素人PA屋で、現場ではもっぱらYAMAHAのデジタルミキサーを主体に使っていますが、機種変更するまではRAMSAやBheringerのアナログミキサーを使ってました。
PA現場で使う上でデジタルミキサーのありがたいところは、まぁ機種によっていろいろ仕様は違うのですが、
1)全チャンネルにダイナミクス(コンプレッサーと同じもん)が付いているので、別に全チャンネル分のコンプレッサを持って行かなくて良い。
2)比較的高品位なエフェクター(リバーブ等々)が内蔵されているので、これも持って行かなくて良い。
3)(やや高価だけど)追加機能ボード等を本体に組み込めるので、能力の拡張やチャンネルの増設等がしやすい(別の機材を大量に持って行ってごちゃごちゃ結線しなくて済む)。
4)モニターへの送り回線の設定等の自由度が高い(アナログだと、かなり高機能なモデルでないとできない結線が、本体のボタンだけで簡単にできる)
5)複数のバンドのステージなど、バンド毎、曲毎にミキサーの設定が大幅に変わるが、リハで決めた設定を記憶させておく事ができ、ボタン一つで簡単に憶えた設定を呼び出して変更できる。
なんてとこがありますね。
1)ですが、ちなみにコンプレッサは、ボーカルやコーラス等の人声のPAではごく普通に使いますよ。これでボーカルの音圧を維持するとか、ライブだとボーカルの動きによって入力レベルが結構変わるので、その音量変化を抑えるためにも積極的に使います。また、特にドラムではコンプレッサが無ければお話にならない場合も多いです。少なくともバスドラとスネアには無いと、めっちゃくちゃオペレートが難しくなります。
なので、アナログミキサーの場合、比較的小規模のステージでも最低6~8チャンネル分のコンプレッサが欲しい事が多く、結構な荷物になるし配線も手間なんですが、デジタルだと持って行かなくても良いし、本体のボタンとツマミだけで簡単にセットできるのは威力があります。
2)については、アナログミキサーでもエフェクト内蔵型がありますので、デジタルが決定的に有利とは言えませんが、デジタルでは最低でも2台分、多ければ4台分以上のエフェクトが内蔵だけで賄えるので楽です。
特にリバーブなどは、人声系と楽器系では別々に掛けたいケースが多いのですが、これも本体ボタンとツマミだけで異なったセットを簡単に作れるのは楽ですね。
ただ、エフェクトについては、専用機の方が音も効果も良いケースは多いので、アナログでもデジタルでも専用機を持ち込む事は多いですけど。
3)は、その追加ボードが高価なので私はほとんど持ってないんですが(^^ゞ、入力の増設、出力の増設等が簡単にできますし、2台のデジタルミキサーをMIDIケーブルで繋いで、あたかも1台のように使う事なんかができて楽です。
アナログだと、大型ミキサーに買い換えるか、ミキサーを副数台用意してかなりややこしい結線オと操作の煩雑さに耐えるか…ということになります。
4)と5)は、これは経験した事無い人には説明しづらいのですが…とにかく、デジタルの方がめっちゃくちゃ作業は楽になります。
特に5)については、アナログでは大量の「チェックシート」を用意して、リハの時にバンド毎、曲毎にすべてのツマミの位置等を短時間でシートにメモし、本番ではシートを見ながら短時間で全部のツマミを次の位置に合わせる…の繰り返しで、めっちゃくちゃ忙しいです。ところが、デジタルではそんな事一切無しに音に集中して設定を決め、「ストアボタン」を押すだけで膨大な設定をすべて記憶してくれます。これは一回味わったらやめられません(^^ゞ
ただ、デジタルもアナログに比べて欠点はあります。
一番最たるものは、アナログよりも簡単に複雑な設定ができるとはいえ、多くのデジタルミキサーでは、その設定状況が小さな液晶パネルの中でしか表現されないので、設定を確認しようとしたら大量のボタンとツマミでまず画面の呼び出しをせねばならず、かなり操作方法に習熟しないと突発的な操作ができない…ということですね。
その点、アナログミキサーは設定すべきツマミやボタンの状態が常時見えていますから、少しの慣れで突発動作にも対応できます。
また、デジタルは操作体系がメーカーによってかなり違うので、メーカー変更などした時には、ほとんど一から覚え直しになりますが、アナログは基本形はどこのメーカーでも同じですので、別メーカー品でも使いこなせるようになるには、そんなに時間は掛かりません。
もう一つの欠点は、アナログに比べて信頼性がまだ十分ではないという点でしょう。幸いにも私は経験有りませんが、現場でデジタルミキサーが突然誤動作した…という話はたまーに聞きます。要は中に専用コンピュータが入っていて、プログラムで多くの機能を維持しているわけですから、ちょっとの故障でもミキサーの全機能が麻痺することになります。
アナログでは、1CHくらい不具合があっても、他の機能は維持されるので信頼感は高いです。
と、個人的にはざっとこんな感じでしょうか。
>コンプレッサーは、使うと音を伸ばしたり押さえたり出来るものと聞きましたが、使い方によっては、いい音になるのですか?
については、うーん、そんなに単純なもんでもないんですけどねぇ…
「音を伸ばしたり押さえたり出来る」というのはその通りですが、「どう伸ばし」「どう押さえるか」という設定を決めるのは、なかなか難しいものです。ゆえに、設定がバッチリ決まれば「いい音になる」というか、もっと正確には「音を良い状態に維持できる」ということは言えます(間違っても、元々悪い音を良い音に変えるような魔法の機械ではない)。
ただ、設定を一歩間違えると、とんでもない音になることも多く、PAやレコーディングの世界では、「絶対に必要なんだけど最も使い方が難しいエフェクト」と言う人も多いです。要は使う人の知識、技術、センス次第ですねぇ。
お礼
本当にご丁寧にご回答いただきまして、ありがとうございました。