結論から言うと「ただの演出」です。正装扱いではありますが、三味線の演奏とは無関係でしょう。どちらかというと「死に化粧」?
『必殺仕事人』 (1979年) で秀の人気に火がついて、それまで下り傾向だった視聴率が上向きになります。続編『新必殺仕事人』で初登場した勇次は、その雰囲気と、殺し技の新しさでこれまた話題を集め、「秀、勇次」の2人は必殺シリーズのなかの「仕事人もの」の中でも随一の人気コンビになります。
『III』~『IV』のころは、まさにこの2人組の人気が絶頂と言っていい頃で (もちろん、2人に伴って主水自身もファン層を広げました)、各回のストーリーの練り込みよりも、「仕事場面の演出」に心血が注がれるパターンが確立した時期とも言えます。
過去の必殺シリーズは、「どれだけ“恨み” “哀しみ”をちゃんと描いて、それを殺しのカタルシスにもっていくか」という「ドラマづくり」がされていましたが、この時代の『必殺』は、「いびられる主水」「現代風俗のパロディ」「玉助に好かれる順之助」、そして「華麗な殺し」という個々の見せ場を視聴者に提供するバラエティ番組的な性格を前面に出していました。
なので、勇次の衣装も、「いかに華麗にかっこよく」見せるかということで、『III』の頃から質問のような感じになっています。
ちなみに、『新』で初登場した頃は、それほど派手ではなく、着流しのまま仕事をすることもふつうにありました (殺しの衣装がパターン化していませんでした)。
また、『IV』の次の登場作、初めて勇次が独立して主役格となった『必殺仕切人』では、ダークな色合いを基調とした、渋めのもの (着流しが多い) のバリエーションとなっており、派手なものはありません。
秀に至っては、後の『必殺まっしぐら!』や『激突!』で、けっこうな年齢になっても、あの黒づくめのカッコをしていたのですから、作品の雰囲気を考えたらけっこう恥ずかしいです。でも、『IV』の頃は、この2人の「華麗さ」はイチバンの売りだったので、これが正解だったのです。
ラストの斬り合いの時に「正装」をするパターンは、『大江戸捜査網』や『桃太郎侍』などでもやっていますので、似たようなものとご解釈ください。
※衣装の変遷に関しては記憶で書いていますので、まちがっていたらごめんなさい。