- ベストアンサー
推奨!無声活劇なり
今度無声の邦画のトーキー活弁版というのを買って見てみようと思うんですが、 なかなか一巻一巻が値が張るので、悩んでます。 阪妻さんや嵐寛さんなどに代表される格好良い活劇を見たいんですが、どなたかこれだというお勧めありませんでしょうか?
- みんなの回答 (1)
- 専門家の回答
質問者が選んだベストアンサー
嵐寛は観ていないので、阪妻のニ本だけ紹介します。 江戸怪賊伝 影法師 25. 監督.二川文太郎 出演.阪東妻三郎〔影法師/朱桜蛉三郎〕/マキノ輝子〔弁天のお栄〕/高木新平〔流れ星の十太〕/中根龍太郎〔盲目の権次〕/月形龍之介〔清見潟平馬〕/中村吉松〔岡っ引き、赤鬼の喜蔵〕/嵐冠三郎〔高利貸し、矢口仙左エ門〕/大谷友四郎〔お里の父、樋口十介〕/美浪光〔烏の仙太〕/生野初子〔お美江〕/泉春子〔お里〕/高松錦之助〔小間物屋の三次〕 完全な形では残っていないようで、53分しかないが、多彩な登場人物、スリ同士の技比べ・偽影法師の出現・病気の母を抱える哀れな女とそれに付け入る高利貸し・岡っ引きによる執拗な追及などスピーディで多岐にわたるストーリー、若き阪妻〔24歳〕のカリスマ性もあって、活気あふれる時代劇になっている。 影法師は武士の姿をした「鼠小僧」のような義賊であるが、行き倒れになっていた女性を助ける。その女性はお栄と言い、薄幸な生い立ちを語り、影法師は彼女に惹かれていく。実はその不幸な生い立ちは全くの作り話だったのだが、お栄に恋をした影法師は、自分が泥棒であることをお栄の相手として資格なしと考え、苦しむ。そういうところは潔癖で、スリの十太や子分の権次は旦那は恋を綺麗なものに見過ぎるとアドバイスするのだが、彼には両立できそうもなく、貧乏な人が喜ぶ顔を見たいので、泥棒をやめることは出来ない。 しかし、お栄には清見潟平馬というひもがいて、十手から逃れてきた平馬がお栄を連れ戻しにやって来る〔ニヒルな冷血漢、平馬を演じるのは当時23歳の月形龍之介。黒澤明の43年「姿三四郎」では敵役の檜垣源之助を、50代になってからは水戸黄門を演じた時代劇スターである〕。可憐な花だと思っていたお栄は汚れていて、影法師はそれでも信じられなくて茫然としたまま、帰っていく二人に金を渡すが、外に出たところで、平馬は悪どい岡っ引きの喜蔵に捕まってしまい、もっと大物がいると、恩人である影法師のことを密告する。お栄は平馬の汚さに愛想がつき、また平馬の正体も知らない失意にある影法師は平馬とお栄が幸せになるならと、簡単に捕まってしまう。その純情さに感動したお栄は、影法師への愛をぶちまけ、今度はそれに感動した影法師が捕まるのは馬鹿らしくなったと、縄抜けをして、大立ち回り。お栄と共に逃亡する。 高利貸しに30両返すことが出来なくて、連れていかれそうになるお里を影法師が救う時に、半時待ってくれと言い、高利貸しだから金があるだろうと、白昼堂々その男の家に行って、金が借りられないと知ると、ちょうど30両だけ盗んで行くというのは、余りに盗賊にしては芸がなく〔高利貸しに自分の仕業だとばれてしまうだろう〕、正直な感じであるが、そこが影法師のいいところかもしれない。現在のようなせちがらい時代から見ると、とても稚拙に見える犯罪だが、そこに魅力もある。 鯉名の銀平 雪の渡り鳥 31.阪東妻三郎プロダクション 谷津撮影所. 監督.宮田十三一 原作.長谷川伸 出演.阪東妻三郎〔鯉名の銀平〕/岡田喜久也〔卯之吉〕/児島三郎〔伍兵衛〕/望月礼子〔娘、お市〕/堀川浪之助〔帆立の丑松〕 下田を舞台に恋に破れた渡世人の尊い自己犠牲を描く。と言えば、かっこいいが、前半の銀平はおよそヒーローにはほど遠い。銀平は、同じ大鍋一家の弟分卯之吉が好き合っているお市に横恋慕し、帆立一家との出入りとなった時、そのどさくさに紛れて、卯之吉を殺そうとさえ考える。恋に狂ったとはいえ、かなり卑劣な考え方もする人間として描かれている。帆立一家の右腕がやってきた時には、銀平は、卯之吉に先に戦わせる。卯之吉がやられればいいと考えたからである。しかし、卯之吉が死んだ時に一番悲しむのはお市だと気がついて、やられそうになった卯之吉の助けに入り、右腕を倒す。 4年の放浪の後、下田に舞い戻った銀平だが、町は悪辣な帆立一家に牛耳られており、お市の父親伍兵衛が営んでいた茶屋をお市と結婚した卯之吉が引き継いでいる。帆立一家は、右腕を倒したのは卯之吉だと信じており、毎日のように茶屋にやってきては嫌がらせをする。今や堅気になった卯之吉は無抵抗を通すが、ついに我慢ならなくなって一人帆立一家に殴り込みに向う。それを知った銀平は、雪の中を急いで駆けつけ、まず先に親分の丑松を倒す。ここがまだるっこくなくていい。リアルでもある。この手の話の場合、憎き親分とか腕のたつ強敵は最後まで殺さずにとっておくのが、定石。しかし、現実的に考えるならば、悪い奴や強い奴は最初にやつけてしまった方が自分の身の安全がはかれるだろう。ドラマとしてはそっけないし、あっけないが、そういう媚びを売らない作劇が私にはとても清々しく感じられた。 出入りを合図する竹ぼらを吹く男を画面手前に配し、背景を走って行く男たちのシルエットで処理するシーンや、刀を交える男たちのシルエットを多用した大鍋一家と帆立一家の出入りのシーン、卯之吉が帆立一家に殴り込みに入る時に迎え撃つ男たちの構えた刀が光るシーンなど、実に野心的な映像で美しさが際だつ。1931年、阪妻は津田沼の谷津海岸に自らのプロダクションの撮影所を建て、作品を次々と作っていったということだが、本作を作っていた頃は自分の思い通りに映画を作ることができたそうである。確かに30歳の若さに満ちあふれた作品である。
お礼
おお、これだけでも殆ど話の筋は完璧! 活劇というと殺陣のことばかり思い浮かべていましたが、 結構、色恋沙汰がメインだったりするんですね。 早速参考にさせて頂きやす!