ネット配信が普及しないのは、私見では...
(1) データ量が多くなり、設備面で厳しいものがある(サーバなど配信側の設備のほか、通信インフラも万全とは言いがたい)。
(2) 再生のためのソフトウェア、ハードウェアの点で一般ユーザは対象外となり、採算の面で及び腰にならざるを得ない。
(3) 自由に利用したいユーザと、あまり好き勝手にさせたくないレコード会社との間で、権利管理技術などの面で難しい問題がある。
...から、だと思います。(1)はコストの問題なので、まあ何とでもなるでしょう。しかし、(2)と(3)は深刻です。
音質的に見れば、24bit/192kHzの方が良いに決まっています。
まず、ビット深度が大きくなれば(16bit < 24bit)ダイナミックレンジが広がります。
現実には、人間が同時に認識できるダイナミックレンジは20dB程度だそうで、ポップスなどではコンプレッサという装置を通して、おおむねこの範囲に収まるように調整します。しかし、ジャズやクラシックなどでは、たとえばオーケストラのダイナミックレンジは110dB程度と言われており、16bitでは全然足りません(理論値で96dB、現実にはもっと低い。24bitだと理論値で144dBなので、余裕がある)。
(蛇足ですが、MP3などの非可逆圧縮では、この人間の聴覚の特性を逆手に取って、「あまり耳につかない小さな音」を切り捨てたりしています。MP3などが「それなりに聞ける音」である以上、ダイナミックレンジの問題は、少なくとも再生時には、それほど深刻な問題ではないと言えるかも知れません。)
しかし、それ以上に、サンプリングレートを高くすれば、歪みを減らすことができます。しばしば、「周波数特性の上限が上がっても人間の耳には聞こえないから意味がない」と言われますが、それは本質的な問題ではありません。細かい理屈は省略しますが、位相歪みを抑えつつエイリアス歪みを除去できる(可聴帯域外に押しやれる)ことに、大きな意味があります。
なので、「マイクの周波数特性が~」とか「人間の耳は20kHzまでしか聞こえないから~」とか「96kHzまで記録/再生できるから~」いうのは、表面的に数字を比較しているだけで、あまり意味のある議論には思えません(かくいう私も昔はそういう言い方をしていたので、人のことを言えた義理ではありませんが)。
もっとも、レコード会社側も、そういった「超音波が音質を良くする」と読めるような、誤解を招くような説明をしています。まあ、素人相手にナイキスト周波数だのエイリアス歪みだのと言っても鬱陶しがられるだけなので、セールストークとしてはやむを得ないところでしょうか。
なお、クラシックやジャズなど特に高音質(というか「録れたて」の音)を要求されるジャンルでは24bit/96kHzや24bit/192kHzでの録音も少なくないと思いますが、ポップスなど加工を前提とした(つまり録音は「素材集め」的な色彩のある)ジャンルでは、24bit/48kHz程度が一般的かと思います。
その意味では、少なくともポップスなどでは24bit/192kHzでの配信は過剰だとも言えます。私も、将来的には全部ネット配信に移行すべきだと思いますが、(3)との兼ね合いで、あまり使い方が制約されるようならCDのままの方が良いと思います。
お礼
色々なご意見があって、大変参考になりました。ありがとうございました。