「千社札」ですね。
江戸時代に「千社参り」といい、千カ所(多数の意)の寺社仏閣、小祠や地蔵堂などをお参りするという信仰がありましたが、その際に名前や屋号を書いた札を、参詣した寺社に貼り祈願しました。その際に意匠を凝らしたデザインの札を用いることが流行しました。
もっとも、この千社札の原型は、観音霊場や四国遍路などの巡礼者が霊場寺院に祈願・年月・名前などを記した紙札を納める、古くは木札を柱などに打ち付ける、このような風習に由来すると考えられます。そのため霊場寺院を「札所」、また巡礼することを「札を打つ」ともいいます。さらには「霊場に札を納める」という風習も、修験者が山中の拝所(神仏を祀る場所。神社仏閣とは限らず岩や大木・洞窟・滝なども含まれる)に祈願札を打ち付ける信仰や、六部(六十六部回国行者といい、日本全国六十六カ国の神社仏閣に法華経を奉納する行者<ただし壱岐・対馬の二島が加わるので厳密には六十八カ所>)が経典を奉納した際に「奉納大乗妙典」などと記した札を納める信仰が基になっていると思われます。
このように寺社に札を納めるというのは「修行をした」、「経典を奉納した」証として行われていたのが、時代が下がるにつれ「参拝をした」証として貼られ、千社札にいたっては、参拝した証であるとともに、デザイン性の高い札を目立つ場所に貼ることで、粋を競うというファッションへと変化していきました。
>お寺は迷惑がっていないのでしょうか?
現代では文化財保護の面や、境内の美観などもあるので、むやみやたらと寺社に千社札を貼るのは考え物です。節度を持って行いたいものです。