旅行会社経営者です。長年の経験からの助言にすぎませんが、お許しを。
海外旅行中には盗難の可能性は常にあります。どのように用心深くしても被害をゼロにすることは出来ません。その可能性をなるべく低くする知恵が必要なのです。さまざまなガイドブック、旅行者のブログ、外務省の海外危険情報などネット上の情報などをよく調べて身につける。これが最大の予防策です。
よく、「海外旅行ではぜいたく品、高級品を身につけるな」、「わざと汚い格好をして現地で長く暮らしているように振舞え」なんて助言もありますが、私はこれはあまり役に立つ助言とは思えないのですよ。身に付いていない行動こそ、服装や持ち物よりずっと目立つものなのです。
どんなに現地の人間のような服装をしようが、高級バッグなどでなくごくありふれた品を持っていようが、不注意な人間なら盗難の被害に遭います。盗みのプロは旅行者の服装や携帯品ではなく、対象者の行動、視線、そして必ず生まれる隙(すき)をタイミングよくキャッチして行動を起こすものです。
彼らは同伴者のいる旅行者、持ち物から時折り目を離す旅行者などを見つけて少し離れた所から追尾、監視しています。一見経験豊かな旅行者、注意深い旅行者であってもどこかで無意識に必ず隙を見せます。まして単独犯でなく、グループで狙われたら、彼らの獲物になってしまう可能性は飛躍的に高くなります。
この際、高級バッグを持っているか、高価なアクセサリーや服を身につけているかは彼らに興味はありません。不注意な人間、隙を見せる人間、周囲に注意を払わない人間が彼らのターゲットになります。当然、プロの目で現金や換金性の高いものを持っているかも判断できます。
日本人が他の国の旅行者に比べて盗難の被害に遭いやすいかどうかは、検証したデータはありません。かなり多いだろうとは思いますが、現地の警察や日本の領事館に届ける人も少なく、詳しい数字は分からないのです。日本人は海外旅行に多額の現金を持ち歩く、高価なショッピングをする、水と安全はタダと思っている、などは事実でしょう。しかし日本人だから被害に遭いやすいとは断言できません。どの国の人でもそそっかしい、不注意な人はいますからね。
10日間のイタリア旅行で添乗員を務めた時のこと。ある初老の男性は3回もひったくり、置き引きに遭いましたが、他のお客様には何の被害もなし。常に高級バッグを持っていたご婦人たちはまったく大丈夫。結局、ご本人の警戒心、注意の欠如の問題なのですが、私が24時間監視するわけにも行かず、帰国までヒヤヒヤしていました。
持ち物を選ぶより、リスクを軽減させるための注意力と警戒心を向上させる方がはるかに大事です。
お礼
丁寧なご回答ありがとうございます! 確かに、私自身国内で拉致未遂にあったことがあります。 その時に、どんな場所でも警戒心を怠ってはいけないと学びました。 海外なら特にそうだと思います。 大変参考になる助言です。(さすが旅行会社の方ですね!) 常に危険と隣り合わせだという気持ちを持ちつつ、楽しみたいと思います。 ありがとうございました。