1968年・秋 韓国:梨川村
車から4人が降り、畑の中の道を通って行きます。
畑には歌いながら収穫をしている人たちが結構います。
母の姿を見つけて「オモニ(お母さん)、オモニ!」と
何度も呼びながら走り寄る昌鉉、抱きしめる母。
昌鉉:「母さん、ただいま帰りました」
母:「昌鉉・・・」顔を見て、もう一度抱きしめる。
後ろから歩いてきた南伊子(なみこ)たちに気付き、
母:「君の家族を紹介してくれないの」と言います。
南伊子:「はじめまして、お義母さん、南伊子です。」(ハングルで)
母:「なみこ?」頭を下げるようにして両手で南伊子の手を握り、
「ありがとう、なみこ」
昌鉉:「ありがとうと言ってる」
「それから、母さんの孫です」
(上の子を抱きしめながら)
母:「よく来た、よく来たね・・・」
(南伊子から赤ちゃんを抱っこさせてもらいながら)
母:「あの川で昌鉉はこどもの頃溺れそうになったの・・・
夢中になると周りが見えなくなるから」などと南伊子に
話しかけながら歩いていく。
それを微笑みながら見守っている昌鉉、畑にひとり佇む
彼に風の中で響くバイオリンの音が聞こえる。
振り返ると在りし日の旅芸人のバイオリンについて行く
こどものころの自分たちが見える。そして、バイオリンの音に
惹かれてひとりだけでついていった、あの森に歩いて行きます。
赤・黄・緑・・・鮮やかな色が風に舞い踊っています。
昌鉉:「ここは・・・」
(回想シーン)相川先生の言葉
相川先生:「見てごらんよ、この国は美しいね。草原の輝きと
花々の誇らしさ・・・」(昌鉉のこころの言葉に替わって
いきます)
昌鉉:(花々の誇らしさ、そんな日々はかえってきはしない。
だが、わたしたちはもう哀しむまい、残されたものの
中にこそ幼い日の思い出の中にこそ見出すのだ力を・・)
昌鉉:「力を見出す・・・」とつぶやいて、落ち葉が舞い踊る中、
両手で落ち葉をすくい、次々と風で飛ばされ、一枚の赤い紅葉が
手に残る。それを、口に持っていき、噛んでみる。そして
風に吹かれながら、何かに気付く・・・。
昌鉉:「色だ・・色だ!ストラディヴァリウスの色だ!」
昌鉉:(美しいものこそが美しい音色を
奏でる、ぼくは
そう信じたのだ、そして・・・)
場面は1976年、ペンシルバニア大学へ
司会者:「バイオリン部門の優勝者は・・・チェン・
ヒュン・ジュン(陳昌鉉)氏です。」
発表を待っている間に席で寝てしまっていた昌鉉は、
自分の名前が呼ばれても気が付きません。拍手で
目が覚めたものの、半分寝ぼけているので、みんなと
いっしょになって拍手してます。
司会者が再度、名前を呼び「どちらにいらっしゃいますか?」と
言っても出てこないので、会場が少しざわつきつつ、司会者は
「それでは、チェロ部門の優勝者を発表しましょう」と続けます。
司会者:「こちらもチェン・ヒュン・ジュン氏です。」
再度、名前を呼び司会者が「韓国の方ですが・・・」と
言っているところで、ようやく気がつき、あわてて
立ち上がります。場内の拍手がさらに大きくなり司会者が言います。
司会者:「陳昌鉉氏はなんと六部門のうち五部門を受賞されました」
信じられない顔で前へ出て行く昌鉉に周りは祝福の
拍手をし、前を通る彼に握手を次々に求めてきます。
中島みゆきさんの「二艘の舟」が掛かり、そして、彼が作った
ヴァイオリンが映ります。そして、昌鉉が壇上に上がったところで
フェイドアウトです。
とこんな感じです。そして、最後テロップとともに、陳さん自身の
写真も何枚か映ります。最後は南伊子さんとふたりの写真で、
陳さんはヴァイオリンの背板を手に持っています。
お礼
とてもご丁寧にありがとうございました。 紅葉した葉を噛んで、何かに気付いたんですね! ちょうど、「家族を紹介してくれないの?」で 切れてしまったので、本当に嬉しいです。 ありがとうございました。