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文学の研究ってどうやるのですか?
社会人ですが、大学院に行って児童文学の研究をしたいと思っています。 が、大学時代は哲学・社会学系の学部でしたし、そもそも教官から指導らしい指導を受けていない(図書館にあった文献を何冊か読んで、内容を適当にまとめて提出したらAをもらえた)ので、テーマの決め方や研究の手法、論文の書き方などがよくわかりません。 文学系の研究について、わかり易く説明した本があればご紹介ください。 なお、ひとつの作品の一字一句を細かく分析・批判するような研究よりも、作品や作家の社会的・歴史的な意義を考察するとか、あるジャンルの作品群の歴史的変遷を調べるいった、大きな視野での研究をしたいと思っています。 よろしくお願いいたします。
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#2です。お礼欄拝見しました。 >それぞれの分野の中でも、○○という着眼点・手法で論じる方法はもう古いとか、限界があるとか、最近は○○のような切り口から論じる研究者が現れている、といった研究の歴史みたいなのがあります。 たとえば社会学の方法論のひとつに、機能主義というのがありますね。 そこからパーソンズは構造機能主義を提唱し、さらにそれを批判するかたちで、60年代に入ってルーマンの新しい社会システム理論が出てくる。 こうした社会学の「研究の歴史」というのは、社会学理論の歴史にほかならないのではありませんか。 #2で言いたかったのは、内容(理論)があって、方法がある、というように、「方法」はそれだけ取り外して考察が可能なものではない、ということです。 したがって、研究方法の変遷を見るということは、とりもなおさず理論の歴史を見ていくということになると思います。 >#1の回答の方が「現在の文学研究では、こういうやり方が成り立つかどうか自体が論争課題になっていると」とおっしゃっているように、 『文学の思考』を検索してごらんになると分かるかと思いますが、 http://www.utp.or.jp/shelf/200002/083028.html 扱っている内容は文学理論です。 この本はわかりやすくて良い本だと思うんですが、ある程度、受容理論などの基礎タームを理解していることが前提となってくると思います。 >文学研究にも歴史があり、過去にこんな方法で研究をした流派があるとか、今、○○や○○が盛んに研究されているとか、○○的な方法は現在では否定されているとか、新しいところではこんな研究が登場している、といった流れがあると思うのですが、いかがでしょう。 文学理論の歴史でしたら、テリー・イーグルトンの『文学とは何か』(岩波書店)をあげておきます(この本はここで過去三回ほど紹介しましたが、ほんとによくまとまっていて良い本です。多くの大学でテキストとして用いられています)。 文学研究の誕生した18世紀から、最先端のポストコロニアリズムまで、文学研究の流れの大枠は理解できるかと思います。 巻末に参考文献のリストもついています。 そのほかには 土田知則・神郡悦子・伊藤直哉著『現代文学理論 ―― テクスト・読み・世界』(新曜社) キーワードを手がかりに、さまざまな文学理論が簡潔に説明してあります。手元においておくと、便利かも。 あとはやっぱりはずせないのがウラジミール・プロップの『昔話の形態学』(白馬書房)でしょう。 プロップは理論的系譜でいくと、ロシア・フォルマリストの一員なんですが、この人たちは、言語ばかりでなく、小説や映画にも固有の「文法」があると考えた。プロップは膨大な量の魔法昔話を収集し、話型に分類することで、昔話の「文法」をあきらかにしようとしたのです。 物語論(ナラトロジー)もここから始まっていくし、童話などを研究していくときにも、絶対出てくると思います。 逆にグリム童話を取り上げて、そこからプロップの形態学や精神分析批評、フェミニズム批評などさまざまな文学理論を浮かび上がらせていくマリア・タタール『グリム童話――その隠されたメッセージ』(新曜社)もおもしろい。 おまけとして神宮輝夫の『世界児童文学案内』が電子テキスト化されてここで読めるのであげておきます。 http://www.hico.jp/ronnbunn/jinguu/sekaijidou/sekaijidoumokuji.htm YAの歴史をたどった本としてはMichael Cartの"From Romance to Realism: 50 Years of Growth and Change in Young Adult Literature"が気にはなってるんですが、まだ読んでいません。 http://www.amazon.com/exec/obidos/tg/detail/-/0064461610/103-4086258-4175803?v=glance
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ラノベの歴史的変遷の研究も一つよろしくお願いいたします。
お礼
「ラノベ」ってなんだろう? と調べてみたら、Juvenile、young adalt のことだったのですね。 ちょうどこの分野を研究したいと思ってたんです。 もうかなり研究されている分野だと思っていたので、目新しい切り口でないとだめだと思っていたのですが、ラノベの歴史的変遷って、まだあまり研究されていないのですか?
- ghostbuster
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大学院の文学研究科をこの春終了したものです。 これ、「小説を書きたいと思ってるんですが小説はどうやって書くのですか」という質問に似ています。 「小説の書き方」という本はたくさんあります。 日本ではまだ少ないけれど、アメリカでは「創作科」がある大学もいくつかあって、実際に多くの作家がそこで教鞭を執っています。 でも、結局はその人がなにかを書いてみなきゃ、始まらないんです。 書かなければ、「小説の書き方」も「創作科」も何の役にも立たない。 実際に書くことによって、方法もその人のうちで生成してくる。 そのときはじめてその方法を涵養したり、批判したりする「書き方」なり「創作科」なりが必要になるのだと思うんです。 まずテーマがある。 そのテーマにふさわしいテキストを集める。 それを一定の方法でまとめる。 もしそうしたものを文学研究だと考えておられるのだとしたら、それは全然ちがいます。 方法というのは、天プラの衣じゃありません。 たとえば、小説は理屈ではない、いいと感じることができればそれで十分、解釈や分析など必要ない、という見方があります。 それに対して、事実についての知識は、感受性を深めることはあっても、それを減じるものではない、というのが文学研究の立場です。 小説の基本的構造や、隠れた意味、性格描写やイメージや層をひとつひとつあきらかにすることによって、作品をより深く理解するための学問が文学研究であるといえると思います(非常に単純化して言っています)。 学問というのは、基本的に、既知の事実から出発するものです。 その小説がどのような時代に、どこで、どのような社会構造下で、いかなる文化的背景をもって、だれによって創作されたか、ということを見ていくのが、まず第一歩です。 当然、作者についても見ていかなければなりません。 作品の構想の直接、間接のテクストを調べていく。 けれども、こうした既知の事実と、実際の作品の間には非常な隔たりがあります。 作品は作品で、一個の自律した世界ですから、「外」の事実とたちまち=で結びつけられるものではありません。 したがって、テクストそのものの研究がそれに続きます。 構成、プロット、視点、登場人物、場面、言語、間テクスト、ありとあらゆるものを見ていきます。 さらに、そうした読解を踏まえて、新たに意味を生成していくプロセス(批評)へとつながっていきます。 おそらく大学院の前期課程というのは、多少の差があっても、だいたいそうしたことをやっているのではないかと思います。 そうした授業のなかで、自分の研究というものを作っていかなければなりません。 学部ならテーマや課題が与えられているわけですが、院では違います。 最初はとりあえず、自分なりの切り口を見つけて、そこからテクストの再構成をしていく。 テーマも方法も、その過程でおのずから決まってくると思います。 そうやって論文やレポートをいくつも作成していくうちに、自分の研究方法というものが徐々に固まってくるはずです。 >作品や作家の社会的・歴史的な意義を考察するとか、あるジャンルの作品群の歴史的変遷を調べるいった、大きな視野での研究 ということは、上にも書いたように、あくまでも基礎的なアプローチのひとつですから、おそらくどこでもやっているはずです(#1の方がおっしゃっておられる石井の『文学の思考』は、文学をいわば通時的にではなく共時的に扱っていく文芸批評のアプローチの仕方を問題にしたものですから、上であげたプロセスでは第三段階であって、基礎研究の話ではありません)。 そのうえで、 >テーマの決め方や研究の手法 というのは、研究を実際に始めてみないことにはなんとも言いようがないのです。 さまざまなテクストの読解を通して、自分のなかで作り上げていくものだと、少なくともわたし自身は理解しています。 あまり参考にはならない回答でしょうが、ひとつの見方として受け取っていただければ幸いです。
お礼
たくさん書いてくださってありがとうございます。 まさにこういうことを教えていただきたかったのだと思います。 社会学だと、○○社会学と名のつく分野がたくさんあって、社会のできごとについていろんな面から研究されています。そして、それぞれの分野の中でも、○○という着眼点・手法で論じる方法はもう古いとか、限界があるとか、最近は○○のような切り口から論じる研究者が現れている、といった研究の歴史みたいなのがあります。 #1の回答の方が「現在の文学研究では、こういうやり方が成り立つかどうか自体が論争課題になっていると」とおっしゃっているように、文学研究にも歴史があり、過去にこんな方法で研究をした流派があるとか、今、○○や○○が盛んに研究されているとか、○○的な方法は現在では否定されているとか、新しいところではこんな研究が登場している、といった流れがあると思うのですが、いかがでしょう。 自分が「○○について考察しよう」と思っても、そんなのは研究のうちに入らないよ、といわれる可能性大なので、文学研究のおおまかな枠組み・歩みみたいなのを、予備知識として持ちたいのです。 もちろん、大学院に入って授業を受けるうちにわかってくることもあるだろうし、研究したいテーマもどんどん変化していくと思います。 でも、とりあえず入試書類として研究計画書を提出しなければならないので、「研究」としての最低限のレベルをクリアするように、文学を研究するといことについて、基礎・基本となる知識を得たいと思っています。 参考になる本などあればご紹介ください。
- kankororin
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>作品や作家の社会的・歴史的な意義を考察する 現在の文学研究では、こういうやり方が成り立つかどうか自体が論争課題になっていると思いますが、そのへんのことをきわめて明晰に解き明かしている本が石井洋二郎「文学の思考」(東大出版会)です。一読をおすすめします。
お礼
ありがとうございます。さっそく読んでみます。 >現在の文学研究では、こういうやり方が成り立つかどうか自体が論争課題になっていると思いますが そうなんですか。児童文学作品から、その時代の子ども像を読み取った論文など、読んでみると面白いんですが。
お礼
丁寧に答えてくださってありがとうございます。 教えていただいた資料を探して読んでいきます。 またわからないことができたら教えてください。