記憶が人を作って行く。だから、そこにいるのは紛れもない直子であるはずだ。とは言っても、そこに存在する肉体は藻奈美だ。平介は妻離れ・子離れのできていない典型的な現代の父親だ。そこがこの話で一番哀れな所であり、「秘密」というタイトルも実はこのことと大いに関係がある。平介が思い切るならば、直子を藻奈美と割りきり、自らは新たな人生を始めればいいのである。ところが、平介にはそれができない。今までの妻の存在が大きすぎるからだし、そこに現にあるのは藻奈美の肉体だからだ。そんな平介も意を決して直子を藻奈美と呼んでみる。直子は平介を平ちゃんではなく、お父さんと呼ぶ。事故から2年が経っている。藻奈美の心が戻ってきたのだ。その後、直子の心と藻奈美の心が交替で現れるようになる。二人は手紙をやり取りするようになり、さらにはビデオ・レターへと発展する。そうして、直子の心は消えて行く。思い出の灯台での平介との別れのシーンは消え行く直子の心が痛ましく、哀れをもよおし、心に残る。
数年後、藻奈美はラーメン屋の店長となった文也と結婚する。花嫁の父と娘との別れのシーンで、藻奈美は平介の顎から首へと手で触る。これは剃り残しがないかと直子がいつも平介にしていた行為だ。ここで平介は「秘密」に気づく。藻奈美など現れてはいなかった。ずっと直子だったのだ。直子は平介を思い切らせるために藻奈美になりすましていたのだ。
……と思います。
お礼
失礼しました、「まなみ」ではなくて「藻奈美」だったんですね(笑)yodaさんの言うとおり、映画は見た人それぞれの解釈でいいんですよね。どうもありがとうございます! それから岬のことまで教えていただいて。よく知ってましたね!実は千葉県民なので、今度行ってみようかなんて思っています。