こんにちわ
私はジャズとアメリカ音楽の歴史を調べている者です。
>ロックンロールはわかるけど、
黒人チャックベリーや白人ビルヘイリーやエルビスプレスリー、などのヒットした1950年代の名作ロックンロール
を聴くと、一曲が12小節になっているのがわかるでしょう?
(Sweet Lil 16やら、Rock Around The Clock、Hound Dogなどで確かめてみて下さい)
これが、「ブルース形式のロック」です。
というわけで、その後の時代を支配したロックの初期のスタイルであるロカビリー、ロックンロールはブルースが原点だということがもろにわかりますね。
ブルースは12小節なのですが、その構成は、
4小節単位X3回の=12小節
になっています。
最初の4小節の歌詞はたいてい、「おいらは辛い、なんでこんなに毎日つらいのか?」
中間の4小節の歌詞は、「そうだ、辛い、ほんとに辛い、もうおしまいさ」
最後の4小節の歌詞は、「でも、明日にはきっとまたお日さまが昇るのさ」
・・・といった絶望のなげきと、かすかな希望の光りに明日を生きよう、という勇気(またはあきらめ)の気持ちが歌われるのが奴隷時代から続く黒人ブルースの伝統でした。
(その後歌詞の構成は12小節であれば何でもアリになってしまいましたが)
時代が逆になりますが、この形式は、100年前の1900年代にジャズに取り込まれました。
(ロックより半世紀前のことでした)
>ソウル
ソウルは1960年代ごろに湧いて来た黒人音楽ですが、その母体はR&Bでした。
R&Bはリズム&ブルースの名前のごとき、リズムを強調したブルースです。
さて、リズムを強調したブルースとは何か?というと、実はその実体はブルースだけを専門にプレイするジャズバンドのことでした。
これは1940年代ごろの話です。
※これが大事なんですが、このR&Bの流れが、ちょうど10年後にロカビリー、ロックンロールに結びつくのです!
しかし、(特に最近21世紀のポップスシーンで言う所の「R&B」「ソウル」には正統派12小節ブルースの痕跡はほとんど見つけることが出来なくなってしまい、単なるブラックポップスとしか言い様がなくなってきました)
>ヒップホップやラップ
これはとてもおもしろい現象が音楽界に起こりました。
アメリカ黒人の世界から生まれた最初の音楽はブルースで、それを取り込んで発展したジャズからR&Bを通過してロックができたわけですが、ロック系の音楽の発展に行き詰まりを感じた黒人たちが新しい音楽的打開、として始めた運動が、なんと歌というよりはお念仏のように言葉を列ねるだけのラップやDJスクラッチのヒップホップになった訳です。
同じようにジャズの音楽的な行き詰まりを感じていたジャズ界でも、このラップやヒップホップを取り入れるようになってしまいました。(ジャズから見ると、「老いては子に従え」の状況になった訳ですね^^)
こう考えて行きますと、今この中では一番新しいヒップホップには12小節正統ブルースの影も形もないのですが、黒人音楽の精神的な意味でのルーツとしての「おいらは辛い、何で辛いのか、でも明日は・・・」の伝統は続いていて、なおかつロック系もジャズ系も音楽的にやることをやりつくしてしまい他に何もなくなって行き着いた場所、ということが言えるかも知れません。
(でもラップの場合、ブルースの時代にあった「かなえられる筈もない明日の希望」はもうとっくにあきらめている内容の歌のほうが圧倒的みたいですね。その辺が社会が進んで黒人の気持ちが現実主義になって夢を見てもしょうがない、という暴力的な現実を直視してくれ、というドキュメンタリー路線、黒人社会の政治的アピールになってきた進歩といえるんじゃないでしょうか)
さて、あと10年、20年たつと、これがまたどんな音楽に変化するか、楽しみですね!
お礼
ありがとうございます。 なるほど、聞き比べればまったくちがっても、 ルーツという意味ではおなじなのですね。 大変参考になりました。