、なかなかそうもいか ないでしょう。 将来あなたが、世界のどこに住んで働き、自分をど ういう人間に見せていきたいのか、それが決まらない限り、自分の装 いに対する方向性は、なかなか見えては来ないものです。
それまでは、日本では、ベーシックとか、トラディショナルまたは クラシックと呼ばれる類の服を信頼の出来る老舗で、色々お店の人に 質問しながら求めていかれるといいでしょう。だいたいファッション という言葉を日本人は間違って使っています。 ”ファッション”は 直近では18世紀末から19世紀のフランスのルイ王朝で使われてい た言葉で、当時は”上流階級の習慣、慣習”などといった意味でした が、現在は、英語でもフランス語でも、あくまで”流行”という意味 であって、特別に服のことを意味しているわけではないのです。車に も家のデザインにも、料理にも全て流行・ファッションはあるではな いですか。
実は、”ファッション”と全体主義を意味する”ファシズム”とは 同じ語源なのです。 それは古代ローマで使われていた(つまり
ラテン語)fascesという言葉に由来します。fascesは、儀式に使う棒 の束を意味し、この束は、主に”団結”の意味で使われました。
”棒の束”つまり心理的に拘束されるというのが、"fashion"にも
あるように思います。現代の”ファッション”とは、心理学的には、 非常に矛盾しており、つまり自分が集団の中でそれなりに目立ちた い、という意識があるのにも拘わらず、自分と同じ格好をした人間が
ある一定の割合(超えても少なくてもいけない)だけいないと不安感 を覚えるというものだからです。
本当は、こんなものは女子供の領域であって、男には生涯を賭けて 己のスタイルを創り上げる、という大きな仕事があるのです。女性に は、命を再生する力があります、が、男は一代限り。 日本では正直
服飾の基本は大変勉強しずらい環境にあります。 それは一部の人た ちを除いて、ほとんど誰も何が歴史的に正しいのかわかっていないか らなのですが。 もしあなたが、これから社会の上層を目指していく 心意気があるのならば、欧米のそれなりのクラスにいる人たちの着こ なしを普段からチェックするなどして、取捨選択を繰り返していくこ とです。
お礼
GAPのスタッフ経験のある方からも意見を頂けて、感謝します。 メンズのオススメってあまり無いのですか… 「GAP」等のロゴが入った服には初めから興味が無かったので考えてもいません。 GAP以外にもサイズの合うものが出てくると良いのですが、、、 ありがとうございました。